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機能性表示食品の闇

近年急増するサプリメント。そもそもこういったサプリメントは機能性表示食品とされるもので、今回の「紅麹コレステヘルプ」も国に届け出たうえで「コレステロールを下げる」と機能を表示していた。

この機能性表示食品は安倍内閣の「アベノミクス」政策の一つとしてできた制度で、「世界で一番活躍する企業活動を妨げる障害を一つ一つ改善していく」とする路線に乗ったものだった。しかしスタート時よりその評価手法や表示基準に統一的なものがなく、安全性への懸念があった。共産党の穀田惠二議員が2014年に「どんな機能があるかは企業任せ」「機能性表示をおこなえば健康食品被害がなくなるのか、もしくは少なくなると思っているのか」と追及している。

しかし認定を受けなければ効果の記載にも時間がかかり、中小企業などのチャンスが閉ざされるといった大義を掲げ、十分な議論もなく、2015年に制度が開始した。いわば今回の問題は一番懸念されたことが露呈した形となった。

機能性表示食品と似たようなものに特定保健用食品と呼ばれるものがある。紛らわしいがトクホ(特定保健用食品)は全く異なるものである。

トクホはその食品やサプリメントの安全性や有効性を国が審査するものだが、機能性表示食品の場合は「事業者が責任をもって」有効性を表示している。「科学的根拠に基づいた機能性」の責任の所在が異なるのが一番の違いである。トクホの承認を受けた商品が今回のような問題となった場合、国が責任を負うこととなる。

機能性表示食品はいわば事業者が開発し、事業者が製品化したものに、事業者が一定の科学的根拠を示して届け出ることで、効果を謳うことができる。そこに事業者と利益が相反する第三者が一切介入しなくとも問題はない。こうなると消費者の購買意欲をそそる様な、いわば根拠に乏しい効能でも安易に商品化されていると愚考してしまう。

消費者庁のHPより。国が審査を行っていないことが明記されている
情報が長い間更新されていなかったことも報道された

こういった製品は錠剤、カプセルなどが胃や腸で溶け、成分が体内に吸収されることが機能としての一つの証であるが、2019年の記事には機能性表示食品の中には、日本薬剤師会の試験で規定の時間内に液体内で溶けず、体内で溶けて効果を発揮する可能性が低いものがあると報じられていた。

さらに錠剤やカプセルのコーティング剤や酸化防止剤などの食品添加物だけを取り続けることになり、逆に健康に障害を及ぼす可能性も指摘されている。

さらにこの2つの他に栄養機能食品と呼ばれるものもある。これも製品が含む栄養成分が一定の科学的根拠を満たせば、届出や第三者の審査なしに機能や効果を表示できるものであり、2001年に創設された。いわばその安全性の基準は機能性表示食品に近い。

こういった違いがあると特定保健用食品では審査の承認が難しいため、機能性表示~として独自の審査によって販売ということも可能と考える。いくら事業者が責任を負うといってもどれほど審査されていたか怪しいものだ。
この3つの制度の相違が不明確なのも制度の欠点といわれている。



栄養機能食品も届出なしで可能というグレーな点を持つ

消費者の中にはこういった健康食品を薬と同じように考え、医師が出した薬をやめる人もいるという。これは穿った見方をすると、景品表示法の有利誤認や優良誤認にもあたるのではないか。消費者に非があるというのは酷な話だろう。メーカー側がそう認識するよう、誘導しているとすれば大きな問題だ。

紅麹コレステヘルプはじめ、コレステロール減少系のサプリメントでは他社の商品にも、筋肉痛・脱力感・尿の色が濃くなるといった症状が出た場合、服用を中止といった注意書きがある。こういった注意はどの薬品でもみられ、特別珍しくはないが、そのような症状が出るのは一体どういうメカニズムなのかという情報があまりない。

【1日の目安】
2粒
【機能性関与成分/1日2粒当たり】
紅麹ポリケチド:2mg、りんご由来プロシアニジン:27mg
【機能性表示食品についてのご注意】
※本品は、特定保健用食品と異なり、消費者庁長官による個別審査を受けたものではありません。
※疾病の診断、治療、予防を目的としたものではありません。
※食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。

【ご注意】
※妊娠・授乳中の方、お子様はお召し上がりにならないでください。
※体質や体調によりまれに筋肉痛・脱力感・尿の色が濃いなどの症状が出る場合があります。その場合は摂取を中止し、医師にご相談ください。
※薬を服用あるいは通院中の方および肝機能検査で異常のある方は、医師にご相談の上お召し上がりください。

【原材料名】
紅麹粉末(国内製造)、リんごエキス、でんぷん/ヒドロキシプロピルメチルセルロース、セルロース、ステアリン酸カルシウム、微粒二酸化ケイ素

ファンケルのコレステサポートより
尿の色云々という注意書きがある
どの薬品・サプリでもあるが決して安全というわけではないようだ



このような注意書きも説明書などに小さく記載されるだけであり、殆どの消費者の目につかないだろう。仮に目を通したとしても、この商品の機能に間違いはない、副作用が出るのはやむを得ないという自己矛盾に近い考えに陥ると、もはやどうにもならない。


消費者はどう注意書きがあろうとも、「コレステロール低下」「ビタミン」「血糖値低下」「体脂肪を減らす」「睡眠の質を高める」などといった即効性のあるキーワードを見ると、それに惹かれて購入してしまうものだ。また事業者もそこを狙いとしているところがあると愚考する。


サプリメントに関しては、業界動向の記事によると、2020年度までは売れ筋商品の機能性表示食品化や、広告展開によるヒット商品の誕生などがみられ市場が急拡大したが、翌年以降目玉となる商品がなく以降の伸びはさほどないという。

しかし一般食品の分野では、清涼飲料などで売れ筋商品の機能性表示商品化やヒット商品の誕生がみられ、2021年度には前年度比80.5%増と大幅に伸びがあった。機能性の付加により高付加価値食品として販売できること、スーパーやコンビニといった一般消費者に身近な小売店で機能性表示をアピールできることが要因のようだ。

いわばこれまでの商品に対し、機能性表示という付加価値をつけることで利益を上げるのが、マーケティングの手段となっていることが伺える。これではメーカーが機能そのものを厳重に審査することをないがしろにし、容易に増益となる機能性表示に躍起になり、どれほど機能や効果に信用があるのかと考えてしまう。また国がその増益に資する形となってしまってはいないか。

今回の事件もそれだけ消費層が拡大し、薬品や日用品以上にメーカーの一大ビジネスとなっていることをある意味示している。

サプリメント業界が拡大する中で起きた事件。ある意味、機能性表示食品などの制度の不備も図らずとも明らかとなってしまった。


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