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国1番の善人

 むかしむかし。ある国に大金持ちの男がおったそうな。その男のあたまのなかにあるのはお金のことばかり。いかに効率よく自分だけが金を儲けるか。そのことばかり考えておった。
 ある時。男が部下を引き連れて街をどかどかと歩いていると、男の前をボロボロの服を着て、あちこちにひびの入った木で出来た傘をかぶった老人がよろよろと歩いて来た。杖を左右にふっており目もあまり見えない様子である。

男はさわるのもいやだが、その老人を払いのけようとすると手下のひとりが「これはきっと神さまの使いです。私はこんな神さまの描いてあるかけじくを見ました。」と指をさして言うので
「なるほど。そういうこともあるのか。」と近づきたくもないのだが、その手下のひとりにもうしつけ、近くのいちばん安い食堂につれてやり腹いっぱいごはんを食べさせてやった。

すると老人はよろよろと歩き急に男の左手をさわり「左手は札束を産め。」と一言だけ言うと急に男の左手が金ぴかに光出した。
皆があっけにとられているといつのまにか老人はすでに消えてしまっていた。

不思議なこともあるものだと、その大金持ちの男が左手で木に寄りかかると、その木は音もなくたくさんの札束に変わってしまった。
はじめはびっくりしていたが「なるほど。そういうことか。」とニヤリと笑い、手下どもに「お前たち今から石ころや鉄くずをたくさん持ってこい。」と、命令した。

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