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詩「母さんの赤いボタン」


太陽の光に照らされて
キラキラ光っているものなぁに?
やけに眩しくて
わたしが勝手に美化しちゃってるだけ

母さんのお気に入りの洋服に付いている
赤いボタン

小さい手だから 満足に
握ることも
欲しいって言うことも出来なかった
(あの洋服が、一番、母さんに似合っていたから)

手が届く距離にあるのに
触れられるのに
決して手に入れられない何かが
強烈に人の心の中に
残ってしまうのは
何故なんだろう?
(わたしは、本当は、何を掴もうとしていたのだろうか?)

母さんは、いつの間にか
あの洋服を捨てていた
わたしは、もう二度と
赤いボタンを見る事も
触れる事も
手に入れる事も出来なくなった
(私の手元に残ったのは、幼き日々の宝物の様な映像の思い出だけ)

母さんの赤いボタンは
わたしの記憶の湖の底に沈んで行く…

わたしは、いつも
強烈に
鮮明な幻ばかりを追い掛けている

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