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「幸せの続きはもう見られない。」


2021年2月13日(土)
@寝屋川VINTAGE

セネカ解散ライブ 「在るのは今」
ライブレポート

大阪発
3ピースロックバンド
「セネカ」

セネカの解散ライブが開催された。

セネカ結成後の初ライブが
寝屋川VINTAGE。

そして解散ライブの場所も
ここ寝屋川VINTAGE。

敢えてこの場所を選んだのか、
それとも偶然なのか。
それは僕にはわからない。

久しぶりのライブハウスに
気分を躍らせていた自分だったが、
不思議なことにこの事実を
会場へ着いたときに気づいたのだ。

「そうか、あのときもここだったし、
 最初と最後を同じ場所で見られるとは.. 」

何か運命的なものを感じてしまっていた
自分がいた。

この日はメンバー全員、白のシャツで登場。
解散という言葉を聞いてしまうと、
やはりマイナスの気持ちが
先行してしまうが、白という色が
僕らの気持ちを晴らしてくれる。

それを見た自分はマイナスではなく、
清々しい気持ちになっていた。

Ba.南部、Dr.橘の表情は
冷静そのものだった。

それと相反するようにVo.Gt田邊は
少し緊張しているようだ。
だが目や表情を見ていると
戦闘モードに入っているようにも見えた。
「ギアが入ったときの人間の顔だ。。」


入場SEはSuiseiNoboAzのPIKAという曲。
ボーカルの田邊が敬愛するバンドだ。


「積み重ねてきたものー!
 ただ全力で!俺ら出し切って!!
          終わる!!!」


セネカのライブは田邊の力強い言葉で 
幕を開けた。
1曲目はセネカの中でも古株の「劣勢へ」。

セネカ結成後の初陣ライブの1曲目も
「劣勢へ」だった。

前日に再加入したドラマー、橘の
図太いサウンドが攻撃的な印象を与え、
曲全体をブーストさせていた。

冒頭の楽器陣三人のタイミングが
見事に合っていたし、
とても久しぶりにやるような感じには
見えなかった。

「目を逸らして生きても
 分かりはしないだろう。」

行動しないと何も起きない。
自分も変われない。
冒頭の歌詞が何とも印象深い。

劣勢から目標に向かって突き進む姿。
弱い自分に語り、自分と向き合う姿。

弱い自分を戒める。
そんな人たちを鼓舞するような曲だ。

2曲目はミドルテンポの「過日」。

”大事にしていたものってなんだっけ。。”

振り出しに戻ったり、
初心に帰って考え直すことを
僕らに問いかけてくれる。

セネカの曲の中でも聴く人を選ばない、
爽やかな曲だ。


会場をさらに落ち着かせるように
3曲目の「月が消えて」に渡る。

この曲を聴くと「エモい」という言葉が
思い浮かぶ。

サビで入ってくる南部のコーラスが、
曲に美しさを加味させる。

(photo by Shoh

「1本、すごい悩んだときに
 認められたくて、愛されたくて。

 そんなときに1本真っすぐな線が
 あったら、俺はどこも迷わずに
 真っすぐ進めたのかと思って
 書いた曲を。」


4曲目はRAIL。
Vo.Gt.田邊志祐の人生においての葛藤が
描かれた曲だ。


自分は自分だけど、
他人と比較することでしか
今の自分の現在地は分からない。

自分の力のなさを痛感、
誰かに嫉妬。

そんなときに誰かに愛されたい、
認められたい。

そんな欲求が出てくるのではないだろうか?

RAILを歌っているときの田邊の表情、
目からは田邊の今までの歩みが
映し出されていた。

(photo by 貴志美優

田邊のギターソロには哀愁が乗っかっていた。

photo by ユキ)

ライブは中間地点に差し掛かったところで、
5曲目に「何も興味ない」。
会場のボルテージは頂点に達した。

数字が全てではないが、セネカの中で
Youtubeの再生回数が一番多いのは、
「何も興味ない」だ。

「否定するなら、される覚悟と、
 それなりの経験を担保しろ。
 それ以外はきっと無能、
 それ以外はきっと無能。
 あの問題もあの戦争も、
 正直知ったこっちゃないんだろう?
 別にお前に興味ない、
 別にお前に興味ない。」

現代社会で繰り返される誹謗中傷。

指ひとつで人の人生は応援もできるが、
殺すこともできる。

他人には興味ないくせにくだらないことを
繰り返すやつら、社会に田邊は
訴えかけているようだった。

(photo by Shoh

「ほんとに良い夜になってると思います。
 ずっと、きっと覚えてると思います。
 だから夜の歌を。Midnight Salvage。」


美しい旋律と切なさを感じさせる
ハイブリッド曲。
6曲目はMidnight Salvageだ。

この曲はなんと言っても、
サビから駆け上がっていく爆発的な展開が
印象的な曲だ。

この日、田邊、南部、橘の3人のグルーブが
一番感じられたのは
Midnight Salvageだった。

完走部分の田邊のギターからは
気迫が感じられた。

(Photo by 貴志美優

メンバー紹介を挟みライブは後半戦へ。

「そうだよ俺ら、

 まだ若いんだよ、
 なんでもできるよ!!

