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五万年前のイブ。

▶︎五万年前のイブ。(雑学編)012

演技するということは人間を演じるということです。

人間は何を感じ、何を考え、どう行動するのか。その手掛かりは映画やテレビドラマや小説。心理学や脳科学、歴史学と色んなところにあります。

小学生の頃、漫画家になりたかった僕は、あるとき近所の本屋で「漫画家入門」という手引書を見つけました。著者はあの手塚治虫先生です。内容についてはほとんど忘れてしまいましたが、今でも忘れられない一節があります。「漫画家を目指したいなら、漫画だけを勉強するのではなく、映画を見たり本を読んだり、音楽を聴いたり、美術館に本物の絵を見に行ったりしなさい」というものです。

当時まだ小学生だった僕は「なんてめんどくさいことを言う親父なんだろう」と思いました。その後、漫画家から俳優へと目指すものは変わりましたが、先生のおっしゃったことは、あれから60年経った今でも心に刻まれています。

大事なのはいかに面倒臭いと感じないで色んなものに興味を持ち続けられるかです。

学校の授業がつまらないのは、その先生自身が学問はつまらないと考えているからです。だから学問は面白いと信じている先生の授業は確実に面白い。そういう先生は学問のどの部分をどう切り取って見せてやれば子供たちの目が輝くのかというツボがわかっている。そういう先生に出会えた生徒は幸運です。でも不運な子供たちは自分自身でその切り口を探し求めるしか無いのです。

僕が「分子生物学」を面白いと思った最初のきっかけは「五万年前のイブ」(ミトコンドリア・イブ)でした。現在、地球上に存在する人間は、そのすべてがホモ・サピエンスですが、このDNAを辿っていくとすべてが五万年前にアフリカに住んでいた1人の女性に繋がるんだそうです。つまり全人類のグランマザーというわけですね。

やがて彼女のDNAは世界中に広がって行き、世界には彼女から枝分かれした32通りのDNAが発見されています。つまり32人のお母さんですね。そして日本にはそのうち9通りのDNAが見つかっています。こんな小さな人口1億ちょっとの国に9人のお母さん。多いですね。色んなところから色んな人たちが日本列島にやって来たのだということがわかります。

かつて歴史の授業では、遠い昔、縄文人が住んでいた日本列島に大陸から弥生人がやって来たと習いましたが、最近の研究でそれは間違いで、実は日本人はポリネシア系の民族ではないかということがDNA研究からわかって来ました。

そのひとつの証明として、僕たち日本人は、たとえば蝉の声や、川のせせらぎ、雨の音、風の音などに対して情緒を感じます。その自然の情景を文字として残したのが和歌や俳句です。ところが大陸系の人たち、つまり中国人や韓国人には自然の音は雑音としか聞こえないのだそうです。これは西洋人も同じらしく、日本人は珍しい感性を持っている希少な民族なのかも知れません。

こういう話を、僕が担当している専門学校の演技の授業ですると学生たちの目はキラキラと輝き始めます。入り口は何でも良いのです。分子生物学をきっかけに人間に対する興味が生まれれば、やがて確実にそれは演技に結びついて行くでしょう。

座キューピーマジックHP : http://cupid-magic777.com/

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