見出し画像

笑い声が聴こえてくるポートレートを撮るために。もろんのん流のコミュニケーション。|Artist Interview - もろんのん 2/4

What’s “Artist Interview” ?
写真のCURBONが、「写真の階段の登り方」をテーマに、活躍中のアーティストにインタビューする連載企画(※インタビュー全回は記事末尾に一覧があります)。

フォトグラファー・もろんのんさんの撮る人物写真が、見る人を惹きつける理由はなんだろうーー?

色合い、構図、光…… 写真にはいろんな要素がありますが、私がもろんのんさんの写真を見て一番心を動かされるのは、シャッターを切った瞬間の楽しそうな空気がそのまま伝わってくるところ。

たとえ高級な機材を揃えていても、同じようには撮れない。人と人とのあいだに流れる空気をまるごと映し出すための工夫を、もろんのんさんに聞いてみました。

もろんのん Profile
Photographer / Tokyo。書籍に「インスタグラム商品写真の撮り方ガイド」「SNS時代のフォトグラファーガイドブック」「弘中綾香の純度100%」(撮影)など。
・Youtube:もろんのんTV
・Instagram:@moron_non
・Twitter:@moron_non

以下 
インタビュアー: 片渕ゆり
インタビュイー:もろんのんさん

📷 📷 📷

画像1

ーー のんさんが人を撮るときに一番意識していることって、どんなことでしょうか?

そうですね。「相手の一番の魅力・ポイントってどこだろう?」ということに、もっとも気をつけながら撮っています。

たとえばそれは横顔かもしれないし、凛とした表情かもしれないし、もしかしたら笑顔かもしれないですし。

髪型やお洋服など、いわゆる「好きポイント」を探しながらコミュニケーションとってることが多いですね。

ただ、私にとって「いいな」と思う部分が、相手にとっても同じであるかはわかりませんよね。自分の思いだけで撮ることは、フォトグラファーのエゴでもあると思うんです。

だから、その人自身も好きなポイントというのを、コミュニケーションの中で探すようにしています。

画像4

ーー それは、どんなふうに?

撮られることに慣れている方でしたら、「あなたが今までとられた写真の中で好きな写真ってどれですか?」「好きなフォトグラファーさんは誰ですか?」というようなことを聞きます。

その中で、たとえば

「澄ました顔のほうが好きなのかな」
「口を開けて笑うのは好きじゃないのかな」
「なるほど、普段この子はこういう写真をSNSに載せているけど、本当はこういう写真が好きなんだ」

というようなことを考えています。

やっぱり、「かわいく撮れている」って喜んでもらえる写真を撮ってあげたい気持ちが強いんですよね。フォトグラファーのエゴにならないようには、できるだけ気をつけています。

画像2


ーー それって、実際にやってみると簡単じゃないですよね。自分が「いいな」と思う瞬間と、相手が好きな瞬間が同じだとは限らないから、どうやってすり合わせたらいいんだろう?と思っていました。まさに目から鱗!という思いです。被写体さんとの関係づくりが、作品の土台にあるんですね。
 
そうですね。あと、私、知らない人を撮るのがすごく苦手で(笑)。

「好きな人」……と言うと、ちょっと語弊があるかもしれないですけど、友達や、交流のある人を撮るのが好きなんです。

だから、目の前に突然知らないモデルさんを連れてこられて「さあ、撮ってください」って言われても、「いや、大丈夫です……!」って思っちゃう(笑)。

ーー なるほど!

とはいえ、お仕事ではもちろん初対面の方をお撮りするときもあります。そういう場合は、その人を好きになるために、大きく2つ、工夫をしています。

1つ目は撮影前に、15分くらいお茶の時間をとるようにしています。相手の緊張をほぐす、アイスブレイクの時間です。

2つ目は、撮るときの工夫ですね。撮られ慣れていない方だと、「カメラ目線ができない」「どうポージングしたら良いわからない」とおっしゃることが多いんです。

そういうときは、「カメラは見なくて大丈夫ですよ」「撮っていることは気にしないでください」とお伝えして、安心してもらいます。それで、普通におしゃべりしながらパシャパシャ撮るようにしていますね。

ーー 以前プライベートで一緒に写真を撮りにいったときに、私自身がのんさんに撮っていただいたことがあるんですよね。のんさんに撮られたときは、「どんなポーズしたらいいんだろう?」っていう気まずさがなくて。今日のお話を聞いて、その魔法の一端を教えていただいた気がします。

画像3

このやり方に関しては私のスタイルなので、きっと正解はないんですよね。あまり声をかけないフォトグラファーもいれば、おもしろいことをたくさん言って笑わせるフォトグラファーもいますし。

ーー なるほど。個人的には、「今から面白いこと言って笑わせるぞ!」みたいな気迫で撮られるよりものんさん流の方法が楽で好きです(笑)。

そして「撮られる」というテーマの締めとしてお聞きしたいのですが、のんさんご自身も、被写体として撮られる側にまわる機会が多いですよね。「撮る側」「撮られる側」の両方を経験したからこそ気づいたことがあったら、聞いてみたいです。

そうですね。なんだろうなあ。自分が撮られて「苦手だな」と思ったアングルは撮らないようにしたり、小顔効果を狙える角度を考えながら撮ったり、そういうふうに工夫しているかもしれないです。

あと、「右と左どっちの顔が好きとかありますか?」って、よく質問をします。だいたいの人が自分の好きな方ってあると思うんですよね。一般的には、左側の顔の方が好きな人が多いらしいんです。

ーー えぇ!おもしろいですね。今度から私もいろんな人に聞いてみようかな。


編集後記

もろんのんさんのお話を聞いていて、シャッターを切る時間だけが「写真撮影」ではないんだな、と思うようになりました。

お茶して、おしゃべりして、ちょっとずつ相手のことを知って、距離が近づく。のんさんの写真に写っている笑顔は、その時間がぎゅっと凝縮されたものなのかもしれません。

Interviewer / Writer : 片渕ゆり(@yuriponzuu
大学卒業後、コピーライターとして働いたのち、どうしても長い旅がしたいという思いから退職。2019年9月から旅暮らしをはじめ、TwitterやnoteなどのSNSで旅にまつわる文章や写真を発信している。
Editor :伊佐知美(@tomomi_isa
「旅と写真と文章と」をこよなく愛す編集者、フォトグラファー。日本一周、世界二周、4年間の旅×仕事の日々を経て、2020年夏より日本で一番人口の少ない沖縄県読谷村にて、海と空とさとうきびに囲まれた暮らしを開始。

Artist Interview - もろんのん Index


この記事が参加している募集

#最近の学び

181,393件

サポート、とても嬉しいです。写真好きな方が表現者・クリエイターとしてもっと楽しめる世界をつくるために、使わせていただきます。