メイプル

何かを書いてみたいと思って始めました。

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2024/07/19 今日、大学へ心理学の実験の被験者になるために向かおうとしたとき、マンションのエントランスの扉を抜けた先で小学生の会話が飛び込んできた。 「俺のお母さんは0.6だよ。」 「それを言うなら僕のお母さんは0.8だよ」 と男の子らが話していた。はて、なんの数字だろう、と思案していると、 「私は1.4だし。」 と快活な女の子の声が割って入ってきた。おいおい、男の子らのお母さんは1に満たないのに、この女の子は1を軽々と超えているではないか。しかしまいった。ますますわ

    • ショートショート 『つま先』

      目は口ほどにものを言うというが、僕の場合、目以上に足のつま先が物を言ってしまうようだ。ひどく熱かった昨年の夏のこと、ガールフレンドが僕に言い放った言葉が、今でもしぶとく僕の耳に残っている。 「あなたって人は、本当に私のことが嫌いなのね。そんな退屈そうにしているつま先を見ると、こっちまで気がめいってしまいそうだわ。」 実際僕は退屈していたのだが、彼女に心を見透かされたような気がしてドギマギしてしまった。 「あなたのつま先は今まで見たつま先の中で、最も感情豊かね。」と彼女は皮肉エ

      • 今日の短歌

        ぽとぽとに 落ちていく雨 果てしなく うるさい音に 耳をふさぐ #今日の短歌

        • 今日の短歌

          物言わぬ画面の向こうに投げかける 君と私は「好き?好き?大好き?」 #今日の短歌

          『紅葉』

          木々が色づき始める寸前の森の中を男は走っていた。 男はなにかに追われて走っていたような気もするし、何か目標があって走っていたような気もするが、男はただ走り続けていた。 男が走り去った後の森は秋に追いつき、様々な色を見せていた。 ただ男の前に広がる森が見せるのは、単調な緑に覆われた暗闇に過ぎず、男は不安を感じたが、到底彼の後ろに広がる紅葉に目を配ることもできず、一生懸命に暗闇に向かって走ることしかできなかった。 いつから男は走り続けていたのだろうか。生まれてこの方、ずっと走り