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北海道新幹線の延期に見る

2030年度に開業とされた函館→札幌間の新幹線。工期の遅れから無期限の延期となった。

主な要因はトンネル工事で巨大な岩が見つかり、工事の中断を余儀なくされていること、建設業での時間外労働の規制強化で人手の確保が難しいことなどという。具体的にはトンネルの掘削工事で硬い岩塊が見つかって一時中断するなど、複数の個所で難工事となり3~4年程度の遅れが見込まれるようだ。

北海道新幹線は札幌までの区間の9割がトンネルで、トンネル工事に全てが懸かっているといって過言ではない。しかし昨年6月段階で掘削が完了したのは17トンネル中6にとどまる。これほどの工期遅れで残り6年で工期が未定となるとは、いかに杜撰な計画だったか。地質の問題は以前より指摘されていたもので見込みが甘かった。

問題はこれだけではなく新幹線の開業にあわせて、再開発、ホテルや観光施設といった投資が行われていること。資材や人件費の高騰により計画を見直すようだが、延伸の遅れはさらなる影響となるだろう。札幌駅のバスターミナルもビルの再開発に合わせ、閉鎖となり不便が生じている。

そもそも新幹線は開通による観光効果を期待するものが多く、地域住民にはさほどの利便性はないようだ。

新函館→札幌間の開業に合わせ、並行する在来線の廃止・バス転換の協議も行われている。しかしバス前提で進めていた協議会は、バス会社に一切の報告や協議をせず、一方的に通知し会社側から拒否されるというお粗末な展開となっている。

加えて北海道の鈴木知事は「攻めの廃線」を謳い、夕張市長時代に夕張支線を廃止し、その後北海道の路線は札沼線、留萌本線と次々と廃止している。しかし後継となるバス路線も、ドライバーの残業規制強化の「2024年問題」に加え、バスドライバー不足が既存路線の維持も難しい程に深刻化し、道内のバス会社は鉄道の代替までカバーする余裕がない。

そもそもこの知事もかなりの曲者で、看護学校のイジメ自殺や鳥インフルエンザといった問題への取材や討論を拒否していることが報じられている。高レベル放射性廃棄物の最終処分場の選定、五輪招致でも積極的な発言をせず後ろ向きである。さらに政治資金問題でもパーティ券の購入者数を水増しといった疑惑があり、どこかダーティーな面を持つ。鉄道のみならず強硬的な手法には批判もある。

この延期は札幌五輪の招致失敗の影響も大きいようだ。札幌市が途中で30年大会に切り替えた背景には、26年の招致の準備に遅れが生じたのもあるが、国家レベルで進む五輪の開催都市になれば、新幹線の工事も加速するという期待もあったようだ。しかし、23年末に招致は失敗。今回の無期限延期とも無関係とは言えない。

加えて鈴木も積極的な、先端半導体の「ラピダス」の工場建設が千歳市で進む影響で工事人員が不足したのも一因といわれる。

かねてより事故や不祥事続きで厳しい経営の続くJR北海道にもダメージである。現在、今年からの3年間で国から1092億円の支援が決定している。

JR北海道は2031年度に国から財政的な支援を受けることなくグループ全体の損益を黒字化する「経営自立」を目指すとしている。これにはホテル事業といった鉄道以外での収益や、北海道新幹線の利用促進による黒字化がカギとなる。この2031年という数字は新幹線延伸の翌年であり、当然北海道新幹線延伸による経営改善を見込んだものである。ところが今回の開業延期によって全く白紙となり、当然この経営策も変更を迫られるだろう。

JR北海道・札幌五輪・道知事・半導体事業・観光事業とさまざまな利害の絡み合う北海道新幹線。一体開業の時は来るのだろうか。

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