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鹿とキツネと私達『日記:2024.5.3』

ゴールデンウィークなので、友達とドライブに行った。私は運転免許を持っていないので、友達が運転してくれた。総運転時間14時間。本当にすごいと思う。


高校の同級生の彼女は、大学在学中に教習所に通い車を買ってから私をドライブに連れ出してくれる。

今回はゴールデンウィーク初日。
友達の少ない私に、同じく友達が少ないと話す彼女が遊びに誘ってくれた。お互いに、ゴールデンウィークは今日しか予定がない。

友達と私が住む地域は決して都会ではないが田舎でもない、中途半端な町である。今回向かったのは、引く程の田舎。老後は都会ではなく田舎でぬくぬくと暮らしたいという勘違い野郎がいたとしたら、ここで1週間過ごして本当の田舎というのを体験したら良いと思う、と思える場所だった。

行きも中々大変だった。

山道をどこまで続くのかと思うくらい走る。もはや登っているのか下っているのか分からないような道をどこまでも走る。朝9時から走らせたドライブも、山道を越える頃には昼前になっていた。

ひたすら飯を食らい、移動して、食らって、唯一観覧目的で目を付けていた場所は思ったほどの絶景ではなかった。全盛期の時期が少しズレていたらしい。こちらのミスだ。自然を観ようという人間は、自然に文句を言える筋合いは無い。こちら側が見せてもらっているのだから。

喉まで食糧を詰め込んだ所で、友達と私は外が真っ暗なことに気付く。いつもドライブしている範囲はせいぜい半径10km程だが、今回は倍以上ある場所に来てしまったし、帰りも山道。私達は震えながら、正確に言うと、震えを抑える友達のオーラを感知して助手席の私が震えながら車を発信させた。


「都会の人、見たことないんだろうなー」

車を走らせる。夜21時近い山道は、同じ帰路に着く者も、前を走る者もいない。真っ暗の中、次が右か左かも分からない道を進んでいた。

動物注意の道路標識を見たことがあるだろうか。都会に住む人間は見たことないよねきっと、見ても本当だと思ってないかもねと話す。私達は田舎でも都会でもない所で暮らしているけれど、鹿の標識も、キツネの標識だって見たことがある。


そして、本物の鹿とキツネもいた。走ってた。生きてた。

友達は安全運転第一で車の速度を落としに落としきっていたから、キツネが2匹現れた時も動くまで停止することが出来た。
鹿の家族連れが右から左に歩いて行った時も、私達は律儀に停止していなくなるのを待った。

私達はちゃらんぽらんだけれど、安全は絶対に守し、動物は殺したくない。こんなに楽しかった1日を、何かを殺めるという事件で覆いたくなかったのだ。

鹿やキツネは普通に生きているだけだ。


山道を抜けて、段々と灯りが多くなってくる。市街に入ったのだ。前後左右にたくさんの車、2車線になった道路、営業しているコンビニエンスストア。私達は喜んだ。生きていると実感出来た。

鹿やキツネも私達も、生きている場所も生きていると感じる場所も違うけれど、確かに彼らと出くわした時に両方生きていた。

生きる道は違えど、生命が存在していることに変わりはなかった。

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