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鎌倉市「かまくら起業のススメ~自分らしい事業づくり講座~」説明会『鎌倉で始める、自分らしい事業のつくり方』開催レポート

鎌倉市では、鎌倉市商工業振興計画(働くまち推進計画)に基づき、職住近接による豊かなワークライフバランスが実現できる「働くまち」の整備を進めています。
その働くまち推進計画の一環として、今年度から鎌倉起業家スタートアップ支援プログラム「かまくら起業のススメ~自分らしい事業づくり講座~」をスタートしました。

このnoteでは、7月29日(土)に鎌倉商工会議所で開催されたかまくら起業のススメ講座キックオフ説明会の様子をレポートします。

ゲストスピーカー
合同会社SANTI 松本 愛子 氏
株式会社トーチス 松岡 大輔 氏
株式会社public and co 小林 ななみ 氏

進行・実施運営 株式会社あゆみの 土肥 梨恵子
主催 鎌倉市
連携 起業支援拠点HATSU鎌倉
※以下敬称略


鎌倉ならではの"自分らしい起業"を目指して

土肥 「かまくら起業のススメ」とは、鎌倉で‘’自分らしい起業家‘’を増やすためのプログラムです。自分らしい起業家とは、こだわりや好きを起点に、自分のペースで人や社会に貢献する起業家を指します。このプログラムにより、自分のスタイルを持った鎌倉の起業家を増やし、事業連携やネットワークを広げていくサポートをしていきたいと考えています。

本日はゲストとして鎌倉で自分らしい事業をつくられている3名の起業家をお招きしました。思い描く目標をどのようにカタチにしていったのか、事業を応援しあえる仲間とどう出会ったのか、鎌倉ならではの起業メリットやマーケティングの方法など、会場のみなさまからいただいたご質問も含めてさっくばらんにお話いただきたいと思います。

Q1:起業を思い立ってから具現化までの過程は?

松本 私の起業のきっかけは夫と二人で行った世界一周旅行です。自分探しというよりは昔からやりたかったことを実現するための旅で、休職して行っていたので帰国したらもとの仕事に戻ろうと思っていました。

ですが、旅の途中にイタリアで出会ったジェラートのおいしさに衝撃を受け、そして旅の中で先進国の大量生産・大量消費の価値観に違和感を持ち、心を動かされたジェラートを通じて自分たちで何かできないかと考えるようになりました。伝えたいことと伝えたい手段がマッチして、旅をしながらそこに落ち着いていったという感じです。

私は商売の経験がなかったので、帰国後いったん仕事に戻り、GELATERIA SANTiの開店に向けてインターネットや書籍での情報収集から始めました。市場調査やお金などの現実的な問題と、お店をしている方や経営者の知り合いもいなかったため、開店までの準備期間を長くとり、同じく起業準備をされている人や事業を始めたばかりの人とつながりながら、ビジネスモデルのイメージを作っていきました。

開店のための資金は自己資金1/3、公庫融資2/3、それと元気アップ事業補助金を活用して、資金計画を立てて開業しました。開業時は個人と会社の生活が直接結びつくものなので、たとえ売上が上がらなくても1年間は生活できるよう、会社よりもまず生活が成り立つように準備しました。良い選択や決断をするためにも資金面には十分な余裕をもつ必要があると思います。

松岡 起業の直接的なきっかけは家族の病気です。病気が原因で困っている姿を目の当たりにして、なんとか解決できないかと考えるようになりました。

当時その課題を解決できそうな会社に勤めていたので、社内でトライアルもしたのですが、その会社の中では正面から課題を解決することが難しいと感じました。やはり自分自身で取り組まないとダメだ、これをやらなかったら後悔すると思い、最終的に起業を決意しました。

自分の場合はいきなり起業するのではなくて、起業の1.5年前から準備を始めました。その事業で仕事をもらえそうかビジネスの方向性をよく検討し、アプリの開発と検証の時間を十分にとって進めました。

