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夢を追う子どもたちへ、5つの贈り物~クリス・コルファー

全米の中高生の「芸術・文芸賞授賞式」における来賓スピーチです。
この賞には80年以上の歴史があり、ロバート・レッドフォード(俳優)やアンディ・ウォーホル(画家)など、多くの天才を世に送り出してきました。
ここでは、クリスさんの略歴をまじえながら、全文をご紹介していきたいと思います。

(クリスさんの動画は、25分くらいから、始まります。)


はじめに

皆さん、こんにちは。クリス・コルファーです。ロサンゼルスからお送りしています。
どうか、皆さんが、この大変な時期を幸せですこやかに過ごせますように。
カーネギーホールでお会いできないのが本当に本当に残念ですが、将来、いつかまたお会いできることを願っています。

はじめに、皆さんのご受賞とご成功を、お祝い申し上げます。
皆さんのような賢くて才能ある新しい世代の方々が、昔の自分と同じように芸術を愛されている姿を見ると、とても胸が熱くなります。

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(幼少から始まったいじめや失読症の疑い、妹さんの重病、経済的な不安など、さまざまな悩みを抱えた少年時代。)

ぼくは市民劇場で演劇をやりながら育ち、また、物心ついたころから小説を書いてきました。
こうしたはけ口がなかったとしたら、自分はどうやって生きてこられたかわかりません。

ロジャー・ロックというディナー劇場がカリフォルニア州フレズノ市にあるのですが、自分にとっては単なる市民劇場とはとても呼べない素晴らしいところで、劇場ファンの聖地でもありました。 

また、小説を書くのは、つらくなったらいつでも逃げ込める世界が、丸ごと頭の中にあるようなものでした。
ぼくは、幸運にも、このように熱中していたことを仕事につなげることができました。

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(7歳頃から演劇を始め、同時に『ザ・ランド・オブ・ストーリーズ』も書き始める。)

皆さんが芸術関係の仕事をめざしていても、そうでなくても、「芸術から学んだことはいつか、すべてが、役に立つ」ということを、ぼくが約束します。
というのも、たとえ小さくても創造力というものは、ずっと失われないからです。

(2009年、19歳から人気ドラマ「glee」にメインキャストとして出演。ゲイの少年役を演じ、私生活でもゲイであることを公表した。)

皆さんの年齢から10年ちょっと経(た)ちましたが、それが、どんなに心がおどる、そして、どんなにこわくてたまらない時間であったか、忘れることができません。

皆さんが、人生の次のステップをしっかりと計画されていたとしても、あるいは、まだ模索(もさく)されている最中でも、この時間を使ってぼくにできる精一杯のことは、皆さんの歳のころに自分が教えてもらいたかったアドバイスを、少々お伝えすることだと考えました。

さあ、それではまいりましょう。


その1 他人が決めた限界を受け入れない

もしだれかが「君には、できない」とか「実力が足りない」と言ってきたとしても、それは、事実を述べているわけではありません。
単に「 (成功して)ぼくらが間違っていると証明してくれ」と言っているにすぎないのです。

自分自身に制限や限界を与えるような人たちは、周りにまで制限や限界を広めたがるものです。これは、とても伝染しやすいので、他人が決めた限界を絶対に受け入れないようにして下さい。

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(ゴールデン・グローブ最優秀助演男優賞を受賞。いじめられている子どもたちに呼びかけたスピーチが話題になった。)


その2 他人と比べない

自分の道を他人と比べないことです。成功とは、必死の努力と幸運とが入り混じったものです。

ぼくらはだれもが、有利な面と不利な面とをあわせ持って生まれてきています。だから、あるレベルに達したりゴールに着くのがほんの少し遅かったとしても、自分を責めたり、才能がないとか、自分には資格がないなどと思わないでください。

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(米タイム紙によりオバマ当時大統領らとともに、「 世界に最も影響力のある100人」に選ばれる。)


その3 視野を広く

芸術家として、ぼくらは自然と、同じ専門の人たちに気に入られたいと思いがちです。作家が作家に気に入られたいと思ったり、俳優が他の俳優から認められたいと思ったり…などということです。

しかし、ただ専門家に気に入られるだけ、という罠(わな)にはまらないで下さい。
世界は広いので、だれもが自分を評価してくれる観客や読者を持つことができるし、それは、あなたの気持ち次第で、多くも少なくもなります。
なので、気に入ってくれないかもしれない人たちを何とかするのに必死になって、時間や労力を全てつぎ込まないでください。

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(22歳で『ザ・ランド・オブ・ストーリーズ』を発刊、ニューヨークタイムズのベストセラー1位に。)


その4 つらいときは助けを求めて!

クリエイティブ(創造的)な人間は、普通の人よりも感じやすい心を持っているものです。
それが、そもそも、ぼくらが芸術というものに心惹(ひ)かれる理由の一つでもあるのです。

創造性とは、ご存知のとおり「振り子」のようなものであり、想像力とインスピレーションの高みへと振れて、僕らを引き上げてくれる一方で、気を付けないと、別方向に揺れてしまうこともあります。
時々そうなるのは問題ないのですが、そこでじっと立ち止まらないようにして下さい。

もしも、落ち込んで、憂うつで、孤独に感じる時期からぬけ出せないようなら、それはあなたがクリエイティブな人である証拠でもあるし、決して自分は一人ではないことを、どうか知っておいて下さい。
そして、どうか、どうか、恥だと思わないで助けを求めて下さい。
時には、一番勇敢な行動が「助けを求めること」だという場合もあるからです。


その5 胸の奥の「火花」を手離さないで

あきらめたくなるときもあるかもしれないし、世の中を見回して、どこにどうやって居場所を見つけたらいいのか、わからないときもあるかもしれません。
また、人の半分の給料で、倍働かないといけないときだってあるかもしれません。

でも、どうか、このことを知っておいて下さい。「『今』が忘れてしまうことも、『 歴史』は忘れない」のだと。
あなたが越えたごく小さな坂のひとつひとつだって、他のだれかが奮起して山を登るきっかけになるかもしれないのです。

(2019年、自身15作目となる" A Tale Of Magic " を発刊。翌年には続編を出し、2021年には、さらに2作品の出版が決定している。)

スティーブン・スピルバーグやメリル・ストリープ、トニ・モリスン、リン・マニュエル・ミランダ(作曲家)、エルトン・ジョン、そしてビル・ゲイツのような人々は、一夜で現在のようになったわけではありません。
今日ぼくらが知るような姿になるまでに、彼らの前にはそれぞれ長い道のりがはだかり、それを乗り越えなければならなかったのです。

弱々しい決意やとぼしい想像力では、将来、彼らの列に加われるわけがありません。
今の話を聞いて、胸のどこかに小さな火花があるのを感じているならば、何とかそれを、できるだけ長く、手ばなさずにいてください。
なぜなら、その火花は、想像しているよりもはるか彼方まで、あなたを導いてくれるでしょうから。

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さいごに

今日、皆さんがこの受賞という栄誉を与えられたということは、正しい軌道を進んでいる証拠です。
ということで、あらためて、おめでとうございます。皆さんをとても誇りに思います。
将来、皆さんが成しとげる偉業を見るのが、待ちきれません。
私たちは、あなたを必要としているのです。

ー クリス・コルファー 2020.6.4 2020 Scholastic Art & Writing Award Winners 授賞式スピーチ


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