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中高生探究活動#04 山崎安結さん 〜チャンスを逃さない〜

MONO-COTO INNOVATION参加について

Q.高校3年生でMONO-COTO INNOVATION(以下MCI)への参加は珍しいと思うのですが、受験勉強と両立する大変さはありましたか?
私は海外大学を志望していたので、一般入試の勉強はありませんでした。私のクラスは基本的にAO入試で大学へ行くようなクラスだったので、みんなが入試のための資料作りをしている間に、私は海外大学入試に向けて外部のイベントに参加して、実績を作るみたいな時期でした。

Q.MCIに参加されたのは入試準備の一貫としてですか?
入試のため、というわけではないですね。私が参加したのは2021年大会ですが、MCIは2019年くらいから知っていて興味はありました。コロナウイルスの流行や日々の忙しさもあり、応募できずにいました。高校3年生の時に、たまたまMCIの広告を見つけて「あ、これ気になってやつだ!参加しないと!」と思って応募しました。英語の勉強もしなくてはいけなかったのですが、「これもやります、頑張ります!」と同時並行で進めました。まあまあ大変でしたが、私が興味を持って楽しんで取り組んでいたので、苦ではありませんでしたね。

Q.MCIのどこに興味をもちましたか?
学校で始めた探究活動の成果の発表でき、自分の好きなことを生かせるイベントや大会を探していく中で、MCIを見つけました。MCIは探究活動の成果を発表する場ではありませんが、私のためになると思い参加を決めました。MCIでは私が関心を持っていた環境問題をテーマとして取り扱っていたので、興味関心を深めるきっかけになりそうな感じがしました。日本全国から参加者が集まるので、いろんな人達と関わることで、新しい知見を得られるとも思いました。高校3年生になるまでは参加する機会がなかったという感じです。

Q.学校の探究活動とMCIの違いは何ですか?
学校の探究活動は生徒のやる気次第で取り組み方が変わります。学校では本やネット記事から集めた情報をまとめ、学外の大会で発表した成果を探究活動として報告する子たちもいました。私はどうにかして行動に移す機会が欲しかったので、活動できる場を探していました。MCIは自ら進んで行動しなければならないところが、すごく新鮮でした。MCIのようなすごくやる気のある子たちばかりが集まる環境に行ったら、私はどうなるんだろうというワクワク感もありました。外に出て何かやる経験が欲しかったのだと思います。

学校の探究活動について

Q.学校の探究活動でも自分から積極的に行動されていたのですか?
そうですね。他の子達に比べたら、積極的に動いてたと思います。私はNPOを探して、気になったらすぐにメッセージを送って、インタビューさせてもらいに行きました。

Q.どのような探究活動をされたのですか?
私は3つテーマで探究活動をしていました。はじめは貧困問題を取り組み、NPOだけではなく、関わりのあったいろんな人たちに話を聞きました。例えば、セブ島留学で出会った方やニュージーランドに留学した時に通ってた学校にアンケートをお願いしました。周りの人を巻き込みながら、進んで探究活動をしていましたね。2つ目のテーマである環境問題に取り組んだ際は、世界学生環境サミットに出場しました。結果は準優勝だったのですが、参加者と話すことで、私達の活動の不十分さを振り返るきっかけになった気がします。貧困問題と環境問題はチームで活動していたのですが、3つ目のテーマであるデザインは1人で探究しました。私の学校はNewsPicks株式会社と関わりがあり、私はNewsPicks委員会に所属していました。知り合った社員の方にお願いして一緒にデザインのイベントを開催したり、私の作ったデザインの資料をNPOのカタリバさんに置いてもらったりしていました。思い返せば、いろんな外部の方と関わっていたと思います。

Q.どうやって繋がりを広げたのですか?
NPOは自分で探したり、学校の先生に聞いたりしました。その団体の安全性が確認できたらメールを送って、自分からアクションしていきました。NPOからのメールの返信率は五分五分です。企業の場合、返ってこないこともありました。担当してくれた方の反応から「高校生で探究活動を行なっている」という言葉の強さを感じました。

Q.自分から外に関わりに行ったきっかけはありますか?
私が一番印象に残っているのは、「ネットの情報だけではなく、生の声を聞いたほうがいいよ」という探究授業の先生の言葉です。私はネットで調べて「本当にそうなのかな?」と疑問が湧いたら、直接聞くことにしていました。もやもやして、この情報を使っていいのか悩むのくらいなら、ささっと聞いてちゃんとした情報を論文に取り入れた方がいいと思ったからです。外部に話を聞きに行くことは、みんな嫌がっていました。みんながやらないことにあえて挑戦することで、チームの評価が上がるのではないかとも考えていました。私は外部との関わりが欲しかったこともあり、いろんな先輩方から探究活動でやったことを聞きました。先輩から「30社くらいメール送って10社くらいしか返ってこなかった」という話を聞いてたので、とりあえず送ってみるかという気持ちで取り組みました。私は、返信は半分も来ないだろうと予想を立てていたのですが、親切に対応してくださるところもあり、おすすめのサイトなどをご紹介いだたきました。

