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山に籠り、ひたすら作品について考えてひたすら作品について話す「ドリル合宿」

作品と日常の近さ

ドリルは展覧会ではない。そのため、ドリルの中での作品は展覧会のようには扱われない。もっともっと近い。制作という日常の距離に作品がある。だからこそ話せることがあるし、だからこそ聞くことがある。



2024年1月12日から14日に群馬県にある中之条町で「ドリル合宿」を行った。会場の沢渡館は、近年まで営業していた温泉宿だった場所。現在は休業中であるがオーナーのご厚意にて、昨年開催された中之条ビエンナーレの際には展覧会場として使用されるなどして活用されている場所だ。

中之条の沢渡エリアは小規模な温泉街で、いろいろな場所を見てまわるような観光地ではなくて、日頃の疲れを癒すために静かに過ごすのに最適だ。温かい温泉と人懐っこい猫たちが優しく迎えてくれる場所。

会場の沢渡館



ドリルは2018年にスタートしたプロジェクトで、制作段階やアイデア段階の作品についてそれがどういったものか深めていく為のイベントで「中間発表+対話」を行う。

非公開で行う参加メンバーだけでプレゼンテーションとディスカッションを行なった後に、お客さんに来てもってディスカッションする。





今回の合宿には、千々和佑樹さんとかれーらいすさんの2名が参加してくれた。


千々和佑樹さんは、「14」にこだわりを持ったペインターで「存在しない14号のキャンバス」を自ら制作して制作している。今回は「14」以外の作品をどのように扱う深める為に参加した。


かれーらいすさんは、コラージュ作品やコラージュ音源を制作する作家で今回は近々リリース予定の音源のプロモーションの仕方やレコードをプレスするかなどの課題解決する為に参加した。



千々和さんの「奈良美智に似ている」と言われてしまい、止まったままになっている「うつろ」シリーズ。自分にとってつくる必然性はあるが美術界では既に奈良さんがしている仕事。奈良さんとの差異を説明することは出来るがそれを展覧会で発表するのにまだしっくり来ない。今の「14」を軸にした制作と別の欲望から来る「うつろ」をどのように扱うのか。

千々和さんの作品



かれーらいすさんのリリース予定の音源は、面白いという理由だけで森進一のジャケットをオマージュしたものになっている。ちなみに音源の内容的には森進一要素は皆無。森進一要素が皆無の音源なのに森進一ファンに届くように「完全に間違ったプロモーション」を画策していて良かった。
かれーさんの良さは「完全に間違っている」だから。

かれーらいすさんの作品



ドリルでは、ひたすら作品や制作について話続けることになるし、ひたすら他の人の話を聞き続けることになるので終わった時にクタクタになってしまう。会場の場所場所で作家とお客さんが話していてカオスになる。そこでは、作品についての話や「関係ないかもしれない話」が話されている。


沢渡館の隣にある中屋饅頭店のご主人も来てくれた。中屋饅頭店のきび大福は人気ですぐに売り切れてしまうそうだ。

アート作品とお饅頭だと、全然違うもののように思える。だけどこだわりを持って作っていることや「完成」とその判断に関してはどちらにも共通する。ちょうど完成についての話題になったタイミングでご主人に話を振ってみた。少し戸惑いながら話してくれたお饅頭の完成の話。

完成は幅的で条件を満たしたものを完成として扱う、こだわり過ぎると納期を過ぎるので自分の納得のいく範囲で妥協する話。こだわりたいところを商品ごとに分けてこだわる話。

何かを「つくる」という共通性とそれぞれ違う「こだわり」。その違いに触れることで、自分のこれまでの「つくる」から別の「つくる」へ変化や今の「つくる」の自分にとっての必然性を知る。これはドリルにとって重要な要素であり、ドリルの価値だ。


今回はじめて合宿という形式でドリルをやった。寝泊まりしながら作っているものについて、じっくり考えながら言葉にしていくのに集中出来た。寝泊まりしていることもあり、作品を見せる場というよりも作品を作っている場に近い文脈の空間になった。中之条アーティストインレジデンスの協力もあって地元の人々や移住してきたアーティストたちも見に来てくれつながりが持てたのも良かった。



中之条アーティスト・イン・レジデンス

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