【続いてる写経 770日め】〜こんな名作があったのか・・
角川書店が「今こそ戦争について考えよう」と、電子書籍ストアで戦争関連の名著を無料公開しておりました。
以前書いた『戦争は女の顔をしていない』のコミック版も含め、読んでみたい本はたくさんあったのですが、限られた時間の中でとりあえず読了できたのは『石の花』、坂口尚さんの作品です。
恥ずかしながら、私は初めてこの作家さんもタイトルも知りました。
第二次世界大戦時、ナチス・ドイツに侵攻されたユーゴスラビアが舞台。
この当時のユーゴスラビアは、今もそうですが民族同志の紛争が絶えないエリアで、セルビア、モンテネグロ、マケドニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、クロアチア、スロヴェニアの各共和国に分かれていました。
『石の花』の主人公・クリオはスロヴェニア人で、ドイツの攻撃で同級生を殺され、住んでいた村を失い、仕方なくパルチザンに合流して生きていくことになるのです。
クリオの同級生の女の子フィーは、砲撃は免れたものの、強制収容所に送られてしまいます。
旧ユーゴの人々も、強制収容所に送られていた事実は初めて知りました。
ストーリーは、実際の出来事や歴史上の人物も絡ませ、進んでいくのですが
、何せ背景が複雑で、なかなか理解が進まないままでした。
民族同士の名前もだんだんとごっちゃになったり・・難しい…
主要人物たちに、次々と過酷な試練に襲われるので、読むのが辛い話でした。
さらに、登場人物の子どもたちを通じて、戦争たるものが何か、哲学的な問いかけがなされ、読み手に常に問いかけてくるのです。
ワタシの印象に残ったセリフは、
「人は幸せになるために戦争をする」
確かに、戦争を始める理由は、もっと領土を増やして、豊かになりたいから。
確かに「幸せ」を追求した結果に起こすものなのでしょう。
ただ、そこには自国の「幸せ」しか存在しない。
相手側の「幸せ」はそこにはありません。
みんなの、全体の「幸せ」ではないのです。。
「幸せ」を蹂躙されそうな時は、だから戦う。
これが大義名分です。
これは果たして正しいことなのか・・
問いかけに対する答えへの回答は自分は持ち合わせていませんでした。
他にも重要な命題はたくさんあったのですが、とりあえず拾えたのは、このシンプルながらも深いセリフ。
日々の報道を見るにつけ、こんな悲惨な歴史があるのにもかかわらず、目を背けて同じ過ちが繰り返される・・
人類は『暴力の世界史』にあるように、昔とは比べ物にならないくらい安全な社会になってきたのかもしれませんが、まだ暴力的な解決を捨てるには至ってないのです。。
すっかり暗くなってしまった、、、。
『石の花』、手日本のマンガの奥深さ、世界観の広さを改めて知った名作でした。
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