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シリコンバレーで見てきた「ヘルシーな世界」の特殊性

「アメリカで暮らしてみて感じた、リアルなヘルスケア事情を教えてね。」

日本で植物療法を学んでいた時、お世話になった先生方や学び仲間たちから、口ぐちにそんなことを言われた。私も「もちろん!」と返事をしてやってアメリカにやってきた。

そして、カリフォルニア州の北側、サンフランシスコ・ベイエリアと呼ばれる土地で生活をスタートさせたのが2年前。日本では何かと話題になる、シリコンバレー、というエリアだ。

サンフランシスコ周辺は、健康意識が高いと言われている。そこに実際住んでみてどうかということについて、私なりにコメントするとすれば、「健康やエコ(環境への配慮)にお金を使ってよいと考える人に対して十分な選択肢がある」そんな場所だと思う。

つまり、お金を払えば、質が良く、体に良く、環境にも優しい商品を手に入れることが簡単にできる土地だということだ。オーガニック系スーパーやレストランの数は多いし、ビーガン対応もかなり手厚い。健康的な食事として注目をされている地中海系のレストランも目立つ。カリフォルニアという豊かな土地のおかげで、ローカルの新鮮な農作物が手に入りやすいというメリットも最大限に生かされていると思う。

シリコンバレーという土地柄、お金持ちが多いので(我が家は会社の補助があって住めるけど、基本的に家賃が恐ろしいほど高いので、この辺はあるレベル以上の所得がなければ住めないような場所)、余裕があることから健康に投資する人も多い。だからこそ、ヘルシーな社会が発展してきたのだろう、というのが私が2年弱住んでの体感だ。

バーガーやピザ、ステーキ系のがっつりとしたアメリカのテンプレート的食事ももちろんあちこちで見かけるし、そういったものも皆取っているようには思える。でも街を歩く人の大半はスリムで健康的に見える。

アメリカはずいぶん健康的な社会になったんじゃないか? むしろ日本が遅れているんじゃないか? ここで暮らしているとそんな気すらしてくる。

でも、この土地を離れて、アメリカでも全く違う場所に行ってみると、シリコンバレーという土地がいかにアメリカの中でも特殊なのかがよくわかった、というのが今回の主題だ。


年末年始にかけて東海岸をボストン、ニューヨーク、ワシントンD.C.、オーランド(ディズニーワールド)と旅をしてきて感じたのは、今住んでいるカリフォルニアと全然違う街の雰囲気、そしてそこですれ違う人の雰囲気だった。

特に極端だったのがオーランド。
訪れたのが、アメリカ中から(そしてもちろん世界中から)人々が集まるディズニーワールドだったからというのもあるが、そこはまさしくアメリカの縮図のような世界だった。

その中で強烈なインパクトを受けたのが、私の2倍はあろうかという体で、すでに歩くことすら困難になっているため、電動カートを使って移動する人たち。地元ではほとんど出会うことのないような人たちに、数百メートルあるけば絶対にすれ違う、そんな世界に正直唖然とした。

でも、これがアメリカの正しい姿なのかもしれない、ということを肌で感じた体験であり、目を覚ますことができて良かったと思う。シリコンバレーという場所が、むしろ異質で極端で、ある種一部の人たちによって閉ざされたところなのだという感覚を持ち帰ることができたのだから。

シリコンバレーの暮らしにあるものは、夢の形なのかもしれない。
この土地には、資金はもちろん、理想を現実にする技術やネットワーク、情熱が詰まっているからこそ、「こんな世界だったらいい」と人々が思い描く、ヘルシーで豊かな暮らしを作るものが、一つ、また一つと作り出されている、そんな想像すら生まれてきた。

例えば、三井物産が出資したことでニュースになったサベージ・リバーというベンチャー企業。「ビヨンド・ミート(BEYOND MEAT)」という肉の代替製品(植物性材料で作った肉のようなタンパク性パティ)が有名なこの企業は、もともとがシリコンバレーのスタートアップ。


実は、アメリカにきたばかりの頃、サンフランシスコ周辺のオーガニック志向の源流は何なのか、興味があって調べたことがある。その時には、かつてのヒッピー・カルチャーや、シェ・パニーズのアリス・ウォーターズなどがキーワードとして出てきたものの、なんとなく「これだ!」というものが掴みきれないまま現在にいたる。

私が今感じているシリコンバレーという土地の特殊性も、サンフランシスコエリアのそういった流れから派生してきているものなのだろうけれど、きっと、ここでもわかりやすい答えは見つからないだろうな、とも思う。文化的な背景、シリコンバレーという土地に集まる人たちの特殊性、富裕層の多さ、技術とネットワークに優れた住人たち、そんな条件がいくつも複雑に絡み合って、成長してきたものなのだろうから。

だから、私はあくまでも私が感じたこととして、この特殊な土地でのヘルスケア事情を土産話にしようと思う。アメリカという大きな括りではとても話すことはできないし、アメリカの〜という言葉では語れないけれど、「こんな選択肢がある」というレベルでのお話を。



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