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初めて災害ボランティアに参加して理解したこと【後編】(2024/04/06)

 本稿は、こちら↓の記事の続きとなります。


■二日目

 二日目は、私は「仮仮置場」での分別・解体作業に割り当てられ、本部からマイクロバスで移動しました。

・「仮仮置場」とは?

 現在、七尾市では一般の市民が個人で災害廃棄物を持ち込む場所が「仮置場」として数カ所設置されています。「仮置場」に持ち込むには、完全に分別されている状態でなければ受け入れてもらえないため、ボランティアが個人宅から預かった災害ゴミは、いったん「仮仮置場」に持ち込み、ここで分別作業を行うわけです。木製のタンスや棚などに付いている金属の金具類を取り外す作業など、地味に大変でした。


作業場は七尾湾の目の前。
まだ搬入車到着前で、ゴミは無い。
待機時間に撮影。

 この作業場、和倉温泉の七尾湾の目の前でした。私が作業した日は、運よく風が無く、気温もそこまで低くなかったのですが、もし風が強い日だと体力的に相当しんどいだろうなと思いました。どういった環境での作業になるかは当日にならないと分からないため、服装の万全な対策は重要だと思いました。ここでも、登山慣れしている人などは経験が活きてくるのだと思いました。

 「仮仮置場」での作業は、ゴミが搬入されてこないと仕事が発生しないので、待機時間も発生しました。待機時間には、他の参加者と会話したりして非常に勉強になりました。ゴミが搬入されてくるときは一気に来るため、皆さんそれぞれに分別作業を行います。この日は待機時間が発生しましたが、土日に参加したという人は、待機時間はほぼなく昼休憩以外はずっと作業してたと仰ってました。

・バケツリレー方式

 たくさんの細かいもの(重いもの)を運搬するとき、一人ずつそれぞれ運ぶより「バケツリレー方式」のほうが手際よく進められ、安全上もそのほうが良いということを、このとき身をもって体験しました。ニュース映像で、発災から間もない時期に、支援物資をバケツリレー方式で運んでいる様子を見ましたが、そのときには理解できてなかったのですが、実際に自分がやってみて、「確かに理にかなっている」と思いました。

・慣れている人にかなわない

 私はDIYもほとんど経験ないですし、解体作業みたいなものも慣れていません。家具から金具や蝶つがい等を取り除く作業を、最初はドライバーを使って地道に一個ずつ外していたのですが、バールや金槌などを使って破壊しながら外していく作業をしている方がいました。そのほうが作業時間も早く体力も消耗しないと感じたため、その次から真似しました。処分するものですから、外す際に破壊が伴っても問題ないわけですね。

 また、作業後には飛び散った木くずなどをほうきで掃き掃除するのですが、私は「重いものを運ぶ作業ではそんなに貢献できないから、せめて掃き掃除を!」と思って取り掛かったのですが、建設現場系の作業服を着用されたボランティアの方が、ものすごいスピードでなめらかに掃き掃除をされていました。お仕事で慣れた作業なのかと察しました。私なんぞはもたついていて、頭が上がりません。

・作業終了

 この日は作業終了予定時間(15:00)まで作業を行うことができました。かなり疲れましたが、わざわざボランティアに向かっても作業が少なくて消化不良になるよりも、良かったと思います。帰りのマイクロバスでは、テント村からの参加者が多いせいか、会話が盛り上がってる人が多かったです。(既に何日か参加している人同士でコミュニティが形成されつつあった。)

いただいた差し入れドリンク。
ボランティア活動には基本的には何も出ないと思いますが、この日はたまたまどこかの団体から差し入れ提供があったとのこと。うれしかったです。

■まとめ

・需要と供給のミスマッチが起きている?

