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アメリカ紅茶界のカリスマを訪ねる旅

キッチンでお湯を沸かしながら、茶葉を選ぶ。
紅茶という飲み物はそのくらい日常に溶け込んでいる存在なのだと思う。

でも、紅茶を思いっきり主役にして出かけることがあってもいい。
それも、「電車に揺られて普段は来ない街のカフェへ。」というレベルではなく、「ここで紅茶を飲むために飛行機に乗って来ました!」と言うくらい大胆に、紅茶を主役にして旅を組んでみたっていいと思う。

これは、そんな旅のお話。


2018年4月半ば。
イースターの休暇で、子どもが通う現地校が1週間のお休み。
「どこへ行こうか?」と家族で話し合って決めた行き先は、お隣のオレゴン州ポートランド。

鉄道好きな父と子の一番の目的は、帰路の寝台列車。ポートランドからサンノゼまでを電車で帰ってくる、その過程が一番の楽しみだ。

寝台列車にそこまで興味のない私は、ヘルスコンシャスで環境への意識が高いサンフランシスコと近いようでちょっと違うと言われる、エコでヘルシーな都市ポートランドという街への興味が二番。でも、この街に行きたい!と一番思わせた存在は、一つのティーメーカーだった。

それがポートランドに本拠地を置く、Steven Smith Tea Maker(スティーブン・スミス・ティーメーカー)だ。

スティーブン・スミス。

紅茶好きなら、この名前を聞いたことがあるんじゃないだろうか?もしなかったとしても、Stash(スタッシュ)Tazo(タゾ)というティーメーカーの名前には聞き覚えがあるんじゃないだろうか?

Stash(スタッシュ)
1970年代に米国オレゴン州ポートランド近郊で立ち上げられたティーメーカー。正式名称は、Stash Tea Company(スタッシュティーカンパニー)。紅茶、ハーブティーのほか、緑茶や烏龍茶まで幅広く取り扱い、現在では全米で高いシェアを誇る、アメリカを代表するティーメーカーのひとつだが、実は1993年に日本の株式会社 山本山に買収されている。現在は山本山のグループ会社。
Tazo(タゾ)
1994年に米国オレゴン州ポートランドで設立されたティーメーカー。正式名称は、Tazo Tea Company(タゾ・ティーカンパニー)。スターバックスのティーラインナップで、Teavana(ティバーナ)登場以前に主役を張っていた「タゾ」は、このティーメーカーのことである。1999年にスターバックスによって買収されており、ティーバッグやボトル飲料としてスーパーに並ぶだけでなく、スターバックスで提供されるティーとしても有名になった。ただしその後、世界的紅茶ブランドであるリプトンを所有する英蘭ユニリーバに売却されている。

StashもTazoも、アメリカのスーパーのティーコーナーには、必ず並んでいる代表的なティーである。アメリカの家庭にティーという文化を定着させたと言っても過言ではない、この2つのティーメーカーの設立に携わったのが、スティーブン・スミスなのだ。

Tazoの売却後、いったんは引退をしフランスに移住したものの、再びポートランドに戻ったスティーブン・スミスが、自らのお茶人生の集大成として始めたもの。それが、 Steven Smith Teamaker だ。

残念ながら、Steven Smithは2015年にこの世を去ってしまったが、彼の志や経験を受け継いだティーメーカーたちが、今もここポートランドでお茶を作り続けている。

これはもうティーラバー、ティーホリックとして行かないわけにはいかない。なんといったって、この広いアメリカの中でも、飛行機で2時間かからず行けちゃうところに住んでいるのだから。

というわけで、ポートランド旅行の2日目、家族とは別行動を宣言し、聖地巡礼といった気分で訪問を決めた 。

ポートランドの中心部からバスに乗って20分ほど。おしゃれなカフェやレストランがあるという観光エリアとは逆の方向を指すGoogle Mapにちょっと不安になりつつも、指示された場所に向かうと…。

あった! Steven Smith Teamaker Tasting Roomの看板!

感動で震えながら入った店内は、ティーへの愛と、新しいティーカルチャーを生み出そうという静かな情熱に溢れた場所だった。


好きなお茶を4種類選んで試飲することができる「フライト」($10)を注文。試飲、といっても、お茶はカップのふちまでたっぷりと注がれてる幸せ。熱いので、スプーンですくってグラスに移し、少しずつ飲むことを勧められた。まさにテイスティング。

今回選んだ4種類は、ブラックティー2種類と、ハーブティー2種類。

<ブラックティー>
No.64:Ceyron Dimbulla BOP1
No.1851:Portland Breakfast

<ハーブティー>
No.13:Red Nectar  
No.19:Hibiscus Flowers

No. 1851:Portland Breakfast は、まさにこのテイスティングルームで生まれたという、ポートランドをイメージした紅茶。「オレゴン州の山の香りを彷彿とさせる」らしいが、さすがにポートランド市民ではない私には、そのイメージは全く分からず。

ただ、濃い目の水色の割には、味が柔らかくとても飲みやすく、細かいことはわからないけれど好きだ!という直感。ブラックティー2種類は、知人へのお土産の選択肢と考えて選んだものだったが、こちらを買おう!と決めた。これはポートランドでないと買えないという地域限定であることも大きな理由だけれど、味が気に入るというのも、欠かせない要素なので。

帰りには、Steven Smith Teamakerといえばもうひとつ有名なスパークリングティーをいただいて帰ろう…と思っていたものの…

あまりにお腹いっぱい(4杯もいただけばそれも当然)になってしまったために、お土産のティーをたっぷり買ってこの日はホテルへ。

そして翌日…再び訪問して、今度こそのスパークリングティー!
この日いただいた「ストロベリー・スパークリングティー」は、甘みと爽やかさのバランスが絶妙で、最高においしかった。


「フライト」「スパークリングティー」

上質の茶葉や味を際立たせるためのブレンドに徹底的にこだわりつつも、新しいドリンクとしての可能性も追求し続ける。そんなSteven Smith Teamaker のティーに対する情熱とバランス感覚を象徴するような、2つを堪能する2日間だった。


そんな旅のお土産(の一部)。

ポートランドをイメージしてブレンドされた限定のティー2種類は、自分へのお土産としても購入。

飲んだティーを記録するジャーナルは、Steven Smith Teamakerのものではないけれど、ティールームで取り扱いをしていたもの。

アメリカにおける紅茶の聖地巡礼のような旅は終わっても、紅茶を楽しむ人生の旅はまだまだ続く。そんなお土産を選べたことも大満足なポートランド旅行だった。

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