 大人になったら諦めるって、

 そんなのおもんないよ!


 大人になったら
 夢をみるんもんでしょ、youth。」


7曲目はyouth。

曲の始まり。
田邊のエッジの効いたストロークが
オーディエンスの心をもう一回走らせる。

若いやつは勢い、熱量、諦めが悪い。
これこそが若者の特権であり、価値なんだ。
田邊の若い頃のもがきが上手く
描かれている曲だ。

若者の心に寄り添ってくれる強い曲だと
私は強く思う。

youthが終わると、橘が8ビートを刻む。
それに続き南部のベースが入る。
すると田邊の渾身の叫びが聞こえてきた。

「何度も目を逸らそうとした!

 それでも逸らせなかった。
 あの恋に!
 さえた気持ちがダメだった
 としても、

 俺は間違ったことなんて
 一つもない!
 恋をしたんだ!

 ラヴソング歌います!!」

8曲目はカノン。
田邊が追い続けた女性への情景が
鮮明に描かれた曲だ。

恋愛ソングは暗い曲であったり、
前向きな気持ちで聴けないような
印象があるが、カノンは非常に気持ちよく
聴かせてくれる恋愛ソングだ。

カノンも終わりラスト一曲前に田邊から
寝屋川VINTAGE、スタッフ、メンバー、
配信を見ている人たち、
この日の出演バンドに感謝の言葉が
伝えられた。

ラストを飾るのは田邊自身、
一番大切にしている曲と言っても
過言ではない。最後は「セピア」だ。

天国に逝ってしまった親友のために
作られたこの曲。

人間、いつ死ぬか分からないし、
今、生きていることは全く当たり前ではない。

そんな田邊から感じるのは
使命感そのものだ。

天国に逝ってしまった友達のためにも
頑張らなければ。
生きることに対しての使命感が
感じられる一曲だ。

最後はメンバー全員での一枚。

(photo by 貴志美優

(photo by ユキ

セットリスト
1. 劣勢へ
2. 過日
3. 月が消えて
4. RAIL
5. 何も興味ない
6. Midnight Salvage
7. youth
8. カノン
9. セピア

【special thanks】
ユキさん

貴志美優さん

編集後記

ここからは少し自分が感じたこと、
思っていることを書きたいと。

結成日は2018年9月1日。
解散日が2021年2月13日。


月日でいうと約2年4か月。


数字で見ても活動期間は短かった。

だが内容自体は非常に濃かったように思える。

新曲が出され、ライブをしていく中で
彼らは成長していく姿を僕らにしっかりと
魅せてくれた。

田邊が書く歌詞は少し文学的な
一面があると私は思っている。

日本語の美しさ、”美”を表現しつつ、
人間味の溢れる言葉の羅列が詞に
並べられている。

メロディーの部分で言うと
セネカはROCKという類に、
少しPOPの要素も入っているように思える。

詞とメロディー。

この両輪のバランスが非常に良かった。

これが曲の聴きやすさ、
日常の中でも聴きたいと思わせてくれる
要因なのだと私は思う。

本音を言うと、

「もっと続けてほしかった」

「もったいない」

この2つの感情がどうしても出てくる。

解散ではなく、続けていた時の ”先”。

小さなフェスに出て、
大きなフェスの小さなステージで
演奏する姿を見ることはできたのだろうか?

そんな理想ばかりを描いてしまう。

同時にそれだけ期待されていても
おかしくなかったバンドだったと思う。

しかし彼らの背中に”後悔”という
文字は似合わない。

順風満帆で終わったからだ。

そうだ、幸せの絶頂期なのだ。

幸せを感じながら解散できるバンドは
この世の中にどれだけいるだろう。

ライブはもう見れないが、
曲はなくならないし、
輝き続けてくれる。

”我らセネカは永久に不滅であります。”


長嶋茂雄の名言にかけて終わることにする。


セネカ、ありがとう。


(photo by 貴志美優



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