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諏訪哲二「教育改革の9割が間違い」ベスト新書


 表紙に書かれていたアクテイブラーニングが是か非か、ということより「プロ教師の会」名誉会長としての教育の見解が紹介されている本だった。でもそれがかえってよかったような印象もあった。教師という特殊な職業を持つものの性というか正体をよく見抜いているなと感じた。

教師が陥りやすいのが「私は生徒の立場に立って考えている、生徒のことを真剣に考えている」といった勝手な思い込みだ。そういう正義感でつっぱしる場合の如何に多いことか!

「ほとんどの教師は生徒に対して独善的であり、自己過信的である」

これは至言だろう。時代が進んでいけば当然学生の教師に対する味方はかわる。その学生の立場に立つというのは「自分にとって都合のいい立場に自ら立つ」ということにならないか?そうすると教師はどうしたらいいのか?学生側に好かれるように寄り添っていくというのは堕落でしかない。教師としての筋を立てて変わらないものをもっていることが大事なのだ。

「教えることが上手な教師とは、学生が何をどれだけ知らないかを知っている人であり、その子にどう教えるのが適切かを感受できる人のことをいう」

そう、教師としての役割を知っていれば、自動的に単調な授業になるわけがないし、それがアクテイブラーニングだということになる。だから紋切り型の教育、効果的な授業手法なんてものは学生の数だけあるのであって、お上が指定できるようなものではない。

俺は学校で以前FDを担当していて一定の勉強ができたが、これを一人一人にあった形で提供することが今後問われるだろう。

本著で尾木ママのことが言及されていた。彼が先生と学生を「説得と納得」の構図で語ることについて教師の傲慢だと言い放っていたが、俺はそれ以上に教育評論家なんていう胡散臭い存在はいらないと考えている。今、現場にいない人に語る資格などないと思う。

著者の諏訪氏については少しだけ知っているが、国際性といった面でいうとやはり残念な視点しかもっていない。まあ、それが日本の教育畑にいる人の限界なのだと思う。

教育に対しては謙虚に、学生に対しては凛として臨むのが一番シンプルなアプローチだろう。そういう姿勢でまた学生の前に立とうと思う。


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