Q.外部とのやりとりでよかったと感じたことはありましたか?
私は、現場の声を聞くことをすごく重視しました。私は海外の貧困問題に興味を持っていたのですが、コロナ禍のため現地に行くことができず、一次情報にありつけませんでした。セブ島に留学して、ゴミの山の近くに人が住み、ドラックが蔓延し、子供たちですら自分の名前を言えない現状を目の当たりしてから、ネットの情報は信憑性に欠けると感じていました。ネットに書いてなかった状況に出会い「いやそんなこと聞いてないよ」と思ったからです。あの時の私と同じように、多くの日本人は海外の貧困事情を知らないので、現地の情報に直接アプローチする必要性を感じていました。私はコロナ禍を利用し、現地にいる日本に帰れない人に手伝ってもらおうと考えました。現地で活動している人に代わりに聞いてもらうことで、本当の声を聞く機会が生まれ、どんどん情報が得られるのではないかと思ったからです。この方法に気づいてから、私の代わりに現地で活動してくれる人を探しました。現地で課題意識を持って活動している人は、既に私がやりたいことをやっており、私が調べたいことを知っています。例えば、私達がワークショップをやる前に似たようなワークショップをやった人に聞けば、1回分の手間が省け、経費も無くなります。教えてもらった情報の使用許可を貰えば、現地で試した事例として発表することができます。現地で活動している人から話を聞くことで、私だけが課題意識を持って活動している訳ではないと気がつけたことも良かったです。未来に希望を持てました。

Q.なぜ現地の人に手伝ってもらう方法を思い付いたのでしょうか?
なんででしょう…。当時はチームで活動していたので、中にはとりあえず授業だからやっているという人たちもいました。私はやる気のない姿勢で探究活動に取り組むのは絶対に嫌だったのですが、一人でできることの限界を感じていました。ちょうどNewsPicks委員会の活動で、委員長が誰にも相談せずに負担を抱えている姿を見て、人に頼ることの重要さに気づいた頃でした。私は探究活動も一人でやる必要はないと思い、負担を減らすために現地で活動している人に協力を仰ぐことにしました。

大学進学について

Q.大学進学おめでとうございます!
ありがとうございます。INTO MANCHESTERという学校でUX designを学部で専攻するため、基礎学科へ進学する予定です。

Q.専攻を決めたきっかけは何ですか?
探究活動で取り組んだ環境問題のテーマがきっかけです。私達は環境問題の具体的な解決方法ではなく、みんなが意識的に環境問題に取り組むためにはどのようなプロセスで、何を伝えていくのかというテーマで探究活動をしていました。私達は学校の探究学習選考会で発表したのですが、決勝で落ちてしまいました。私がチームメンバーと反省会をしている時に、審査員の方がたまたま通りかかって「さっきのスライド、すごくよかったんですけど、UXデザインとか知ってますか?」とUXデザインについて教えてくださいました。当時の私はUXデザインという言葉を聞いたこともなかったのですが、話を聞いていくうちに「もしかして私がやりたいことは、これなのではないか」と感じました。私は環境問題を伝える広告を作るためにグラフィックデザインの研究をしようと考えていたのですが、審査員の方の話を聞き、気づけてなかった分野に気付かされました。始まりは偶然でしたが、私はUXデザインを勉強しなければならないと思うようになり、大学で本格的に学ぶことを決めました。

Q.UXデザインのどこに惹かれたのですか?
私は元々心理学、特に人の気持ちや潜在意識を使ったマーケティングがすごく好きで、先生から勧められた本を読んでました。UXデザインを使った広告の話を読んで「うわ、なんか人って操られてるなあ」と感想を持ちました。グラフィックデザインを使えばインパクトのある広告が打ち出せますが、UXデザインの人を動かす仕組みを利用した広告に面白さを感じ、絶対に将来はUXデザインを学ぼうと決めました。現在、UXデザインはWEBやアプリなどのIT分野でしか使われてないのですが、日常に落とし込むこともできます。UXデザイナーは価値があるのにも関わらず、人口が少なく、日常に落とし込もうとしている人はまだいません。例え私がUXデザイナーにならなくとも、UXデザインを専攻したことは、私にとって価値のあるものになるとも思ったからです。

