朝日新聞「戦前3文書から考える」を読んで


4/7付朝日新聞朝刊掲載の加藤陽子東京大学教授のインタビューを読んだ。
聞き手の塩倉裕氏の質問にイエス、ノーで立場をはっきりさせた上で説明する、驚異的に素晴らしいインタビュー。歴史的にあいまいな部分対しても、客観的な部分を整理し、論拠にしている。そして、読者が自ずから氏の言葉に導かれるように安保3文書のおかしさと問題の継続性を認識できる。
残念なのは、インタビュアーに問題意識が見えなかったこと。加藤氏は普段の授業では、こうした質問の仕方には出会わないだろう。批判的な「その点はこういった指摘があるが」や同調的な「その部分はこの点からもおかしいと言えると思うが」といった深掘りしていく言葉がなく、インタビューがぶつ切りに見える。仮にインタビューでそのような言葉使いをしていても、紙面で伝わらなければ無意味だ。
新聞は単なる中立的事実スピーカーではなく、客観性の担保された言論の場である。どうして記者はプライドばかり高く批判に弱いのだろう。逆であってほしい。日々読んでいて心が折れそうになる。

まとめメモ
戦前出された3文書は、天皇裁可を受けた文書を出すことで、陸軍海軍をまとめる意図があった。ここで仮想敵国を身の丈に合わないほどに設定したことで、軍拡が進んだ。身の丈に合わない設定にしたのは、陸軍海軍それぞれへの配慮だった。
今回の安保3文書は、国家の議論なく示され、その方針に基づき予算議論がなされる倒錯状態にある。中国やロシア、北朝鮮を名指しにしているが、中国は日本を主たる敵とはしておらず不自然な記述。今回の予算が通って終わりと考えないことが大切だ。

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