うまくいかなかった時に戻れる場所があったのはよかったと思いますし、十分な準備期間をもうけたことで、起業後も不安にならずに事業を進めることができました。

小林 私の家族は会社経営や美術・歌など自分のやりたいことを仕事にしていたので、もともと私自身も起業という選択を強く意識していました。

起業のきっかけは大学時代にフィリピンのまちづくりを学んだことが始まりです。まちの最小単位は人で、人と人とがつながることでまちが変わると信じていました。そして、NPO団体が300以上もあり市民活動が盛んな鎌倉市はそれを体現していると感じ、このまちでできたらおもしろそうだなと直感して、鎌倉で起業しました。

関係案内所はつひのでの事業計画の具現化はゼロから始めました。開業やマネタイズにあたってわからないことだらけだったので、松本さんの旦那様に資金計画を見ていただいたり、HATSU鎌倉のメンターの方々に事業内容の壁打ちをしてもらったり、起業に関するコミュニティに所属して計画づくりをしました。

開業資金は自己資金、家族からの協力、元気アップ補助金の3本柱で調達しました。また、はつひのではいろいろな方にかかわっていただくことを大事にしていたので、その中で設備投資が少なく済んだ面もあります。いかに設備投資やランニングコストを下げるかを考える必要があり、メルカリなどで家電を調達したりもしました。
起業についてはなんとかなるだろうと思っていました。未知のものに挑戦する、新しいことをするのが好きなタイプなので、不安がるのではなくおもしろそうという気持ちで進めていきました。

Q2:鎌倉での仲間づくりとマーケティング・発信方法は?

松本 開業準備期間は起業のタイミングが同じ方々ととてもつながりやすかったです。熱い想いがあり同じような悩みもあって、準備の段階で仲間ができていきました。スタッフについては、開業当初は特にスキルよりも私たちのビジョンをしっかり話して、同じ方向を向いて進められるよう気をつけました。開店後は私たちのすることに共感してくれる人が自然と来てくれるようになりました。

マーケティングは課題で、スタッフにもっとこういうことをやったほうがいいよと言われることもあります。開店当初に鎌倉のインフルエンサーの方が発信してくださったのはすごくラッキーでした。鎌倉はリアルでの人とのつながりが重要な地域で、リアルで拡散力のある人に広めてもらえたのはありがたかったです。

松岡 仲間の集め方はもともとのつながりがほとんどで、共同創業者も大学の同期です。大学時代の知り合いや社会人時代など、既につながりがあって弊社の事業に共感してくださっている方に入ってもらっていて、そういった入り方が一番いいかなと思います。

マーケティングについては、特定の疾患をお持ちの方が対象のサービスなので、とにかく口コミを大事にしていました。ただ、マーケティングに本格的に取り組む前に、まずは利用してくださる方が少なくてもいいから、その方の力になれる、愛されるアプリを作ろうということを一番に考えています。

小林 私も松岡さんと同じで、もともとのつながりがある方々にご協力いただいています。HATSU鎌倉のようなコミュニティに所属すると、興味関心が似ている人が所属しているので、協業しやすいように感じます。まだ会社としての体力がないので今のところ正社員採用の予定はありませんが、業務面で一緒に仕事をするといった形での協働のスタイルをとっています。

発信方法について、はつひのでの物件は日の出屋商店という100年酒屋をしていたお店で、地域でのお祭りや関係性、そのつながりがもともとありました。それと、場づくりを手伝ってくれませんかとInstagramで投げかけて興味を持ってくださった方にグループに入ってもらい、お店づくりや発信などを手伝ってもらいました。作る段階から関わっていただいていろいろなところに発信してもらえたのも大きかったと思います。

Q3:鎌倉で起業するメリット・デメリットと、自分らしい事業の作り方とは?

