見出し画像

ウォーキングの効用(普通の主婦がイギリス弁護士資格に挑戦した話)

なんだかんだで勉強は大変だった。特に言葉の問題。

読み書きは何とかなっても、話す、聞くが苦手な典型的(古いタイプの)日本人の私にとって、ネイティブの生徒に囲まれ「言葉」に頼らなければならない法律を勉強するのは圧倒的に不利な立場。

それだけに、授業には絶対に出席する事を自分に課した。雨が降ろうが槍が降ろうが…と言いたいところだが、大雪で息子の小学校が休校になった時は止むを得ずお休み。その他、用事でどうしても行けなかった時もあり、記憶の限りでは大学4年間で授業を休んだのは2回だけだったと思う。(若い時の学生時代はサボりまくっていたのに!)

それでも正直、学校に行くのが怖いと感じる事もあった。セミナーの準備はするものの、何回テキストを読んでもどうしても理解できず、「指されたらどうしよう……」などと泣きそうになりながらバッグにノートを詰める日も多々あり。

40過ぎて学校に行くのが怖くて泣きそうになるとは思わなんだ(笑)

でも欠席したらそこで遅れを取ってしまう。次の授業に行くのが更に怖くなるだろう。

キャンパスは家から徒歩30分程度の場所。実家の母が「大学用に使って」と日本の女子大生っぽい可愛いバッグを送ってくれたが、現実はそんな優雅なものではなく、分厚い教科書が何冊も入ったリュックを背負い、黙々と歩いた。

ある時は授業の内容を考えながら、ある時は無心に、私は歩く歩く。駅前通りを横目に見て、商店街を抜け、瀟洒な住宅街に入ると広い公園が見えて来る。それを突っ切った向こう側が大学のキャンパスだ。自宅から約30分の道程。その頃には少し汗ばんでいる。風に揺れる木々の葉や爽やかな空気を吸いながら公園を歩く頃には、不思議に不安や心配も消えて「きっと大丈夫」と言う前向きな気持ちに変わっている。

この頃は、朝の目覚めが後にも先にも経験した事がないほど良かった。何の不安もない、幸せな目覚め。週3回、定期的に往復30分歩いていたからかもしれない。歩く事が心身の健康に良い事を実感した時期だった。

3年目からはキャンパスが変わり、徒歩通学できなくなってしまったがこの道を2年間におそらく数百回往復しただろう。

そして次の授業の前にはまた不安で泣きたくなるのだが、そんな地味で小さな歩みを繰り返していた。

最後まで読んでくださってありがとうございます!サポートしていただいたら、イギリスでは滅多に食べられない美味しい日本食を食べに行きます!