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イアン・ドールテイン&クリス・クターナ「新たなルネサンス時代をどう生きるか」国書刊行会


原題は「AGE OF DISCOVERY」とある。オックスフォード大学気鋭の学者2名による共著だ。副題は「開化する天才と増大する危険」とある。

現代社会はかつてのルネサンスの時代と極めてよく似ている。ただし、ルネサンス=文芸復興ではない。その後ろに忍ぶ危険もあるし、実際ルネサンス期に恐ろしい病疫や戦争が待ちうけていた。本著で扱うルネサンス期は1450年~1550年の100年である。

この間にフィレンツエやローマから世界的な芸術、文芸、技術が雨後の竹のように生まれた。ミケランジェロ、ダヴィンチ、グーテンベルク、コロンブス、ガリレイ、マキアヴェリ、ルター等天才が開花した時代だった。

これらの正の遺産の象徴はダヴィンチの「ウィトルウィウス的人体図」である。円は調和のとれた完璧な天、正方形は4角、4元素、四季=地、それらの背景の中心に人間をおいて万物の主としての潜在能力をしめしている。

もちろん負の遺産もある。芸術的な天才が開化する一方、南アメリカに天然痘などの病疫を持ち込み、また力の論理で征服し、その文明を完全に破壊したのだ。

1990年以降の世界はどうだろう、ベルリンの壁が消え、ソ連が崩壊し、中国は自給自足の国から世界最大級の経済大国になった。インターネットが登場し全世界の半数がネットにつながる世界が実現し、知識や情報はメデイアを通さず無料で獲得できる世界が実現し価値観も大きく変化した。

いまや一国だけの経済など存在せず、貿易物品が25%をしめる世界が実現した。人間の移動も大きな影響を与えている。シリコンバレーはほとんど移民の技術者がしめている。移民がイノベーションをもたらし世界の文明をリードしているのだ。事実インテル、グーグル、ペイパル、テスラの創業者は移民である。いままだ話題になっていないアフリカは世界最大級の都市を次々に生み出していくだろう。

いまやAIが世界を席巻する時代を目の前に迎えている。負の遺産として格差の拡大と不安・不満の増大、憎悪の増大などがその勢力を拡大化させている。ネットが世界を滅ぼす武器にもなりうる大変な時代を生きている。

そんな現代に必要なものは「展望」だ。ゴリアテに立ち向かうダビデにならなければならないし、ダビデの姿を展望として可視化しなければならない。その答えはどこにあるのか?「歴史」しかも「ルネサンス期の歴史」にある。ダビデになるためのヒントがたくさん紹介されていたが、俺のアンテナに引っかかった項目を4つ記しておきたい。

・新しい地図をつくりだすこと

・違いを探し求めること

・教育を生み出すこと

・芸術を愛すること

本著でまた新しい関心の襞ができた。次の読書に生かしていこう。

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