松本 鎌倉を開業の地に選んだのは想いがこもったことをすれば理解してくれる人がいるからです。観光客の方も含めてお客様が多く、住んでいる方の意識も高いと感じます。デメリットは家賃が高いこと。人がいる時間帯が短いのに家賃はとても高い。

私は商売の経験がなく、未知のものに挑戦するのが苦手だったので、自分のつくるジェラートの味には自信があるけれど、お客様に受け入れていただけるかとても不安でした。それは事業計画や市場調査、鎌倉の仲間や同業他社とつながり、裏付けのある計画をたてることで払拭していきました。まだ事業が安定しているとは言い難いのですが、プレオープンで行列ができて良い評価をいただいたこととジェラートの技能を競う世界大会で賞をいただきオフィシャルに認められたことがこの業界でやっていく自信になっています。

起業は自分がやったことに対してダイレクトにリアクションを得られます。開業の際に立地を含めていろいろ言われましたが、大多数の人と同じことをしたり迎合する必要はありませんし、逆にチャンスだと思います。アドバイスは聞くけど惑わされず、自分が信じたことをやるしかない。やりたいことを思い切ってやれば必ず何か得られることがあるので、ぜひチャレンジしてほしいと思います。

松岡 鎌倉で起業するメリットは、自然が身近にあること。これはとても大事な点で、大きなメリットだと感じます。デメリットなのは、会社の仲間に鎌倉に来てもらおうと思っても、なかなか来にくいことですかね。気軽には来てもらえないです。なので、そのあたりは覚悟を決めておく必要があるかなと思います。

起業は、うまくいかないことの方が多いと思ってやった方がいい。自分もやっていけると感じるまでに2年くらいかかりました。解散する会社が増えるのも2年目くらいなんですよね、モチベーションが続かなくなったりして。
ただ、続けていけばいつか必ず、グッと上がる日がやってきます。そこまでなんとか耐えて、続けていくということが重要だと思います。

自分のサービスを通して、いろんな人の役に立てる、そしてその声を直接聞けることは、起業してよかったことだなと心から思います。

小林 鎌倉は仲間が作りやすいのがメリットだと思います。コミュニティが無数にあり、同じ想いで活動している人を見つけやすい。デメリットとして、東京と比べると利用できる補助金が少ないので他の補助金を見つけて利用する必要があるかなと感じます。

私もはつひのでを作る時に、絶対無理だよ、やめた方がいいよと知り合いに言われました。つらい経験ではありましたが、自分の意志が勝ったのでそのまま始めました。
毎月売上が変わりある月もない月もあるので、まだやっていけるという確信はないかもしれませんが、毎日楽しく生きられているのはすごくいいなと思います。それから、はつひのでのシェアオフィス機能を利用してくださる企業が増えてきたのと、地域の方から相談をいただいてお祭りやイベントなどを一緒に企画することも増えていて、地域との関わりを大切にしている場所なのでとてもうれしく感じています。

起業して、自分のやりたいこととあり方と仕事が重なり、人生を生きる上でとても楽しく充実しています。大変は大変なのですが、パートナーとも四六時中仕事の話をしています。それが苦じゃない、楽しめるかどうかが線引きになるかなと思いました。

土肥 ゲストのみなさま、貴重なお話をありがとうございました。

鎌倉で仲間とともに"Well-being"を追及しながら起業しよう

土肥 起業やベンチャーは寝る間も惜しんで働くイメージがあるかもしれませんが、ゲストのお話を聞いて、鎌倉の起業家はライフスタイルや自分のウェルビーイングを追及しながら起業している方が多い印象を持ちました。やりたいからやる、それは鎌倉ならではの起業のように感じました。

会場のみなさま、ぜひこのスタートアップ支援プログラムを活用いただき、鎌倉で自分の理想のライフスタイル実現に向けた起業を進めていただければと思います。
本日はどうもありがとうございました。

※社名・役職などはインタビュー当時のものです。


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