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"サスティナビリティ"という言葉が、世界中の企業を動かしている

先端技術リサーチの仕事をしていると、今、世界中でどんな技術が開発されているかを知ることができる。加えて、調査対象という視点からすれば、どんな技術が求められ、探されているのかということがわかる。もちろん、私が携わったほんの一握りの仕事の中で、かつ私の専門性の範囲内ではあるものの、この1年半でかなり頻出してきたキーワードがある。それが "サスティナビリティ” だ。

サスティナビリティ(Sustainability)持続可能性とも言われ、ここ数年で、一般消費者レベルまで浸透してきたと感じるこの言葉。企業でも、活動報告のひとつとして、「サステナビリティレポート」という、持続可能な社会の実現に向けた活動についての報告書を発行するところが目立つようになった。私が企業に在籍していたころ(2016年くらいまで)と比べると、随分変わったなと感じる。

その一方で、今の仕事に携わるまでは、実際にどんな取り組みがされているのかなんて、ほんの一握りしか知らなかった。ニュースでちょっと目にしたとか、そんなレベルの知識しかない。でも、リサーチャーとして、一歩踏み込んでみると、今の企業の動きの中心にあるのは、サスティナビリティという言葉なんじゃないかと思うくらい、持続可能なビジネスに向けて、世界がうねりをあげているように感じた。個人的な印象としては、欧州が特に顕著で、次いで米国(当然ながら、分野にもよるが)。それと比べると、日本は遅れている印象ではあるものの、着実に同じ方向を向いていると思う。

もちろん、先端技術リサーチャーという仕事に活かしている私の専門性が、化学、バイオであることは大きいだろう。特にバイオは、従来の化学合成による物質生産から、再生可能な原料(バイオマスなど)を用いたより持続可能な方法に切り替えるための技術が、様々な製品分野で進められている。化学技術であっても、石油由来原料ではなくバイオマス原料からの物質生産に向けた研究開発も多い。兎にも角にも、化学やバイオという専門性から今の企業の動きをみると、いかに持続可能な方法で製品・サービスを提供するかという未来に多くの企業の目が向いているのである。

SDGsでは、Goal 12:Ensure sustainable consumption and production patterns に当たる。(日本語版では、「目標12:つくる責任 つかう責任」)

廃棄物を再利用して製品をつくる、非可食の植物など食料生産と競合しない再生可能原料からの生産に切り替える、二酸化炭素を原料として物質生産する…  そんな技術が、世界中で開発され、少しずつ実用化されている。

これまでも、製品を選ぶとき、サスティナビリティはひとつの指標になっていたものの、実際に手に取る商品としては、サスティナビリティの高い製品はまだまだ数が少なかった。つまり、サスティナビリティを理由に選ぶという機会はあまりなかった。でも、今、企業の取り組みレベルまで見渡してみると、表面化している製品やサービスだけではなく、将来に向けた持続可能性の追求をどこまで本気でしているのかがわかるような気がする。

子どもたちの世代、そしてその子どもたちの世代と、遠い先の未来まで見据え、より良い世界を願うならば、今ある製品やサービスはもちろん、将来に向けて持続可能な生産を行うため技術開発をしたり、環境負荷の低い生産法へと転換していくために研究をしている組織を応援するような消費を選択したいと思うのではないだろうか。少なくとも、私はそうだ。

科学の世界の片隅で、そんな企業努力を日々目にしているリサーチャーとして、仕事以外の時間でも、大手からベンチャー、アカデミアまで、持続可能な技術開発を行う組織にアンテナを広げていきたい。

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