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(3)中国民主化の始まり――孫文・辛亥革命

前回、「岡田英弘著作集Ⅳ」をベースに、
「日清戦争(1895)で日本に敗れた清国は危機を感じ、明治維新以降急速に近代化する日本を見習おうと、日本への留学を奨励する。その手段となったのが、科挙制度を改正し、留学帰りの人材を官吏に登用することにしたことで、日本への留学が一気に増えた。孫文・魯迅・周恩来・郭沫若など多くがいる。
 辛亥革命(1911-12)は、孫文と陸軍士官学校留学生たちによる蜂起で、清国を倒し「中華民国」を生み出した。」

第4のシナ:日本化の時代-中華民国以降—日本の影響

 ・・・とご紹介した。孫文から蒋介石へとつながれ、結果として毛沢東の中国共産党に敗れ台湾に敗走することになった中国国民党・中華民国は、中国では、あまり高くは評価されてはいないのではないかと漠然と考えていたが、中華人民共和国憲法の前文を読んでびっくりした。
 辛亥革命については、中国でも高く評価されており、中華人民共和国憲法の前文でも以下のように紹介されているのだ。新たな発見であった。これも虹雲猫さんの『岡田英弘著作集Ⅳ』を読んだ結果。こういう本に出合えるというのはネットの功徳だ。感謝。

 中華人民共和国憲法(1982):前文・冒頭
 中国は、世界でも最も古い歴史を持つ国家の一つである。中国の諸民族人民は、輝かしい文化を共同で作り上げており、また、栄えある革命の伝統を持っている。
 1840年以降、封建的な中国は、次第に半植民地・半封建的な国家に変化した。中国人民は、国家の独立、民族の解放並びに民主と自由のために、戦友の屍を乗り越えて突き進む勇敢な闘いを続けてきた。
 20世紀に入って、中国には天地を覆すような偉大な歴史的変革が起こった。
 1911年、孫中山先生の指導する辛亥革命は、封建帝制を廃止し、中華民国を創立した。しかし、帝国主義と封建主義に反対するという中国人民の歴史的任務は、まだ達成されなかった。
 1949年、毛沢東主席を領袖とする中国共産党に導かれた中国の諸民族人民は、長期にわたる困難で曲折に富む武装闘争その他の形態の闘争を経て、ついに帝国主義、封建主義及び官僚資本主義の支配を覆し、新民主主義革命の偉大な勝利を勝ち取り、中華人民共和国を樹立した。この時から、中国人民は、国家の権力を掌握して、国家の主人公になった。
中華人民共和国の成立後、我が国の社会は新民主主義から社会主義への移行を一歩一歩実現していった。 ・・・<後略>

中華人民共和国憲法前文(一部)

 孫文は、日本滞在中、横浜中華街にも出入りし、中華街の料理店経営者たちにも支援を受けて滞在していたといい、そうしたお話を中華街の関係者からも伺ったことがある。辛亥革命、中華民国建国に、日本が深く関与していたというのは一つの歴史でもあるが、そうしたことが母国ではあまり顧みられていないことも残念な気がする。中国・韓国については、反日意識が強く、極力そうしたことを隠したいと思っているのかもしれない。それは中国にとって「正確な歴史」ということになるのだろうか。
 中国人にとっての「正確な歴史」という言葉には注釈が必要だ。
 
■中国人にとっての「正確な歴史」とは

 一般に日本人にとって、「歴史」といえば、
・毎日、毎月、毎年に起きた事件の詳しい年表のようなもの、
・いつ、なにが起こったという事実の積み上げ
と教えられてきた。
 そこに記述する人間や、読む人間の「思い」や「注釈」を入れず、あったことをありのまま客観的に記述し、理解すること、というのが日本人にとっては学校で教えられた歴史の理解の方法である。
 ところが、中国人にとって「正確な歴史」はそうではない、というのが岡田である。これは新しい発見だった。

ところが中国人にとっては事実の積み重ねが正確な歴史」ではない。
中国人にとって歴史とは現代中国の「正確」である。
 現代中国で「正確」というのは、「その時々の政府や皇帝の政策のラインに添ったものの見方」という意味であって、「現政権にとって都合のいい歴史の解釈が「正確な歴史」である、ということになるわけである。
 だから、徹頭徹尾、現政権を正当化しなければいけない。
 そのように歴史を都合よく解釈する、認識するのが正しい歴史認識である、というのが中国人の伝統的な考え方なのである。(P.112)

『岡田英弘著作集Ⅳ』

 司馬遷による「史記」から始まって、中国の歴史書はすべてそれが基本となって記述されているという。なるほどと言われれば深く納得する。そして、その理解を他国にも要求するのが中国の正義らしい。自分勝手というか、困ったものだ。

《シナ(チャイナ)文化の特異性》(岡田英弘著作集Ⅳより)

(1)中国:民族の成立とシナの歴史

(2)第4のシナ:日本化の時代-中華民国以降—日本の影響

(3)中国民主化の始まり――孫文・辛亥革命

(4)中国人は人を信用しない。

(5)中国には外交政策・世界政策がない

(6)漢人にとって「公」とは、私腹を肥やす手段

(7)現代中国語に革命をもたらした日本語

(8)日清戦争――日・シナ関係の歴史的大逆転

(9)シナ/中国における支配者のカリスマ性と正義

●おまけ「中国にもない漢字・漢文の大系が日本で出版されているわけ」

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