ボードゲームで「協力」が発生する条件
みなさんはじめまして。私が日々感じたことや考えたことについてまとめていく目的でnoteを始めてみました。関心を持ってくださる方がいらっしゃれば幸いです◎ある程度記事が溜まってきたら自己紹介も改めてしようと思っています。
さっそくですが、とりあえず最近考えている,”ボードゲームで「協力」が発生する条件”について,いくつかのゲームをプレイしながら感じたことをまとめてみます。『パンデミック』をはじめとして近年いくつかのボードゲームで取り入れられている,”プレイヤー同士で協力してゲームが進行していくシステム”についての考察です。
(A) 口火を切る人が存在できるために
コミュニケーションが発生すること(他プレイヤーとゲーム内において共有・提案・受諾・調整が行えること)
「提案できる勇気,受諾できる信頼,調整できる余裕を全員が持っている」という共通認識がある
強い奉行が存在しない(=全員が当事者意識をもつ)
共通の目的が明示されていること
ルールの理解
ゲーム終了条件(クリア/ゲームオーバー)の理解
「協力」が発生するうえでの最初のハードルになることは,「誰も話していない中で自分から声を出しづらい」「出すとしても,何を話していいかわからない」ことだといえます。前者については声を出しやすい雰囲気が(1-1・1-2),後者については話す目的が(2-1・2-2)あれば解決になります。
特に1-1は,参加者らに「このゲームをしたい!」という強い気持ちがあれば(それが参加者間で共有されていれば),それが自分や相手へのポジティブな認識に繋がると思います。
そのために,今からするゲームを知っている人がいるならばその面白さを事前に話すとか,そのゲームのアートワークやコンポーネントを眺めるとかする時間を取って,参加者らの興味を惹いてゲームへの流れを作ることが大切だと思います。
個人的に,2-2は見落としがちなポイントだと思います。一般的なゲーム(ボードゲーム以外も含めて)は「協力」を前提としていないものがほとんどですので,参加者の中には「なぜ協力が必要になるのか」がピンときていない人がいても不思議ではありません。「しなくてもいいなら,とりあえず一人で進めてみよう」と思う人もいるでしょう。
そのため私はルールのインスト時には,色んなタイミングでゲーム終了条件について触れ,そのたびに「クリアのために/効率よく得点を稼ぐために,協力が必要」と説明しています。(※この点は,下記の(C)とも関連します。プレイ中に必要と感じさせる仕掛けについては(C)を参照してください。)
(B) 補い合いが生じるために
自分と相手のニーズが理解・共有されていること
各プレイヤーの役割が理解・共有されていること
手持ちの資源・情報が理解・共有されていること
盤上のホットスポットとの距離が理解・共有されていること
上記1~3の中で生じている不均衡が理解・共有されていること
自分と相手の役割の得手不得手
自分と相手の資源・情報の偏り
自分と相手のホットスポットとの距離の遠近
「協力」の原動力は「補い合い」だと思います。「自分にはできないことを相手は出来る/自分はもっていないものを相手はもっている」からこそ協力を求めるのだと思います。そのため,自分と相手のニーズが理解・共有されていることは重要になります。そしてその理解・共有のために,上記の1から4(特に4)が必要になります。
4-1「自分と相手の役割の得手不得手」の理解・共有には,(A)2-1「ルールの理解」が必要なことは言うまでもありません。そのためには,通常ルールから大きく逸脱する動きが出来るような特殊な役割は数多く入れないようにするなどの工夫が必要でしょう。またはインスト時に,各役割でどういうアクションがとれるのか/とれないのか,ゲームのクリア条件にどう貢献できるのか/できないのかなどを,テストプレイを通して確認することが大切かもしれません。
4-2「自分と相手の資源・情報の偏り」について,ゲームの仕掛けとしては通例では手札やトークン,盤面に駒が置かれることで表現されます。ただしこの方よりは,一見するだけでは「数」に偏りがあることはわかっても,それがどういう意味なのか(ゲームのクリアにどう影響しているのか/互いにどう補うべきなのか)がわかりにくいかもしれません。その場合は「できないこと」の理解・共有”を促し,それを助けるイメージでアクションを進めるように促すと協力の発生につながるものと思われます。
4-3「自分と相手のホットスポットとの距離の遠近」について,ゲームが動いている(特に,クリアに近づいている/ゲームオーバーに近づいている)最前線にすぐにアクセスできる位置にいる者同士で協力が起きやすいと思います(逆に,遠い者同士で協力しようとすることは非効率的である場合が多いように思います)。
(C) 必要性を意識させるために
1人ではクリアできないという共通認識をもつこと
危機的状況に陥れること
ゲーム終了条件(クリア/ゲームオーバー)の理解だけでは,「協力」の発生には不十分だと思います。「それくらいゲームのクリアは難しい(=プレイヤーの取りうるアクションに制限が課せられている,あるいはターン数制限が厳しい)」という理解も加わることが大切だと思います。
この「できないかもしれない」という感覚は重要です。ここまでの条件を十分に考慮してゲーム序盤に「協力」が生じたとしても,中盤以降にクリアに向けて軌道に乗っているという感覚を持たれると,とたんに「協力」の意識は薄れるかもしれません。中盤以降に危機的状況が(複数)生じるようなゲームデザインであれば,引き続き「協力」が生じつづけるだけでなく,ゲーム自体の満足度も高まるものと思われます。
ここまでのところで,色々なゲームをプレイするなかで重要と思われる条件についてまとめてみました。今後の記事では,具体的にゲームを取り上げながら上記の内容についてさらに深堀してみようと思います。
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