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帚木蓬生「ネガティブケイパビリティ」朝日新聞出版

副題は「答えのない事態に耐える力」とある。

Nagative Capabilityは文字通り「負の能力もしくは陰性能力」なのであるが、本著の定義付けは「性急に証明や理由を求めずに、不誠実さや、不自然さ、懐疑の中にいることができる能力」となっている。

この概念の起源はイギリスの詩人ジョン・キーツにあるという。
キーツはシェークスピアを評して「桁外れにNagative Capabilityを有している」と記述しており、その記述をイギリスの精神科医ビオンが発見したことでその存在が明らかになったらしい。

このビオンという精神科医はいわゆるマニュアル的な診断に疑問符を打ち、キーツのいう「宙づり状態を支える力」を高く評価した。脳は正解を求めたがる。「わかりたい」は本能で、「わからないもの」は不安をもたらす。だから人々はPositive Capavilityに依存していくが、実はそれこそが「本質を見逃す元凶」になりうる。

「わかりたがる脳」はARTさえも「わかろうとして」勝手に解説を加えるが、実は本質をとらえるどころか、本質から遠ざかる危険性をはらんでいる。よく考えてみれば、いまSNSには「知ったかぶり」情報が溢れ、本質からどんどん遠ざかってしまっているよな・・。

「答えは好奇心を殺す」

「創造行為は人生上の重荷を軽減する」

「人の病の最良の薬は人である」

ポジテイブシンキングは確かに大切だが、それがベストではない。
ネバティブ・ケイパビリティをもつことで見えてくる景色もあるはずだ。
世渡り上手であるより、豊かな人生でありたい!
そのために必要な能力であることを感じた。


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