見出し画像

「私の写真」にたどりつくまで、Mume Takahashi / 高橋夢萌が1年間にした5つのこと|Artist Interview - 2/5

What's "Artist Interview" ?
写真のCURBONが、「写真の階段の登り方」をテーマに、活躍中のアーティストにインタビューする連載企画。2020年9月現在は、Mume Takahashi / 高橋夢萌(以下、Mume)さんのインタビューを公開中です

画像1

Photo by Ryo Ogawa / 小川遼

***

--- この連載では、「写真の階段の登り方」、つまり「写真をはじめてから、どうやって上達していったのか」の過程を紐解けたらと思っています。Mumeさんが、写真をはじめた頃に撮った1枚と、最近撮った1枚、両方を見せていただくことはできますか?

昔の写真を振り返るというのは、「恥ずかしい」というか……「おもしろい」という気持ちのほうが勝りますね(笑)。

初期の写真は残念ながら残っていないのですが、高校生のときに、コンテストに出すために撮った写真の一部があります。

画像14

Mumeさんの高校時代の作品

……やっぱり恥ずかしいですね(笑)。

--- ユーモアがあって素敵です……! そして、こちらが、最近撮られた作品ですね。

画像2

画像3

Photo by Mume

--- 先程の写真と、作風がまったく違って驚きました。正解はないと思うのですが、もし、当時の写真から、現在の写真にたどりつくまでに変えてきたこと、歩んできた道のり、努力されてきたこと等があるとしたら、その内容を伺いたいです。

そうですね……。高校生の頃は、写真を「意識して撮る」ということが今ほどなくて。変わり始めたのは、専門学生になってから。具体的には、2019年春から2020年初冬にかけてのことだと思います。

--- 現在が2020年夏なので、変化はごく最近のことなのですね。

はい。高校生の頃は、写真は好きだけれど、ISO感度やシャッタースピードについて、多分よくわかっていなくて。もちろん概念として理解はしていたと思いますが、「どこをどういじれば写真がどう変わっていくのか?」についての体感値がありませんでした。

暗く写ってしまったら、撮り終わったあとに、写真部の顧問の先生に「なぜこうなったの?」と聞いていたくらいの記憶です。

でも、この1年ほどの間、いろいろなひとに、四方八方から影響を受けて。たしかに変わって、いまの写真にたどりついたという実感があります。

大きくまとめると、以下の5つかなと思います。

[1]「撮らせて」とモデルをお願いするように

画像4

Photo by Mume

それまでモデル撮影は行っていなかったのですが、専門学校に入学したとき、クラスにめちゃくちゃかわいい女の子がいて。

「撮りたいな」と思ったんです。

--- 「撮りたい」ですか? それまでとくにモデル撮影はしていなかったのに、「かわいいと思ったから」→「撮りたい」と感情が動いたのですね。

そうです(笑)。しかも私、ワンピースを貢いだんですよ。「ワンピースをあげるから、着て撮らせて」って。

--- (すごい……)。

画像15

Photo by Mume

そのときに撮った写真を、Instagramにアップしたら、伸びたんです。

当時はフォロワーさんが200人くらいだったと思うのですが、いいねが250くらい。当時の私の感覚から考えると、「すごくいいねが付いた」という感じで。

それが、2019年の5月頃のことでしょうか。

その写真を投稿した後から、「Instagramのような雰囲気の写真を撮ってほしいです」という依頼をDMでいただくようになりました。それで、SNS経由でモデルさんを撮るように。

画像5

Photo by Ryo Ogawa / 小川遼

高校生の頃は、公園で子どもさんを撮ることが多かったんです。遊んでいるお子さんの親御さんに声をかけて、撮ってもいいですかと聞いて、撮って。その場で編集して、写真をプレゼントするという流れ。

それも好きだったのですが、今みたいにモデルさんと作品撮りをするようになって、「これだわ」という感覚を得たというか。

「自分が撮りたいもの」「表現したかったこと」が、自分の中にあったのだと、自覚することができた大きなきっかけが、モデルさんを撮るということでした。

[2]「光」の存在を知った

画像6

Photo by Mume

あとは、光というものを、知りました。昔は、知らなかったんです。

当時の写真を見ると、「なんで光を活用していないの?」「これで満足していたの?」と思ってしまうくらい。光の存在に気がついてから、写真が変わりました。

--- 気がついたきっかけがあったのですか?

