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経済効果とは?

商品やビジネスの宣伝で経済効果云々という評価が最近多くなった。いわば権威付け。現在反対意見の多い大阪万博もそうだ。大阪府や大阪市は2兆円の経済効果と盛んに強調する。

しかし、そもそも経済効果という考え自体が怪しいともいう。経済効果とはあるイベント・出来事に人や団体が消費・投資した金額の合計を表すもので、直接、一次・二次といった段階的に効果を算出する。その計算方法はイベントであれば1人当たりの費目別消費額、つまりいくら消費したかという仮定に基づくようだ。

簡単にみると、1人当たり5000円をかけてイベントで何かを買う、料金を払って何かを鑑賞・観戦するといった消費行動をしたと仮定し、動員数を掛けた結果となる。50000人を動員すれば単純に2億5000万の効果という事。実際にはもっと複雑で、あるイベントの開催や誘致に伴う建設費、資材調達費、雇用者が受ける報酬から幾らが消費に回るかといった消費転換率も含まれる。

さらにテーマパークなどの遊興施設の場合、それに伴う観光客の増加も効果となり、あわせて地域の企業に与える影響も効果とみなされる。 要するに人がどう動くか。ある場所で1泊する観光の場合

宿泊費 15000円
交通費 8000円
飲食費 8000円
お土産 5000円
その他 8000円

大まかに仮定する。産業連関表の34部門分類によって、宿泊費は対個人サービス、お土産=飲食料品、といった具合にジャンル分けされる。このような1人当たりの試算が基本となっているようだ。

こういった経済効果にはマイナスの側面がある。たとえばあるテーマパークが開業したり、イベントが開催されると当然~人動員するといった計算となるが、一方でこれまで営業していたテーマパークや施設は入場者の減少という事が考えられる。

野球チームの優勝で100億円の効果といった試算もよく見る。これは優勝によってデパートやスーパーがセールをし、それによって通常の~倍の売上や動員が見込まれ、さらに近隣施設の消費も押し上げることがまず第一の効果とされる。しかし一方で別の~が優勝であった場合の効果との差額といった話は出ない。その場合の経済効果の方が大きい場合では、総額ではマイナスとなるのだ。

結局、経済効果はお金の移動を表しているだけだ。単純に幾ら儲かるといったイメージをしがちだが、消費者側から生産者・事業者の側にお金が移動しているだけ。あるいは事業者から別の事業者への異動もある。金の分配といえば聞こえは良いが、どれほど信用できる?

大阪万博の中止延期が盛んに叫ばれているが、これほどまで歓迎されないのは何故か。

多額の公金が投入される会場整備費は、当初の約2倍となる2350億円まで膨張。目玉となるはずの海外パビリオンは建設スケジュールが遅れ続きで、着工したパビリオン自体は4月初めでわずか十数カ国という。どこまでもマイナスな要素しかない。東京五輪と同じ尻すぼみで終わるという観測が大きい。それでも頑なに「2兆円の経済効果」ばかり強調する。

そこに能登半島地震。「万博どころじゃない」という意見が増え、もともと後ろ向きであった万博の中止の後押しとなっている。

どの点を見ても逆風ばかりなのに、政府は予定通りの開幕にこだわる。

『万博はもう中止できないのか?「オリンピックと同じ末路に」』という共同通信の記事を見るとその内情が理解できる。

大阪万博の開催が決まったのは2018年11月。パリで開かれた博覧会国際事務局の総会で、加盟国の投票によって選ばれた。

中止と延期がどのようなプロセスで決定されるのか、簡単に見ると

延期 事務局の総会で3分の2以上の賛成(万博の定義を定めた国際博覧会条約による)
中止 ?(関係者間の合意による)

2020年に予定されていたドバイ万博は、新型コロナウイルス感染の影響でBIE加盟国から必要な同意を得て、延期となった。

しかし中止については国際博覧会条約には規定がなく、関係者間の合意があればいいというのだ。

とはいえ中止を想定した文書はある。開催が決まった国がBIEに提出する「登録申請書」。2025年大阪万博の場合、開幕まで1年となる2024年4月13日から開幕前日の2025年4月12日までに中止する場合、参加国とBIEに最大計5億5700万ドル(約840億円)を支払わなければならない、としている。

 これは、時期ごとの準備状況に合わせて算出された数字が根拠で、補償額は参加国ごとに異なる。各国が相当の資金を負担して参加をしているだけに、直前の中止は影響が大きいとされる。

しかし中止=賠償金のケースはなく、アルゼンチンで開催が計画されていた2023年ブエノスアイレス万博が新型コロナウイルスの影響で中止となったが、BIEの執行委員会で「不可抗力だ」とされ賠償問題に発展しなかった。

大阪の登録申請書には「不可抗力」について、「自然災害とみなすような事態に起因する『不可抗力』により中止された場合には、補償金は支払われない」とする。直接の開催地ではない能登半島地震が不可抗力なのかどうか。「万博で被災地をPRし、復興につなげる」とありがちなことばで、岸田首相が安易にリンクさせるが一体どこまで根拠があるか。

「万博には意義がある。その意義は震災には左右されない」ともいうがそもそも「いのち輝く未来社会のデザイン」「未来社会の実験場」といったテーマに具体性がなくイメージが湧かない。

『2兆円の経済効果』をうたうならば、国民の暮らしへの支援や好影響、復興に割く金額を具体的に示すべきだ」といった専門家の言葉もある。経済効果ばかり大上段に掲げ、どこまでも具体性がなくては成功するものも失敗に転じるだろう。


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