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順番の分からない停留所① 【脚本】

●朝、バスの停留所
A、バスの待合所のベンチに座っている
ベンチの前、人がバス停ポールから順に並んでいる

A、スマホで時間を確認する
スマホには、「8:22」と表示される

AN「私が乗るバスは、8時半にやってくる」

バスが前に停まる

AN「このバスは、乗らないバス。私の目的地までは行かない」

バス停ポールに並んでいた人がバスに乗り込んでいく

AN「少し待ってから、行動を開始する」

A、立ち上がる

A、バス停ポールに並ぶ人の後ろに並ぶ。Aは4人目。

AN「私の前に並んでいる三人は、いつも前のバスの到着時間には並んでいる。この早朝から、いい席を取るためだ。このバス停を利用して人々を観察していたら、勝手に覚えた。一番最初から」

映像、学生(18)のアップ

AN「ここから私が下りるまでに高校がある。彼女はいつもそこで降りる。学校が始まるには遅い時間のバスだが、彼女はきっと、計画して遅刻をしているのだろう。もしくは、授業開始ギリギリには間に合っていて、ギリギリ先生に怒られない時間を把握しているのだろう。遅刻はしても、頭がいいのかもしれない。朝から頭が切れる子だ」

映像、女性①(80)のアップ

AN「このおばあちゃんはいつも早めに並んでいる。前の学生よりかは遅いが、杖をつく割に数十分立ってバスを待つ。優先席ならいつでも空いているのに。座れるのに。このばあちゃんには、私達には分からない何か理由があるのだろうか」

映像、サラリーマン(33)のアップ

AN「この人と私はいつも同じ時間に並ぶ。私は彼が並んだのを確認して並ぶことが多い。艶めくワックス、オールバックがいつもキマッていて、高価そうな腕時計がスーツの裾から顔を出す。でも彼の魅力はそこではない」

映像、サラリーマン(33)の足のアップ

AN「彼、いや、多分誰も気づいていないが、彼はいつも靴下の柄が左右合っていない。こんなに完璧なのに、靴下は合っていないのだ。多分彼も気付いていない。なぜなら、靴下の色や長さは同じだが、繊維の向きが違うからだ。これは、購入の段階から適当か、洗濯が適当かのどちらかだろう。きっと彼は完璧そうに見えて、実は抜けている人なんだろう」

A、彼の髪を見つめる

AN「明日は、靴下も完璧でありますように」

A、スマホに目を移す

AN「八時二十七分。もうすぐバスがやってくる」

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