はい。2019年の9月、10月頃のことでした。日常的にフィルムで写真を撮っている方と、写真を撮りに出かけたことがきっかけです。

その方が、撮る際に毎回「光がある」「あの光がすごい」と、とにかく「光」ということばを連呼するんです。

最初は、何のことを指しているのか、よくわからなくて。

でも、「この壁に差し込んでいる光、すごくない?」と具体的にファインダーごしに教えてもらったとき、「あ、たしかにこれは光だ。なるほどね」と思って。

画像7

Photo by Mume

[3]スタジオ撮影のアシスタント経験と、機材変更

あとは、「光事件」より少し前、2019年春過ぎから秋頃まで、学業と並行して、結婚式のスタジオ撮影のアシスタントとして働きました。

最初にアシスタントとして入らせてもらったカメラマンの方が、そのスタジオで一番人気のある方で。現場に立ちながら、私のシャッタースピードやISO感度の設定を見ながら「それもいいけど、こっちのほうがいいかも」などと詳しく教えてくださいました。

その経験を通じて、カメラの設定について、頭ではなく体で覚えられるように。

--- 高校生の頃と、大きく違うところですね。

そうですね。今では、「晴れの日の屋外撮影だったらISO感度が100、被写界深度はF1.8に固定して、シャッタースピードだけ変更する」「室内撮影だったら、シャッタースピードと被写体深度を固定して、ISO感度のみ変更する」など、自分の中での撮影ルールの基本ができているくらいです。

このアシスタント経験は、機材への理解だけでなく、機材そのものにも影響があり、やっぱりAPS-Cじゃなくてフルサイズのカメラを持ちたいと決心するきっかけになりました。

それで、2019年の冬の前に、フルサイズのカメラを買いました。それが、いま愛用しているカメラです。

画像8

Photo by Ryo Ogawa / 小川遼

[4]弟に、「写真が無機質だね」と言われて色を意識

あとは、弟ですね(笑)。

--- 弟さん、ですか?

2019年の秋頃までは、撮る写真は暗い感じ。モノクロに近い、ダークトーンよりの写真が多かったんです。

撮った作品はInstagramに載せていたんですが、ある日弟に見せたら「無機質じゃない?」と言われて。

画像9

Photo by Ryo Ogawa / 小川遼

弟なので、「なにも写真のことわかっていないくせに」と最初こそ少しムッとしたものの、改めてフィードを見てみると、「たしかにね」と(笑)。

それ以降、「もう少し色を入れたい」と思い、色を意識して取り入れるようになりました。

[5]やっと出会えたレンズにワセリンを塗る手法

画像10

Photo by Mume

そして、私の写真に影響を与えた経験の最後で、一番大きいものが、忘れもしない2019年12月31日と、2020年1月2日のこと。

昨年の最後の日に、一緒に撮影に行ったカメラ仲間が、「レンズにワセリンを塗る」という手法を教えてくれたんです。

ワセリンを塗って撮ったとき、「これが自分の撮りたかったものだった」と思いました。「この質感、ずっとこれが撮りたかったんだ」って。

画像11

Photo by Mume

いま、Instagramに載せている写真は、すべて今年の写真で、ワセリンを塗って撮ったものです。

そのことを知ってからーーつまり、2020年に入ってからは、カメラが一層楽しくなって。カメラを始めた頃に撮った1枚から、最近撮った1枚になるまでは様々なことが変わってきたと思いますが、振り返ってみると、こんな感じだと思います。

画像12

Photo by Mume

--- この記事の冒頭に、Mumeさんは「この1年ほどの間、いろいろなひとに、四方八方から影響を受けて。たしかに変わって、いまの写真にたどりついたという実感がある」とおっしゃっていましたが、本当にそうだったのですね。

ワセリンを塗ったレンズ、Mumeさんらしさを生み出すための、大切な相棒なのですね。

画像13


Photo by Ryo Ogawa / 小川遼

Mume Takahashi / 高橋夢萌 Profile
学生業のかたわら、フォトグラファーとしても活動。Instagramで公開している作風が人気を呼び、撮影問い合わせがあとを絶たない。音楽ジャケットやテーブルフォト、ファッションなど多ジャンルでも幅広く活躍中。

2020年fotomoti主催「次世代スター発掘キャンペーン」審査員特別賞受賞。使用機材はCANON「EOS 5D Mark II」 
次回(2020年9月29日)更新予定
私が撮った写真は、すべて「私らしい」と思ってる|Artist Interview - Mume Takahashi / 高橋夢萌 3/5

[ Artist Interview - Mume INDEX ]


この記事が参加している募集

カメラのたのしみ方

サポート、とても嬉しいです。写真好きな方が表現者・クリエイターとしてもっと楽しめる世界をつくるために、使わせていただきます。