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【My London Days】 あの時の「お好み焼きレストラン」

もう終了してしまいましたが、海外在住の日本人「妻」を取り上げた番組がありましたよね。

私の場合は夫の海外駐在に帯同してのイギリスやアメリカ暮らしだったので、現地の人と結婚して暮らしている日本人女性とは少し立場が違いましたが、海外の日常をみられる番組だったので好きでした。

ある時、ロンドンのお好み焼き店が取り上げられました。

「あべの」
このお店、今はなき「ヤオハンプラザ」の2階、エスカレーターを上がったすぐのところにあり、まだロンドンに引っ越したばかりの頃、行ったことがありました。

あべの 1995年の頃

関西人ならおそらく、お好み焼きはあえて外で食べるものではなく、各家庭それぞれの味、流儀があり、ふつうに夕食やお昼ごはんとして家で作るもの、という位置付けではないでしょうか。

私がそのような考え方でしたが、ロンドンに住み始めてまだ日が浅く、外を少しずつ知って行きたいという思いから、ある日、夫と週末の買い出しついでにお昼ご飯をあべので食べてみることにしました。

お店の中では日本語と英語が使われており、引っ越して以来、友達もいなくて寂しい思いをしていた私には、日本語が通じる空間がとても心地良かったことを覚えています。

まだヤオハンプラザ自体が新しく、明るい店内は和風の作りでお客さんや店員さんにイギリス人がいなければ、日本にあるお店と何の変わりもないように見えました。

イギリス人と日本人のご夫婦で経営されていることは店にいると分かりました。
オープンして間がなかったようで、若干、バタついた気配はありましたが、「クリス」と呼ばれていた男性が、小柄な日本人女性の背中に手を添えて彼女の話を聞いている場面を見て、飲食業界にいる人たちには見えず、一念発起してお店を始めたのかな、と思ったりもしたものです。

やはりあの人たちだった

4年ほど前の「日本人妻」の番組では、「あべの」の奥さんに密着していました。
ロンドン市内の一戸建てに暮らし、お店は市内の中心部に移転させていました。

私がイギリスから日本に戻ったのが1999年11月。
その数年前に、ヤオハンプラザはオーナーが変わり、名前も「オリエンタルシティ」に変わりました。
それまでの日本色が濃いショッピングモールから、アジア系に変わりテナントの入れ替わりもありました。

いつ頃、「あべの」がオリエンタルシティから出て行ったのかは知りませんが、私が働いていたお店が人手に渡ってしまい現在はその消息がわからないのとは対照的に、お店を存続させ発展させているオーナー夫婦はすごいな、と思います。

↓ 私がイギリスで働くようになった経緯と、あるイベントの様子を書いた記事です。

テレビ番組の中で、私がこの女性がヤオハンモールの2階にあったお好み焼き店の経営者なのかどうか、確かめたかったのがだんなさんの名前でした。

「クリス」と呼ばれていた男性が、だんなさんなら間違いなくあのお店のオーナー。

やがて、番組にだんなさんが登場し、字幕で「夫のクリストファーさん」と出たので、ああ、やっぱりあのふたりだったんだ、とうれしくなりました。

分かれた明暗

私が働いていた「Japanese £1 shop」は、ロンドン西部に最初の店をオープンした後、より多くの日本人が利用するヤオハンプラザに2号店を開きました。

多忙になったオーナー夫人がたまの息抜きに、「あべの」でお昼を食べるのを楽しみにしていて、私がヤオハンプラザ店に勤務している時は必ず誘ってくれました。
私もふだんはスタッフとして店に立っていますが、別のお店に入ると当然ですがお客様として扱われ、心が安らいだものです。

「あべの」のご夫妻がビジネスを順調に継続させているのに対して、私が2年ほど働いた「Japanese £1 shop」はその後、消滅してしまいました。

お店の立ち上げから頑張ってきた私としてはとても残念な思いがします。
イギリスにおいてビジネスのスタートアップがどういう状況なのか分からないのですが、イギリス人と日本人の夫婦がお店を立ち上げたところまでは「あべの」も「£1 shop」も同じ。

両店とも日本人だけでなく、現地のお客さんもつかんでいました。

ビジネスを続けることはきっと難しいことなんでしょうね。

毎日不特定多数のお客さんが訪れる飲食店なので、私が時々お好み焼きを食べに行っていたこと、まして四半世紀も前の客のことなんて「あべの」のオーナーが覚えているはずもありませんが、ほんの一時期、同じモールの2階と1階で商売をしていたから、「ああ、1階にそんな店があったね」ぐらいでも、彼らの記憶に残っていたらうれしいな、と思います。

ここ数年、海外旅行は絶望的な状況が続いていますが、また自由に観光旅行ができるようになれば、もう一度イギリスに行ってみたいな、と思いました。

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