ジャケ買いができないZ世代

「ジャケ買い」
-レコード・CD・本などのカバーの印象が気に入って買うことを指す。

Z世代はコスパを重視するというのは広く知られている。御年22歳。2001年生まれの正真正銘Z世代な私ももれなくこの特徴に当てはまる。インスタから行きたい場所を決める。レストランは食べログの評価で決める。もはやスマホがないとどこに行けばいいかも何を買えばいいかもわからなくなった。万人が良いというものだけを摂取し、無駄なお金を使うことを防ぎ、コスパよく人生を送ることを重視してきた。しかしそんな私はいつしか無駄を楽しむことができなくなっていた。

何か物を買うときも、徹底的に調べ上げ悪評が多ければ買わない。これまでにも、可愛いと思ってもネットの口コミが悪かったら購入しなかった経験が何度もある。突発的ではなく、吟味し、熟考する。それが私の買い物だ。そんな私の購買方法と対極にいる存在がジャケ買いである。中身はよく知らないけどカバーが可愛いから買っちゃおうという欲は、もし中身が好みじゃなかったら無駄になるという理性により抹殺される。損。無駄。これらの感覚は多くのZ世代にとって屈辱だろう。損をしたくないがために他人軸の評価を見漁り、良品だという太鼓判を誰かに押してもらう。そうしない限り購入に踏み切れない私にとって、よく中身も知らずに外見で選ぶことは丸腰で敵の戦地に乗り込むようで恐ろしいのだ。
たとえ中身が悪くてもカバーが可愛いからいいじゃないかという発想は私には理解しがたい。Z世代は物質的に豊かな時代に生まれ、選択肢が無数にあることが当たり前の世界で生きているがために、外見も中身もいいものを追い求めるようになった。どちらかひとつでは満足感を得ることが難しいのである。しかし、外見の良し悪しはともかく、中身は購入者でないとわからない。最適解を探し出すために顔のわからない無数の誰かの意見を最優先する。すると自分の判断基準は隅に追いやられてしまう。自分の価値観だけを信じ、突発的に欲しいものを買う、そのような購買方法は私にとってもはや贅沢だと感じるようになった。物質的には過剰なほど豊かになり、選択肢は増えている。しかしそのせいでZ世代の人生はむしろみすぼらしくなっているのかもしれない。


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