 4月上旬現在、七尾市では「一般の」ボランティアが活動できる作業内容に対し、参加者が飽和状態になりつつあると感じました。私は義両親が七尾在住のため、地元ならではの細かい話も聞いていますが、市内各地で被害が大きかったのは理解していますし、復旧もまだまだ道半ばであると理解しています。ただ、必要な支援の中でも、特殊技能が必要だったりプロの業者しかできない作業はたくさんあると思うのですが、「一般ボランティア」としてできる作業には限度があり、そこは飽和状態になりつつあるのではないかと思いました。

街中では至る所でこういった状態の場所を見かけます。
ボランティアではどうにもできません。
(ボランティア活動ではない日に撮影)


 実際のところ、夫が私とは別の日に七尾市ボランティアに申し込んでいましたが、参加当日、依頼案件に対して参加者が多すぎるということになり、本部で待機しつつ、本部の備品の整理のお手伝いをして午前中で解散、になったそうです。

 義実家の近隣では、ブロック塀が崩れていたり半壊している家屋がありますが、所有者がそのままの状態で遠方の親戚の家などに避難しているというところもあるようです。当たり前ですがボランティアや行政が片付け・解体をできるのは、所有者からの申し出や依頼がある場合なので、依頼がないものに関してはそのままの状態で放置されているわけです。報道だけでは分からない現実を垣間見た感じです。


商店らしき建物の割れたガラスがそのまま路上に放置されています。
(ボランティア活動ではない日に撮影)


・テント村からの参加者の強い意志

 現状では市内に宿泊可能な施設がほとんどないため、私のように親族や知人の家を頼る訳ではない場合、遠方からの参加者はほとんどテント村に宿泊することになります。簡易トイレ・風呂なし・朝晩は冷える、という快適ではない環境でテント泊してまでボランティアに参加しようという方々は、基本的にとても強い意志を持って参加されています。ですので、過去に他の大規模災害でのボランティア経験をお持ちだったり、職業や趣味でアウトドアや登山に慣れている方が多い印象でした(私が話した数名の方のn値ですが)。また、今回のボランティアも数日間にわたって申し込んでいる人が何人もいらっしゃいました。

・発災直後には一般ボランティアの受け入れが不可能な背景

 どの大規模災害でも、発災「直後」「一般の」ボランティアは受け入れ可能になるまで現地に向かわないでほしいと報道で言われると思います。今回の能登半島地震では、そのような報道を歯がゆい思いで見守っていましたが、実際にボランティアに参加してみて、その理由がよくわかりました

 ただでさえリソースが逼迫している災害現場において、「自己完結ができない人」が来られると、職員の手を煩わし、支援活動の妨げとなってしまいます。「自己完結ができない人」というのは、例えばですが、事前に告知されている持ち物を持ってこなかったり、集合場所や駐車場などが事前に案内されているにも関わらずgoogle map等で自分で場所を確認して自力で往来できない、といった感じで周りの人の手を煩わす人です。

 実際に私が参加した日もこのような方はいらっしゃいました。この時点では、現地はそこまで切迫した状況ではなかったので、そのような方がいらっしゃっても無難に過ごすことができましたが、発災直後の切迫した現場にそのような人が来られた場合、支援活動の妨げとなってしまう可能性があります。

 「ボランティア」という性質上、基本的に来るもの拒まずでフィルターが掛かるわけではないので、「自己完結できない人」も一定数来るだろうということは容易に想定されます。なので、「切迫した状態」からは抜け出さないと、「一般の」ボランティアは受け入れられないというのは納得しました。一方で、普段から災害ボランティア活動の訓練を行っていたり、過去の災害ボランティア経験者を含むようなボランティア団体であれば、発災間もない段階でも現地に入られて活動されているのは非常に納得しました。

 今回、私は子どもを預かってもらったり、義実家に泊めてもらったので、そういう意味では自己完結はできていないです。交通費や移動時間をかけ、子供を義両親に預かってもらい、様々なリソースを割いてまで私ができたことって、そんなに大したことなかったと思います。

 今回のボランティア参加で私が学んだ最大のことは「自分は無力だ」、ということだったと思います。この経験を活かし、今後の日常生活や災害発生時に、自分が何をすべきか、そのときのために日頃何を意識しておくべきかを考えたいと思います。


 


 

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