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011.東京三菱UFJ銀行横浜中央支店(旧川崎第百銀行横浜支店)

≪3.生糸貿易をささえた横浜の洋館・建造物011/本町通り周辺≫
*第百銀行(東京三菱UFJ銀行)が改装されてマンションの1-2階にイオニア風のオーダー(通し柱)がはめ込まれています。
 
 
 ■ファサードがマンションの1階に
 低層階部位のファサードにかつての銀行の部分を復元し、建物自体は高層マンションに仕上がっています。
 本町通りの3丁目の交差点、横浜銀行協会ビルの向に立つビルで、ここは、昭和9(1934)年に川崎第百銀行の横浜支店として建てられ、その後川崎銀行と三菱銀行の合併で、三菱銀行横浜支店→東京三菱銀行横浜中央支店と変わり、平成16(2004)年に所有者が銀行ではなくなり、大改造が行われて、21階建ての高層マンションとして生まれ変わりました。いまは、当時のファサードが、マンションの低層階の外側に設置されています。
 もともとの銀行の設計は、本シリーズの旧川崎銀行横浜支店(008損保ジャパン日本興亜横浜馬車道ビル)と同じ矢部又吉。
平成16年の大改造は、最初の工事を担当した戸田建設が行い、マンションに建て替えられるにあたって、横浜市や建築家らの強い要望もあり、低層部分の3面の外壁に銀行時代の外観意匠をそのまま生かしたことで、横浜市の歴史的建築物として認定されました。
 
 ■内部の空間がマンションのロビー
 ファサードを残して銀行→オフィスビルという改造は、上記の損保ジャパン日本興亜横浜馬車道ビルでもありますが、銀行→マンションの改造で、銀行の重々しいファサードの構えがマンションに生かされてイメージをのこしている非常に珍しいケースです
 改造の工事としては、もともと鉄筋コンクリート構造の3階建て(内部は大部分が吹き抜けだった)ので、鉄筋コンクリート構造のマンションへの改造には技術的には違和感はなかったかもしれません。
 その銀行時代の、石造りの高い天井の吹き抜けがマンションの1階ロビー、エレベーター室に活かされていて、落ち着いた重厚な高級感あふれる雰囲気を醸しています。マンションにお住いの皆さんにはとても好評で、この雰囲気が居住の決め手になったとおっしゃる方もいらっしゃいます。

正面、交差点に向いた面、関内通りに面したサイド、
どの面にも3階を通した円柱が存在感を見せています。

 もともとあった、イオニア風の大オーダーはそのまま残され、そとから1,2階を見る限りは銀行そのもの。復元した銀行の隣にマンションへの入口が設けられています。入り口はガラスですが、石造りの家に入っていくイメージがあり、それもこのマンションの魅力の一つなのだろうと思われます。
 交差点に向ったコーナーが削られていて、そこにも大オーダーがあるのが特徴で、マンションに建て替わってもその意匠は生かされています。
 このオーダーの円柱にはタテの溝はありません。近くの三井住友銀行(012)とともに、古典建築の大オーダーを比較しながら味わうといいかもしれません。

上層階にマンションが見えますが、その前面として大オーダーの意匠は違和感がありません。

●所在地:横浜市中区本町4-41

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