一億総加害者社会

ジャニー喜多川の性加害問題は間違いなく日本のエンターテイメントに残る汚点となった。権力と忖度によって蓄積された膿が今一度に流れ出ている。しかし日本国民にその膿を批判する資格はない。私たちは皆一様にこの問題の加害者であるからだ。

2003年に東京高裁はジャニー喜多川が性加害を行っていることを認定した。しかし国内メディアの忖度により、大きく報道はなされなかった。「告発した者が損をする」という感覚が被害者の口を封じ、長年ジャニー喜多川を野放しにしてきた。しかし事を肥大化させたのは国内メディアだけのせいにすることはできない。私たち視聴者もその片棒を担いでいた。
ジャニーズファンをしている者であれば、ジャニー喜多川の性搾取について見聞きしたことがあるだろう。私もそのようなうわさがあるのは知っていた。しかし過去のことであることから(岡本カウアン氏のような若い世代まで被害が及んでいることは当時はわからなかった)、特に注意を払わず彼らが作り上げるキラキラした世界に夢中になっていた。50年近く、皆が「おそらくジャニー喜多川は性加害を行っていただろう。だけど自分とは関係ないし推しが笑ってるなら別にいいや」と自分とは切り離して考えていた。今考えると、この集団心理は恐ろしいものである。皆がうっすら漏れ出る腐敗臭に気づきながらも、ただ自分の快楽のために蓋をしていたのである。この点において、私はこの問題の加害者は日本国民全員であると考える。事なかれ主義が蔓延する日本社会の弊害だろうか、BBCという外圧によってしか我々は自らの汚点を注視する勇気が起きえなかったのである。


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