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上田薫「人が人に教えるとは」医学書院


曖昧模糊を大切にする、ズレと不確実性から発見し、真摯に向き合う。そして全人類的な課題に対して自分の視点を持ち、あらゆる難題に果敢に向き合う人間教師!京都大学哲学科を卒業し、その後、長年教育の現場を潜り抜けてきた著者の一言一言が胸に響いた。

届こうとしてもなかなか届けない境地をより明確に示してくれたという点で、非常に参考になる一冊だった。知識伝達教師でなく、人間教師になれということなのだが、これは俺が描く教師像と一致している。厳しさと人間としての暖かい胸をもつ、学生に媚びない、尚且つ知的な裏付けのある教師。そういう教師になりたいが、まだまだ道半ば・・。一歩ずつその領域に近づいていきたい!

<メモ>
「人間が教えるということは、表面的局部的な知識をその場限り断片的に一回だけ与えるというのではないのが筋である。教えるものも教えられるものも、実は生きた個性的人間であり、教えられる内容のほうも、いつまでも不変の価値を持つものではないのである」

「計画の充実のためには、まず想像力の豊かさ鋭さが不可欠であることはいうまでもない。予測が貧困で的確さを欠けば、計画ははじめから狂いを持ち、重点の置きようもないことになる。子どもや患者の状況を洞察する力を欠く教師や医師は、効力ある計画など立てうるはずはない」

「教師が用意した正解に閉じこもって、相手をそこへ引きずり込もうとすると、その正解の付近でいろいろと立ち迷い考えている個々の子の好ましい有望な状態が殺されてしまう。そこにある大切なわからなさが枯死してしまう、その結果私が一番大事だと思う「ずれ」というものが無視されてしまうから、個性的な発展など期待しようもなくなるのである」

「自由で主体的で柔軟強靭といった生き方、決して自分を守ろうとしない生き方こそセンスの良さ」

「目指すべき人間像は、奥行きある視野をもつこと、もちこたえる力をもつことである」

「未曽有の難局に立ち向かうことにおいてこそ、人間はその品格を根本的に問われる」

「人間理解を重んじ、人間についての発見を指導の根底とする教師は、視野広く柔軟であると共に強靭な主体性を持たずにはいない」

「本当に大切なことは、はずれの子ども達に救いの手を伸ばすというのではなく、教師が彼らに身を寄せていくということなのである」

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