時ひらくを読了
三越本店を舞台に置いた6人の作家による短編集。逆に三越が出てくること以外共通点はないのかもしれない。
子供の頃引越しの多かった私はいつものお決まりの外食の思い出や、今は小さく感じる公園の遊具といったエピソード的な、日常の中に思い出と呼べるものが少ない。親と話す時以外、幼少の頃を想起することはないかもしれない。
そんな私だが、主人公が家族の思い出を反芻する第一話で危うく涙を流しそうになった。少年の頃のデパートの神秘的な印象、家族が様々なライフステージで訪れる各フロアでの会話。リアルだがファンタジーな世界がなめらかにそして鮮やかに描かれていた。さすが恩田陸。
その後も各作者それぞれの特色が楽しめる短編集ですいすいと読めた。驚きがあると思ってなかったので、展開に文字通り驚いたのは伊坂幸太郎の短編。あの短さで確かな読後感があり、印象的だった。東野圭吾の一話も確かに東野圭吾で、読み終わった時には軽く鳥肌が立った。
総じて読みやすく、少しずつ通勤電車で読み進めるにはぴったりの一冊だった。軽めのエンタメを求めてる時にぜひ。
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