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「代理を立てる」について

2021年2月に大島にあるスペース「プライベイト」にて開催された「明滅/通電」展 後期に出展した「代理を立てる」について解説する。


【作品の構成】

近年盛んに行われている「委任されたパフォーマンス」の在り方やその性質を考える為に別のバージョンを実践して検討する試みをしており、その1つのバージョンとして展覧会に呼ばれた作家が代理を立て、別の作家に展示してもらう「代理を立てる」を実行した。

ちなみに2019年に同じプライベイトで開催された「孤独と連帯」展では「アーティストの権限を一部委託する」を実行している。

https://note.com/cut_shimashita/n/n59b337726882


◾️全体の流れ

①展覧会の参加のオファーをカワムラが受ける。

②カワムラが展覧会の参加に代理を立てる。代理の条件は外部への展示告知ではカワムラの展覧会参加が告知されるが、展覧会会場では代理の作家がカワムラの代理として展示に参加すること。

③代理として展覧会に作家として参加するのは、以前からカワムラのプロジェクトに参加している観葉植物の観葉植物。展覧会に参加し、パフォーマンスを行う。


④パフォーマンスを行うにあたり、空間ディレクションを観葉植物の代理でカワムラが行い設営した。


構造的に2つの性質の違う代理が組み込まれていて、

1つ目は告知された作家の代理で別の作家が展示する代理。

2つ目は作家(観葉植物)の代理で空間ディレクションを他者(カワムラ)が行う代理。

の2つの代理がある。



【空間ディレクションのコンセプト】

観葉植物がパフォーマンスを行うにあたり、そのパフォーマンスを最大限発揮できるような快適な空間を設計する。

観葉植物のパフォーマンスは、人間を基準にした時「遅く」ものである。その為、人間の標準的な鑑賞時間では止まっているようにしか見えない。その問題を解決する為に、通常より観葉植物の動きが早くなるように環境を整える。

【具体的な設備】

植物育成用ライトの設置。
クラシックの音源を聴かせて発育を促す。
天糸での補助により負担の軽減。

【ディレクションの構造】

仮説を立ていたポストポストアートモデルを使って構築する。

ポストモダンアートモデルは、美術史のデータベースから参照しながら作品を構築するもので、今回実行したポストポストモダンアートモデルは、美術史以外の別のデータベースを参照しながら作品を構築するモデル。

今回は、観葉植物に関するデータベースを参照しながら空間を構成し、観葉植物の育成環境を軸にしつつ、同時にコンテンポラリーアート的なルックにも見えるように空間を制作した。昨今観葉植物がコンテンポラリーアートのルックを構成する要素になっており、特に意味なく展示空間に置かれている。ホワイトキューブと同じようにコンテンポラリーアート「らしく」機能させる為に展示空間に置かれる観葉植物。観葉植物のパフォーマンス性を提示することによって、その存在の在り方を回復させる。

キッチンエリアに設置した観葉植物の写真は、パフォーマンスアートを記録する写真のオマージュで観葉植物の身体性を記録した物。

【「明滅/通電」展について】

今回の展覧会のオファーを受けた際、展示作品に関しては出したい作品を出していいとのことだった。そこでは私は、通常の展示なら難色を示されるプランだか菊村さんならそれを許容し、むしろ乗ってくれそうなプランとして今回のプランを提出し、菊村さんの方からもそのプランで問題ないと回答をもらった。こうした信頼関係をベースにした「許容」がこの展覧会を特徴付ける「作品同士が共存する空間」を構築する要因となっていた。

「明滅/通電」展は、通常の展覧会以上に他の作家の作品からの干渉、民家であるプライベイトの空間からの干渉を引き受け合いながら共存するような展示空間になっていた。

具体的には、観葉植物がパフォーマンスを行なっていたバスルームにユ、六萌さんの作品が置かれていて空間設計の1部に取り込まれる形となっていた。また慈さんのパフォーマンスの際に観葉植物がパフォーマンスをするバスルームが使われ、慈さんのパフォーマンスの構成要素に取り込まれる形となった。松田くんの展示空間のグリーンバックと植物育成用ライトのピンク色がちょうど補色関係になっていた。

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