Q.なぜ、海外大学を選択したのですか?
私は興味の幅がとても広く、同時にいろんなことをやりたいタイプなので、英語も、グラフィックデザインも、UXデザインも、心理学もやりたいと思っていました。やりたいことが全部できて、UXデザインを専攻できる学校は、国内にほとんどにありませんでした。私は諦めたくなかったので、一旦グラフィックデザインは独学で、心理学はUXデザインと一緒に勉強することを考えました。英語はどうやって勉強しようかと思った時、海外の大学を視野に入れてみることにしました。海外の大学に目を向けてみると、アメリカ、イギリス、オーストラリアなどにUXデザインを専攻できる大学がありました。私は国にこだわりはなかったので、いくつか比較してコースの特徴からイギリスが適していると考え、志望校を決めました。

Q.入試形式はどんなものだったのですか?
入試形式は国や学校ごとに違うので、一概に同じとは言えません。代わりに高校の成績表、卒業証明書、IELTSやTOEFLなど基準以上の英語能力があることがわかる証明書を大学に提出しました。書類選考を経て、1年間の基礎のコースを修了して大学へ入る条件付き入学が認められました。私は入試のためのエッセイを書いておらず、書類選考だけでした。成績表も5段階評価ではなかったので、私の活動や実績が書類だけで伝わるように、いろんなことに取り組むようにしていました。

Q.小さい時からやりたいことに挑戦されてきたのですか?
小さい頃は覚えていませんが、ニュースを見て社会問題を考えることはしていました。好奇心旺盛だったので、本を読むのも、ゲームをするのも、友達と話すのも、映画を見るのも好きで、今でも結構多趣味です。「あなたの趣味は何?」って聞かれたら、1つに絞れないくらい色々なものが好きだったので、高校で探究活動していく中で、興味ある分野を1つに絞ることができませんでした。私はいろんなことを一気にやりたい性格なんだなと気付きました。

Q.何でもやっていいと言われたらからこそ悩んだのでしょうか?
なんでもいいと言われると、色々なことに興味ありすぎて、何をやればいいかわからなくなってしまいました。私はみんなが1つのテーマを決めて探究しているのが不思議でした。私は文系選択でしたが、医療や農業にも興味あり、1つに絞るのがとても難しかったです。興味があることを1つずつ探究していたら、一生かかってしまうのでまとめてできる方法をずっと探してました。

Q.探究活動をする上で同調圧力を感じたことはありますか?
すごく同調圧力を感じたということはありませんが、習い事は本当にやりたいのか聞かれたこともありますし、断られたこともあります。ただ基本的に興味があることはできていたと思います。特に中高生になってからは、自分の責任でやりたいことをやってきました。短期留学だったので、ほぼ観光でしたが、アメリカやオーストラリアに留学したことも大きいです。留学では1つの視点だけで物事を見る必要性はないことを学びました。当時の私は人間関係にすごく悩んでいたのですが、母に「なんで1つの視点で物事を見るの?友達なんてその場にいる人だけではないし、世界にはもっといろんな人がいるんだよ。海外に行ってみれば?」と言われたんです。母の言葉で、アメリカに行く決意をしました。ディズニーランドも、ユニバーサルスタジオも、有名なビーチにも行けるので楽しそうだなと観光気分で行ったのですが、ホストファミリーをはじめ、いろんな人がいて、わざわざ1つの視点にこだわる必要はないと感じました。中学2年生で出会った塾の先生の言葉も心に残っています。先生が辞める時に「後悔しないように生きてね」と言ってくださり、私は絶対後悔しないように生きようと決めました。

中高生時代の課外活動について

Q.課外活動はどんなことをされていたのですか?
中学生の頃はあまり課外活動へのやる気はなかったのですが、ボランティアに参加するのはすごく好きでした。おそらく私は当時から人と関わるのが好きだったのでしょう。中学生の時、お祭りの手伝いをするボランティアだと勘違いして、お祭りを1から作っていく運営委員会に友達と参加したことがあります。ボランティアを通して、いろんな人と関わることができ、協働することの大切さを学びました。中学からボランティアなどに参加していたので、高校でも積極的に活動しようと思いました。高校は課外活動というか学校内でのイベントが多いコースにいたので、自分で探さなくても活動できました。私たちの学校では、何かに参加するチャンスが訪れることを「モモが流れてきた」と言ってました。モモで表現しているのには理由があって、桃太郎はおばあさんが川で桃を拾わなかったら、桃太郎にはなってないし、鬼退治もできなかったですよね。おばあさんが、川で桃を掴まなかったら桃太郎の物語は始まりません。「モモをキャッチする、つまりきっかけを掴むチャンスがないとダメだよ」と先生に言われて、ハッとしたのを覚えています。モモをスルーするのではなく、大きくても小さくても、モモを取って開いたら、すごい結果が待っているかもしれないと考えるようにしていました。例えば2泊3日のキャンプや放課後のイベントを面倒臭いと思うのではなく、すごい結果が待っているかもしれないと考え参加してみます。自分の目に見えているものだけで判断するのではなく、前向きな気持ちでイベントに参加することが一番大事だと思いました。

