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詩「橙色の世界」


橙色の夕陽を見ると
胸が酸っぱくなる

大好きな子と意見が食い違い
大喧嘩した日
通りすがりの知らないお婆さんと
お友達になった日
習い事に行きたくなくて
ゆっくり帰った日
母の好きな薔薇を渡した瞬間
花びらが散った日
ジャンケンに負けて
友達のランドセルを担いだ日

あの日の全てが
一生懸命で
毎日が
いっぱいいっぱいで
どんな事にも
真剣だった

家に帰ったら
ただいまの声一つで
私の小さな信号を察してくれた
母の肩が小さく丸くなっていた
いつの間にか
私の方が父を支えていた
廊下では
あの日の私が
せわしなく通り過ぎてこちらを見る

もう
いいかい?

いいえ
まだまだ私は子供だよ

もう私の部屋ではない部屋に
あの橙色の光が
入り込んでは
部屋の片隅に
暗くて深い
影を落としていた

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