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詩「私のタブレット」



黒いカーテンを引いて
繰り返される
真昼間の遊戯

「スマホが良い。タブレットじゃなきゃ嫌?」
貴方は
頑なに首を縦には振らない
器用に
私のお腹の下辺りから
タブレットを挿入する
電源を入れたら
突如、私のお腹の中に液晶画面が現れた

暗い部屋に
微かな光が広がる
現代の光は目がやられそうになる
頭がクラクラする
確実に脳が閉鎖されてしまった
近代化にはついていけない

貴方の細く長い指で
私のタブレットのページを
手慣れた様子で
スライドさせていく
そうするのが
さも当然かのように…
貴方がスライドする毎に
くるくるとページは、めくられていく
微かに
くすぐったい
首の辺りが自然と強張る
こんな時代が来る事を
どれだけの人が予想出来たのだろうか?

貴方は夢中になって
私の過去の映像を漁って行く
触れられたくない傷口を
軽いタッチで貴方は拡大して行く
見ないで
それを
私は
貴方のコレクションでも何でもないわ
それでも
貴方は止めてはくれない
映像にノイズが混ざる
それは私の声にならない悲痛な叫びだった

突如
私の見られたくない映像に
規制がかかり
真っ黒な画面の中で
貴方は
他人ひとの人生の古傷を
一つの作品を鑑賞したかの様に
口を横に開けて微笑っていた

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