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フリーランスリサーチャーを1年続けて、変化したこと

個人事業主として届け出を出したのが、2019年10月。この4月でちょうど1年半がたった計算になる。

実際のところは、2019年9月末で前職(大学職員)を辞めたため、「次男の保育園在園に必要な条件を満たさねば!」という思いが第一で、とりあえず開業したというところが大きい。もちろん、形ばっかりではなく、「すぐにでも仕事を開始せねば!」と、ライターの仕事をいくつか引き受けつつ、コアとなるような仕事を模索した結果、2019年11月末から、ある企業と業務委託契約をして、技術リサーチャーとして働けることになった。

「~せねば!」の連続で、自らを追い立てるようにしてスタートしたこの仕事も、今でだいたい1年4ヶ月くらい。最初の頃は、人より詳しい分野が化学と薬学くらいな自分が果たしてやっていけるのか、不安しかなかったけれど、おかげさまで順調だし、ほとんどの仕事が楽しい。

そして、ふり返ってみると、この仕事をはじめて1年経ったくらいから、振られる仕事の中身が少しずつ変わってきたなぁと思う。業務委託で、同じ企業と同じ仕事内容で働いていると、ステップアップが難しいかなぁなんて不安も、スタート当時は持っていたので、これはかなり嬉しい事実だ。(そしてその結果として、報酬アップも実現できたので、相当嬉しい。)仕事内容は当然ながら機密事項なので、詳しいことはかけないが、変化した仕事に求められるスキルという視点から、自分の中でどんな成長があったか を考えてみた。

1.一定基準以上の質・量の納品物を、確実に提供すること

リサーチャーとして仕事をする上で、すべてに共通するのが、提供する情報の量と質だ。ごくごく当たり前のことだけど、スピード感を持って仕事をする中で、この2つ、特に質を担保することは、実はそんなに簡単なことではない。今はインターネットで検索すれば、関連する情報がどんどん溢れてくるような時代。最先端の技術や製品だって、公式情報からニュース記事、特許と、とにかく情報が溢れている。その中で、特に優先度の高い情報を選抜し、相手が求めているポイントにフォーカスして、取り出す詳細情報を取捨選択し、要点を端的にまとめる。これら一連の作業をするには、それなりの経験を積んで、情報検索時の嗅覚を磨く必要があるなぁと感じている。

また、プロジェクトによって求められるポイントが異なるので、毎回情報のどの部分を突っ込んで掘っていくべきかを最初にしっかり掴んでおく必要がだ。例えるならば、プロジェクトによって違うものが見えるメガネをかけてGoogleに向かう感じ。実際、以前のプロジェクトで追跡した企業を、別のプロジェクトで再び追いかけるという経験も、この1年の中で何回かあったけれど、こちらが意識しているポイントが違うだけで、情報の見え方が全然違うことを実感している。ざっと飛ばし読みをしてチェックする中でも、飛び込んでくる単語がちがうなと感じたら、それはメガネのかけかえがうまくいっている証拠、とにんまりしてしまう。

そんな経験を積んでいった結果として、プロジェクトに合わせ、質量ともに十分なリサーチ結果を出せていたのか、ここ半年くらいは、担当外の部分でも追加調査や修正といった、いわゆるクオリティ・コントロールのような仕事を任せてもらえる機会が増えた。これは、「あなたの出している成果は求めているクオリティに達しています」と言われているようなものだと思うので、信頼して任せてもらえることがとても嬉しい。とはいえ、他の人と比べ、時間がかかっているなど反省点もまだまだあるので、より効率的に質の高いアウトプットができるよう、経験を積んでいかねばとも思う。


2. 突発的なタスクに対応できる柔軟性

プロジェクトを進めていると、想定外の作業が発生することもあり、誰かが対応しなければならないということはままある。多くの場合、マネージャーの立場にある人がうまく処理していくのだろうけれど、それが難しい場合には、この人ならできるという人に、そのタスクが振られることもあるだろう。突発的に、そんな緊急タスクを依頼されることがでてきた、というのが、もう一つの嬉しい変化だ。

〆切が迫っていて、緊急度も優先度も高い。緊張する仕事ではあるけれど、ここをきちんと仕上げられたら、全体が上手くいく!と、俯瞰して全体の成果から自分の役割を考えると、責任感がモチベーションに変わり、信頼に応える仕事をしようと思える。

企業で企画戦略スタッフをしていたとき、「困った時に、あの人なら…」と思い出してもらえるような存在になることが、一つの目標だった。それを実現するために、いろんなトラブルを火消しし、見落とされているタスクを拾い上げ、人と人をつなぎ、組織の歯車がうまく噛み合うことで、部門としての成果を上げられるように飛び回ることに、かなりのやりがいを感じていたものだ。

フリーランスとして働くようになって、基本的に "請け負った仕事を確実にこなす" というスタイルになってから、会社員時代のように、隙間に落ちているタスクを拾うようなことはなくなった。それが少しさみしくもあったけれど、いやいや今の働き方だって、足りない部分をぱっと埋められるような人材に自分がなればいいだけじゃないか、と気づけた。専門分野にしても、ビジネス的な部分にしても、まだまだ知識と経験が足りない部分は多い。というか、足りない領域のほうが圧倒的に多い。科学というでっかいフィールドでなんでも屋になることは、まぁ無理ではあるけれど、自分の得意分野から少しずつ範囲を広げて、突発的な対応でもさっとこなせるくらいの人材になることを、目指していきたい。

まとめ:フリーランスでも仕事の中身は変わるし成長できる

この1年の実感をまとめると、この一文に尽きる。

組織に入り、目標を共有しながら成果を出すという、いわゆる会社員的な働き方ではなくなった時、知識や経験の蓄積以外での成長は難しいだろうなと思っていたし、企業のように評価システムのない中で、コンフォートゾーンに留まってぬくぬくしてしまうのではないか、という不安も少なからずあった。だからこそ、定期的にふり返って、外に飛び出したほうがいいと思ったら、また違う道を探そうとも決めていた。

でも、1年ふり返ってみたら、この結果だ。どんな場所でどんな働き方をしていたって、目の前の仕事に全力で取り組み、成果を出すために動いていたら、自ずと変化と成長はあるのだとわかったことが、何よりの収穫。そして、今この場で自分に足りないことも、まだまだたくさん見えているので、たっぷりあるのびしろを意識して、成長を続けていきたい。

定期的にふり返りをしつつ、引き続き、リサーチャーとして精進していこう!と決めた、2年目の春。

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