Q.学校内の活動で一番印象に残っているものは何ですか?
一番印象に残ってるものは、やはり1年生〜3年生まで所属していたNews Picks委員会です。3年間ずっとNewsPicks社の方と協働して活動していました。

Q.なぜ、NewsPicks委員会の活動が一番印象に残っているのですか?
私たちの意見で会社や社会人が動いてる感覚を味わうことができ、社会を身近に感じられたからです。NewsPicks社の方達は何でも聞き入れてくださって、私たちがやりたいようにさせてくださいました。私にデザイナーを紹介してくださったこともあります。NewsPicks社はすごく自由な会社ですが、自由すぎてもダメで、社員の方はどこまでが社会に影響を与えるのか、線引きを教えてくださいました。私はNewsPicks社の方と意見を交わすことで、想像してたよりも、大人は意外と身近にいることに気が付きました。私達高校生も勉強すれば知識を得ることもでき、意見を反映させられ、社会を動かすきっかけになるとも感じました。ニュースで取り上げられるようなすごい高校生よりも断然いい経験している感覚がありましたね。

Q.具体的にどんな活動していたのですか?
私たちはNewsPicksのアプリを使ってNIE(Newspaper in Education)をしていました。ニュースを読んで見つけた課題について、みんなで話し合う活動です。以前は新聞でやっていたのですが、私達のコースだけ許可をもらいNews Picksを使いました。NewsPicks社の方達は高校生にニュースを読ませたらどうなるのかという点に注目して活動されていました。私達は高校生がニュースに関心を持つようになるには、どうやって組織を動かすのかという点に注目していました。イベントを開催するだけではなく、学校やクラスなどの組織を動かすことで、高校生がニュースを知り、社会への課題意識を持つようになるための活動をしていました。

Q.活動の手応えはありましたか?
3年間やってみて、全員がニュースに関心を持ち、やる気を出して取り組むのはすごく難しいとわかりました。ニュースを見てもらうための最低ラインを上げいくために、7割の人に届くことを目標し、毎回どれくらいの人に刺さったのか振り返りました。私は伝える力に注目し、言葉だけではなく、スライドを使いながら伝える方法を研究しました。生徒視点に立ち、様々なテーマでスライドを作り、スライドを見た生徒の様子を分析して、友達や後輩に興味を持ってもらうためのスライドの作り方を教えていました。スライドの作り方を伝える活動は組織づくりの良い経験になりました。

中高生へのメッセージ

Q.探究学習をする上で大切なことは何ですか?
探究活動は、学校の中で唯一与えられた自由な勉強時間です。勉強だと固く考えなくていいし、ラフにやりたいことだけをやることができます。探究活動では、興味が湧いたことをとことん突き詰められるし、逆にサボることもできます。私は探究活動の時間は学校の生活の中で一番大きいモモだと思っています。モモをキャッチしなかったら流れていくだけで、何も調べられないし、気がついたら一般的な高校生になり、普通に受験勉強して、大学に行き、就職することになってしまいます。探究活動は今やらなくてはいけないことではないですし、先延ばしすることもできますが、それは効率的ではありません。やりたくない小テストの勉強をするくらいなら、探究活動で自分の好きなことだけを必死に調べて、やりたいことをやっている大人と繋がれた方がいいですよね。スポーツに興味があるなら、スポーツのことだけをどんどん研究していけばいいし、デザインに興味あるならデザインだけどんどん研究すればいいです。やってみて楽しくなかったらやめることも、先延ばしにすることもできます。先生に指定された勉強をしなくていいし、学校の自由な時間を使えてラッキーくらいの気持ちで、どんどん挑戦してほしいと思います。

(インタビュー・記事 大門・田中)

インタビューの詳細は、弊社担当までお問い合わせください。
・プログラム:https://mono-coto-program.com/
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・Facebook:https://www.facebook.com/curioschool
・担当: s-daimon@curioschool.com(大門)


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