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人にはなかなか言えない趣味についての話

※グロテスクな表現、過激な表現が含まれますので、苦手な方は閲覧をお控えください。


人には気軽に話せない趣味というのは、多かれ少なかれ皆持っているものだと思う。たぶん。
人に言いづらいのは、それを世間と照らし合わせた時に一般的だと思えないからだ。その趣味を他人に開示することで否定をされたり、相手を不快な気分にさせてしまったり、傷つけられる可能性もある。時には異常者だと扱われるかもしれない。
マイナーなものであればあるほど、共有できる仲間を見つけようとするのは至難の業だろう。


人には言えない趣味とは何だろうか?
フェティシズム(性的倒錯)であったり、色々なコレクションだったり、倫理的に良くなかったり、ギリギリ法に引っかからないラインのものであったり、性的でマイナーな娯楽だったり。
もちろん、同意のない無関係な人を傷つける行為や犯罪は何であろうとダメだが。

本当に好きなものを人に話せないのは孤独だ。仲間を見つけるためにはその趣味を開示するしかないのだが、常にリスクが伴う。
それでも誰かにわかって欲しい、共感して欲しい、自分はずれていると分かっていても、同じような人がいるだけでなんと安心なことか。

自分は存在していてもいいんだ、なんて思う。


そんな、人にはなかなか話せない筆者の趣味についての話をしようと思う。



怖いもの見たさで


それを最初に自覚したのは、幼稚園児の時だった。
やたらホラーなもの、残酷なものが好きだった。
怖いものは怖いのだが、どうしても好奇心が抑えられず、見ていた。

レンタルビデオ屋に連れて行って貰った時には、必ずホラー系のビデオを借りた。内容はほとんど覚えていない。遊ぶ時は、お化け屋敷ごっこと言って、紙に赤の色鉛筆で色を塗って血糊を作っていた。好きなジブリ映画はもののけ姫で、暇な時に何度も繰り返して見ていた。
寄生獣の漫画のグロテスクなシーンをまじまじと眺め、その部分を母親に見せて楽しんでいた。母親はそういった類のものが苦手であったため、顔をしかめていたが、その様子がおかしかった。

小学校高学年に上がると、親のパソコンでインターネットを見始めた。このインターネットとの出会いにより、世界が大きく広がることとなった。
YouTubeで人柱アリスを知ってからは、友達と何度も歌った。暗い森のサーカスのpvを初めて見た時は若干トラウマになったが、その後何度か聞くうちに克服していった。
中学校に入ると、ハッピーツリーフレンズという海外のアニメにハマった。可愛らしい動物たちが殺されたり、残酷な死を遂げるアニメで、可愛い絵柄なのに残酷というギャップにどハマりしてしまい、YouTubeで何度も見たり絵を描いたりしていた。

その繋がりで、検索してはいけない言葉 の存在を知った。検索してはいけない とは、文字通り検索しない方が良いもの(不快な気分にさせるもの、ウイルス、驚かせるもの、猟奇的なもの…)等である。色々ジャンルがあるのだが、特に目を引いたのはグロテスクなもので、DSiのブラウザの小さい画面で検索しては、遠目で見るということを繰り返していた。
当時仲の良かった友達と一緒に見ては報告し合い、時々検索した事を後悔しつつ、楽しんでいた。
中学時代、特に思春期のイキりのようなものもあったのだろう。とにかく、気になったものは調べた。同じクラスの女子が、その検索してはいけない言葉のあるワードを知っていると聞き、胸を躍らせながら話をしたりもした。

暫くホラー映画とはご無沙汰だったのだが、映画「saw」をきっかけに、拷問道具について興味を持った。地元の図書館で本を調べたかったのだが、一般開架されておらず、Amazonで購入するかどうか本気で迷った。親にバレたくなかったので結局買わなかった。
この頃から、自分が好きなものは他の人は別に好きじゃないんだろうな、一般的には苦手な人が多いのだろうなと感じ始めた。
高校では、中学時代に仲の良かった友達とは離れてしまったので、リアルで関わる人には誰にも言えなくなり、一人で楽しんでいた。

それから大学生になり歳も重ねたが、好きな物はずっと変わらなかった。怖いもの見たさで検索して落ち込んだり、気分が悪くなることもあったが、それでも 「知りたい・見たい」という欲求は抑えられなかった。
他の人はこうでは無いんだろうな、自分は異常なのだろうか、という思いを強めていたので、少しでも話ができる人を見つけるととても嬉しかった。
自分が危険な目に晒されることは嫌だったので、画面越しに検索して色々見るだけに留めていた。
自分の他にこれが好きという人は居るのだろうか?
日々そう思いつつ、インターネットの書き込みを眺めていた。


とあるアカウント


Twitterを始めると、あるツイートが目に止まった。亡くなった人を、まるで生きているかのように撮っている写真だった。西洋の、ヴィクトリア朝時代に流行したらしい。

そのアカウントを辿ると、他にも実に興味深いツイートが沢山あった。フィクションではなく全てリアルで、この世界に実際にあった出来事や文化の数々はなかなか衝撃的だった。
拷問道具、処刑の方法、同性愛の歴史、犯罪、遺体の写真... とにかく、表には出回らないような、アングラで隠されていた世界がそこにはあった。好奇心が止まらず夢中で見た。
こういうものを知りたかったのだ。
隠されているからこそ、知りたくなるのだ。
歴史の裏で行われていた血生臭いツイートも淡々と述べられていて、時には目を背けたくなるようなショッキングなものもあった。

どうやらそういった残酷なもの、隠された歴史等について興味がある人は一定数いるようで、いいねとRTは毎回行われていた。
反応している人のツイートを見ると、皆「普通の人」だった。
実は皆興味があるのか。自分だけではないのかとなんだか安心した。

このアカウントを動かしているツイート主は古書店を開いていて、本や骨董品が沢山あるらしい。そこに行ってきたという人のツイートをRTしていた。
いつしか自分もここに行きたいと思うようになった。

そしてとうとう、その機会が巡ってきた。


実際に行ってきた


飛行機にほとんど乗ったことがなかったので、搭乗に慣れている友人と共にその場所に行ってきた。我々の他に既にお客さんがいて、皆じっくりと集中して本を読んでいた。
そこだけ異世界のようだったが、居心地は悪くなく、好きなものは好きでいてもいいと保証されているような気持ちだった。
実に様々なジャンルの本がおいてあり、ここでしか見られないものが沢山あった。これは絶対に表の世界では流通しないだろうな、というようなものの数々は、好奇心を刺激した。

夢中で写真集を眺めたり本を読んでいると、あっという間に2時間が経っていた。

友人と、他のお客さんと、空間を共有しながら好きなものをじっくりと楽しむのはとても心地よかった。皆自分の世界に没頭していて、目を輝かせながら本をめくる手が止まらない。
ネットの世界でなくて現実で、それらに興味がある人が店を訪れているなんて、新鮮な気持ちだった。

最後に



人にはなかなか言えない趣味、好きなもの。
多くの人にとっては顔をしかめるようなものでも、理解がなかなか得られないものでも、好きなものは好きでいてもいいのだ。
あの場所を訪れてから、そう思うようになった。
まあ、好きだからと言って、いきなり人にホラーやグロテスクなものの話をしたら不快にさせてしまうので、人を見極める必要があるけれど。


ニッチな趣味、それが好きな自分を拾ってくれる場所や人に巡り会えますように。

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