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デートの思い出

今日、5月1日といえばみなさんが思い浮かべるのはなんの日ですか?
ゴールデンウィークの中日、平日、恋がはじまる日。
いやいや、メーデーですよね。
何年前だったかな…18年前?高校を卒業し、ただ息をしてるだけの腐ってたわたしを連れ出してくれた大切な思い出。
ふと思い出したので書き残しておこうと思います。

メーデー、労働者の祭典なんて呼ばれている行事に参加なされたことはありますか?
わたしは過去に1度だけ、18の時に参加したことがあります。
当時のわたしはうつ病を言い訳に毎日部屋に閉じこもり、家族にすらろくに挨拶もしないクソッタレの甘ったれでした。
家族の愛情を受けて生かされていたのにね、そんなありがたい事実にも目を向けることなく腐りきっていました。
そんな日々の中、5月1日の朝。珍しくぱぱが部屋の扉をノックし声をかけてきました。

『おはよう、メーデーいくぞー』

ぱぱが勤めていた会社は毎年このメーデーの日はお休みでした。
前の年までままは仕事、妹ちゃんとわたしは学校があったのでぱぱは会社の同僚さんたちと参加していたんだと思います。

「…いかない、うざい」

声をかけられ、寝不足からくるイライラをそのままぶつけてしまう。

『パレードは迷子にはつまらないと思うけど終わったら映画でも見るべ。お父さんもな、たまには映画館行きたいから付き合ってくれ、デートしよう』

細かい言葉までは覚えてないので補足的に少しの脚色はしていますが『映画館に行きたいから付き合ってくれ、デートしよう』
この言葉だけは何故か当時も今も記憶に残っているんです。
嬉しかった…んでしょうね。
当時もどうしよもない娘だという自覚はありました。
それでもどうしていいか分からず、ただ甘えさせてくれる家族に八つ当たりする事で自我を保つのでせいいっぱい。
死んでしまいたい欲求を自傷行為と周囲への八つ当たりで解消するようなどうしようもない娘なのに、嫌な顔をせずに当たり前のように受け入れてくれた家族。
当時のわたしに聞いても素直に答えてくれるとは思いませんが嬉しかったんです、きっと。

「……おもしろいの…やってる?」

『お父さんもなんの映画やってるかわかんないから、一緒に新聞見るべや』

「…きがえる」

たぶん、おそらく、なんとなく、こんな感じ。
もっと長くゴネてたような気もするし、この通りな気もする。
そんなこんなでもそもそと着替えてリビングへ。
朝日が照らすリビングに向かうのは何か月ぶりだったかもう覚えていませんが、やけに眩しく見えた気がします。

「今やってる映画なー…」

「やだ、映画館行ってから決める」

仏頂面で食い気味にワガママを零すわたしにビックリした顔のぱぱ。ビックリしたあとくるっと背を向けて支度を始めたけれど、ぱぱの目頭が少しだけ赤くなったのわたし知ってるんだ。

電車に乗るのが怖いわたしを慮って車での移動、会場に向かう車中での会話もそもそも会話があったかも覚えていませんが、どことなくむず痒い気持ちでいたことは覚えています。

会場に辿り着くとパレードの参加企業ごとにプラカードが用意されていて、なぜかぱぱとわたしがそれを持つことに。知らない人だらけの人混みは怖かったけど、一緒にプラカードを持ちながら肩を抱いて支えてくれたぱぱの左手が温かくてそこだけ妙に安心していました。
無事にイベントを終え、会社の方とも挨拶を交わしてから大通公園をブラブラおさんぽ。それから札幌駅へと向かいます。
この日のデートの目的地は駅に併設されている商業施設内の映画館でしたから。

「見たい映画あるか?アニメとかは勘弁だけどなんでも好きなのでいいぞ」

上映案内を見上げてみると、丁度いい時間に気になる作品がありました。

「…ぱ……おとうさん、マスク2みたい」

『マスク2』見たことあります?
わたしこれの1作目、好きなんです。キャメロン・ディアスがどストレートに好きで。
そんな理由でチケット、飲み物とポップコーンを2人分買ってもらい上映スクリーンへ向かい席につきます。

開始からそうそうにぱぱと2人で見るにはアレなシーンに気まずさを覚えるし、キャメロン・ディアス出ないしで終わる頃には一日の疲れも相まって不機嫌全開。
心の中ではこんなはずじゃ無かったのにって思うのに、返す返事も表情もこれ以上無いほどのブス。
それなのにぱぱはずっとだらしないくらい目尻をさげてニコニコしていて、それが申し訳なくて情けなくて悔しくて悲しくて。
泣きたい訳じゃないのに勝手に涙が溢れて、そうなると自分ではどうしようもない焦りも生まれて過呼吸を起こして周りもわたしもザワザワしだす。

そのあとどれくらいの時間が過ぎたんでしょう。
気が付くと人気のない場所でずっとぱぱに抱きしめてもらってました。
どれくらいの時間背中をさすってくれていたんでしょう。
施設の人にお礼や謝罪を述べるぱぱに手を引かれ、ぼーっと着いて歩いて外に出てみるととっぷり日も暮れていました。
帰ろうか、と駐車場までの道すがら。

「…無理矢理連れ出して疲れたべ、ごめんな迷子」

わたしに合わせてゆっくりの歩幅で歩くぱぱの声が少し震えている。
朝、家を出る時はあんなに嬉しくて楽しかったのに。
ぱぱが連れ出してくれたから、知らない人のいる所でも笑っていられたのに。
考えていたらまた涙が零れてきて喉が張り付いて息が苦しい。
なんて伝えたらいいのかが当時のわたしにはわからなくて、ただただ首を横に振るだけ。それしか出来なくて。

「うん…うん……楽しかったか?」

呼吸を乱さないように歯を食いしばって、今度は必死に首を縦に振る。

「迷子と2人でおとうさんも楽しかった」

嬉しかったの。ただ、ただ嬉しかったの。
それをそのまま伝えることができないひねくれたわたしに育てたのはぱぱとままだよ。
クソッタレな甘ったれを甘やかすから。

「……お"なが、ずいだぁ」

精一杯のワガママと、精一杯のありがとう。

「そうだな!おかあさんが晩ご飯作ってくれてるから飯はアレだけど、パフェでも食べるか!」



久し振りの過呼吸で少しだけ昔を思い出し、落ち着くまでの手慰みにと思って書き出しておりますので、読みにくい箇所や誤字などがございましたら申し訳ございません。
今度のお休みは両親を誘ってチョコバナナパフェでも食べに行きたいな。

何かのきっかけのひとつにでもなれたなら嬉しいです\(*ˊᗜˋ*)/♡ヤホー