人生に焦る学生 何かしないと
オーディションを受けたことがある。
それはとある芸能事務所のオーディション。
夏休み、ずっとだらだらしてていいのかな、何かした方がいいのでは、そう思ってその“何か“を探していたとき、たまたま俳優オーディションの案内を目にした。
そして私はオーディションを受けた。
オーディションってこんな感じ
当日、会場に行くと同年代の子たちが列をなして受付をしていた。その光景を見た時点で心臓はビクバク騒がしくなり、一瞬帰ろうかと思いもしたが、それではこの先一生後悔するに違いない。
ふんばって列に並んだ。
会場スタッフの方たちは優しく親切な人柄だったこともあり、安心して列に並ぶことができた。
待ち時間は、他の参加者と共に会議室のようなところで丸テーブルを囲み座るのだが、皆緊張が解けない様子でシーンと静まり返る室内。
あったとしても、たまに目があった子と会釈するくらいのコミュニケーションだ。
はじめに全体で説明された流れによると、10人ずつ小部屋によばれ、1人ずつ、審査員2人の前で自己PRを1分間行う。
自分なりに、今日のために自己PRで何をするか、しっかり考え、自宅で練習をした。
行きの電車と1時間ほどあった待ち時間は、ひたすら脳内シュミレーションに費やした。
準備はバッチリである。
いざ本番、よし行くぞ!
意気揚々と審査員の前に立つ。
その時だ。
私の脳内からは準備してきた全てのことが抜けていった。
焦りはしなかった。
頭が真っ白になるとは、こういう感覚なのだと知った。
私は気がつくと好きな寄生虫について話していた。審査員のスマホから、一般を知らせるアラームが鳴り響いても私は話し続けた。
まだオチが話せていなかったから。
30秒ほどオーバーして、私の自己PRは終わった。
自分の番が終わった途端に、周りが突然見えてくる。
自分以外の参加者は、
ダンスや合気道を披露する者、その場で演技をする者、ギターを弾きながら歌を歌う者など、十人十色の自己PRを行っていた。
みんな、それぞれ違った輝きを放っていて、眩しかった。
そして、しばらく待った後に結果発表。
一次審査落選。
10人とも落選であった。
帰りの電車で考えたこと
電車に乗り込んでから、しばらく頭が働かなくて、呆然と、していた。
終わってみれば、一瞬の夢の中みたいなそんな感覚であった。
結論として、私は焦っているんだなと思った。
自分には夢中になれるものが何もない、
周りの人間の日々が充実していて輝いて見える、応援している芸能人が最近人気になった、
キラキラしているものを見ると、自分と比較して、焦る。
何をすればいいかは分からないけど、何かしないといけない気がして、何者かにならないといけない気がして焦った結果、俳優オーディションというわかりやすく何者かになれる機会に飛びついたわけだ。
俳優になりたいわけじゃなかった
演技はしたことないし、人前に立つのは苦手だ
冷静な頭で考えれば自分に適している職ではないと分かる。
そんな気持ちでオーディションを受けるなんて本気でその道を目指す人からしたらとんでもない迷惑である。
本当に申し訳なかったと、今更思う。
にもかかわらず、オーディションに飛びついたのは、誰からも急かされていないのに1人で勝手に焦っていたからだろう。
今もその焦りはある。
何かしなければならない、という焦りだ。
早く焦りのない向こう側に行きたいと常々思う。
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