子供を「小さい人」と呼ぶ

子供、というとどのようなイメージを思い浮かべるだろうか。
小さい、かわいい、無邪気、好奇心旺盛、わがまま、うるさい…
色々あるが、筆者は「小さい人」という表現を推していきたい。

初めにこの「小さい人」という表現を耳にしたのは両親の言葉によるものだった。従兄弟と行動を共にしていた時に、まだ5歳にも満たない一番下の末っ子のことをよく「小さい人」と呼んでいた。勿論きちんと名前も呼ぶけど、何かいたずらをしたとき、服を汚したとき等に「うちの小さい人が~しちゃってさあ」とその場面を他の人に話すのだ。
そのころ筆者は7,8歳くらいで、小さい人という表現に大人がウケている理由がわからなかった。だがずっと耳に残っていた。


保育園でのアルバイト

さて、筆者も年を重ねて見た目だけは大人になったころに、保育園でアルバイトをする機会があった。

その頃は子供に苦手意識を持っていたので、自ら接していきたいとは思っていなかった。雑巾で床や階段を掃除したり、布団を出したり、掲示物を作ったり、食事後の片づけをしたり…そのような雑務を行っていた。
ある日、二歳児のクラスで食事をとることとなり、2歳児三人と一つのテーブルで食事を囲んだ。すぐ隣のテーブルで、1歳児が牛乳をこぼしているのを横目に、この子供たちはどのような感じなのだろうか…と様子をうかがっていた。
すると、2歳児3人により、「今何を食べているか当てるゲーム」が始まった。一人が口をもごもごさせながら、「今何を食べているでしょーか」と質問し、残りの二人が今日の献立を見ながら答えるというものだった。

この光景を見て、衝撃を受けた。2歳で、複数人でも言語によるコミュニケーションをとれるのか!と思った。それまでイメージしていた2歳児は、食事を食べないとか、いうことを聞かないとか、うるさいというネガティブなものだった。個人差はあるだろうが、2歳児なのによくできているなぁ…と思った。

その後も、4,5歳児のクラスで清掃を担当していた時に、子供同士で何かトラブルが起こった後にどうにかして本人たちで解決しようとしているのも見た。そこに先生が加わり、どうしてこうしたのか、どのようにすればよかったか?を整理している姿に保育園の先生ってスゲー!と感じた。
やり方や言い方が不適切であっただけで、子供たちだけで解決しようとしていた方向性は悪くはないものだった。


小さいけれど、人なのだ

2歳児なのに、複数人で会話できるんだとか、4,5歳児でここまで社会性が身につくのか!と驚き、そのことをしばらく考えてふと気が付いた。
それは、「子供なのに」ここまでできるんだ、という感想に隠れている、見下し感だ。「子供=未熟、できないことが多い」「子供はうるさいし、言うことを聞かないから、苦手だ。」という、「子供はこうである、こういうものである」という凝り固まったイメージが、己の視界を狭めていたと気が付いた。

メディアを見れば、発明やプログラミングの小学生部門では、これを小学生が作ったのか!と驚くほどクオリティの高い作品を発表していることがある。天才子役と話題になったりとか、車とか電車とか、興味のあるものに対しやけに詳しい子供がいたり。
それを、子供なのに、よくここまでできるね!?よく知っているね!という上から目線感で評価してしまっていたような気がする。

世の中には、いつまでも未熟で幼い大人がいたり、大人のような子供がいる。「大人」とか「子供」とか一括りにしてしまっているが、この世界には様々な人がいる。

「小さい人」という呼び方について戻る。
保育園での体験をしてから、この「小さい人」という表現が妙にしっくりくる感じがあった。小さいだけで人なのだ。生まれてから日が浅いだけの人なのだ。生まれてから獲得したあらゆる手段を用いて、集団生活の中で生きている。その点において大人も子供も関係なく、等しく人である。
「小さい」けれどちゃんと「人」である。
子供であるからと言って皆同じ考えを持っているわけではないし、「うるさい、いうことを聞かない」に皆当てはまるわけではない。子供も子供なりに、社会生活を送るうえでのルールを学び、試行錯誤して、この世界を生き抜いている。
子供に対し、なぜこのような行動をするのだろう、こんなことしたらダメってわかってるよね?と大人に理解ができなくても、その「小さい人」にとっては筋が通っていて、考えた結果の行動であったりする。その行動にはきちんと理由があり、適切な方法を知らなかった、うまく言語化して伝えることができなかった、という場合がほとんどだと思う。
子供だからわからないよね、という言葉があるが、その時は本当にわからなくても、大人になるにつれて理解することもある。将来大きくなった時に当時のことを思い出して意味が分かり、傷つくことだってあるのだ。
子供だからといって下に見てはならない。


まとめ

「小さい人」という表現は、子供という概念で見るのではなく、一人の人間と認めているようなニュアンスを感じるのでこの言い方が好きである。
筆者は、子供は好きか?と尋ねられても、どちらでもない。その人による。子供だから好きになるわけではない。人として好きかどうかは、その個人によって違うので関わってみないとわからない。
子供に対する先入観に囚われそうになった時に、「小さい人」という言葉を思い出したい。



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