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【読書日記】 ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2  ブレイディみかこ 著

過日、この本を読み始めた記事を書きました。

もう2ヶ月も前だったのか・・・。

上記の記事は、『ぼくはイエローで・・・2』の第1章を読んだ時に脳裏によみがえって来た思い出を書いたものです。

先をお急ぎの方のために、またまた作ってあります、YouTube!

4分ぴったりの長さに出来上がっていますので、ぜひご視聴くださいませ。

本書は、どの章も濃くて勉強になるしお腹いっぱいになります。
私が特に感銘を受けた章について書きます。

第3章 ノンバイナリーって何のこと?

ノンバイナリーは、「第3の性」と言われ、Miss/MsともMrとも括られたくない人たちを指しているそうです。
英語では、話題にあがった人を「She」とか「He」の代名詞で表しますが、ノンバイナリーは女性でも男性でもないので代わる呼称として「It」とか「they」にしたらどうか?なんて意見もあるらしいですが、一人称に対して「they」とか、れっきとした人間なのに「it」は変ですよね。

アメリカでは、「ze」や「ve」なんて代名詞もすでに生まれているとか。

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lunch couponを思い出しました

この章の中に、「ぼく」が通う中学校の教師、ミセスパープルが、昨今問題になっている「ピリオド・ポヴァティ」という「生理貧困」に取り組んでいます。
日本でもこういった動きがあるニュースを読んだ気がします。

生理用ナプキンが買えないから学校を休むという、何とも切ない事情が「ピリオド・ポヴァティ」。
ミセスパープルは、生徒たちがそのような理由で病欠する事態にならないよう、慈善団体と協力して学校に生理用品を置く活動をしているのです。

また、「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」にも彼女が登場し、不要になった制服をリサイクルして、経済的理由で制服を買えない家庭が格安で購入できる仕組みを作っていました。

不要になった制服の寄付を募り、傷んでいる部分を修復する作業は保護者が請け負い、著者もそのひとりでした。

ここを読んでいて、私はアメリカの学校のlunch (meal) couponを思い出しました。

ランチクーポンは、学校で提供される給食の割引券。
私がアメリカに住んでいた頃、新学年が始まる前にこのクーポンを求めて学校に並ぶ保護者の映像をテレビでよく見かけました。

私はこういう取り組みはとても良いと思っています。
制服は成長期の子どもが3年間同じものを着続けるのは難しいし、毎日の給食費だってそれが負担になる家庭もあるでしょう。


それぞれに行政から補助があれば良いですが、もしなければミセスパープルのように現場の教師が解決に乗り出すのは何とも頼もしいです。
私も制服の修繕に参加したいです!

第7章 グッドラックの季節

この章は本当に心に沁みました。
国の舵取りをする政党が変わると、影響は国民の生活に直結しこれまで福祉で守られてきた人々が突然よるべなき身になってしまうことを、この一章が教えてくれました。

著者が暮らす労働者階級の街。
20年来の隣人が遠い街に引っ越して行くことになったのは、成人した子どもたちが購入する家の頭金を作るため。

本書で舞台になっているブライトンは、個人雇用主(ウェブデザイナーやプログラマーなど)が多い街だそうで、著者などが暮らす元公営住宅は、サッチャー政権が公営住宅を払い下げた時に買い取った人たちと、保守党政権の緊縮財政の波を受けた中間層(ワーキングクラスでもなく、アッパークラスでもないミドルクラスに属する人々)が、都心では家を持てないからという理由で移り住んで来て混在しています。

著者の隣家の住人はシングルマザーで、この公営住宅で生まれ育ってきた人。
なかなか定職につけず複数の仕事を掛け持ちして子どもを育てたのちに、子どもたちが自分の家を持てるように、とこの住宅を売って頭金にしようとしたのでした。

隣家には、若いポーランド人夫婦と赤ちゃんが引っ越して来ました。

その後、元公営住宅を去った隣人が近所で目撃されるようになります。
ブライトンからは遠い街に引っ越したはずなのになぜ?と不思議がる著者に、「配偶者(著者はご自身の夫をこう表記しています)」が
「ここで生まれ育ち、この街しか知らない人が60歳過ぎてから新しい場所に馴染むのはとても難しいことだと思う。ここが懐かしいんだろう」と言います。

ある日、やはり隣家の前に車を止めていた元隣人を見とめた著者が声をかけると、疲れた表情の彼女は「気がつくとここに来てしまっている」と答えました。

これは誰にでも共通する想いだと思いました。

長年住み慣れた街や家から離れ、新しい環境に馴染むのは高齢であるほど難しいのではないでしょうか。
特にそれが本意ではなかった場合は。

あれもこれも思う

著者の隣人の様子を読むと、自分が好きな場所に生涯ずっと暮らせれば安心だと思いますし、より高い収入、自分に合った仕事を求めて移動して行くのも人として当然のことだと思います。
また、子どもの教育、学校を考えて住む街を選ぶのも正しいと思うし、何より、自分自身の考え方が変わって行くこともあります。

そんなこんなを、著者のたった13歳の息子が「ライフってそんなものでしょ」と言い表します。

達観した大人のような言葉ですね。

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帯に「ついに完結。」と書かれてあるので、これで著者と息子さんが交わす、日々の意外と深いやり取りのエッセイは終わりなのでしょう。

しかし、何年か後、息子さんが17歳、18歳になった頃に彼が通う高校や大学ではどんなことが起こり、どう考えているのか、を書いてくれたら良いな、と思っています。

私は常々、若い世代を育てて行かないことには国や世界の未来はないと考えています。
そして、若い世代を育てるのは、経験を積んできた側の人間が若い世代の話に耳を傾け、彼らが何をどう考えているのかを知ることが大切だとも思います。
若者たちはこちらが驚くほど、私たちをよく見ています。
私たちの良いところや悪いところをしっかり見ているので、改めて彼らに教えることはあまりなく、一緒になって意見を交換し、私たちの失敗を彼らに分析してもらう、なんてやり方も良いんじゃないかと思います。

ブレグジット後の英国や、イギリスの中学校の様子、そこで学ぶ生徒たちの考えなど、市井の人々の日常から知ることができる本書。
ぜひ読んでみてください。
私のように、中学生高校生の子どもがいる方に特におすすめです。

蛇足ながら、私の「読書Vlog」もどうぞよろしく!
(広告が付くなんて程遠い、弱小YouTubeチャンネルなんで広告に邪魔されることなく、最初から最後まで流れるように観られます!)

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