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茜色の空に惹き付けられて

ストレス社会に生きる民の一人として、ストレス解消は大きなテーマだと思う。
かくいう私も、このストレス解消に悩みを持つ一人だ。

リモートワークでの仕事とプラスして、週末に資格試験の講座に参加しており毎日忙しい。その結果、休みという休みは週1日だけで、その休みも結局疲れてどこにも行けずに家のベットで溶ける寸前まで寝ているだけなため、正直ストレスを発散させる場面がない。
こんな生活をしているため、友人にも月に1回会うか会わないかという始末になっている。
もはや俗世間から離れた僧侶みたいな生活をしている。


じゃあ友人と会えば?、という話になりそうなのだが、純粋に週6デスクに向かっていて、貴重な休み1日を外にでて遊ぶなんてことを何度もしてしまった日にはアラサーの体にガタが来てしまう。それを防ぐためにも月1回だけ友人と出かけるということに決めている。

スマホの検索画面に「ストレス 解消」と打って検索すると、外に出なければいけないこと以外で一番最初に出てくるのは「食」である。美味しそうなスイーツ、ガっつきたい肉料理・ラーメン。私も一度この道に誘われそうになったが、そういえばダイエットもしているんだったとグッと堪えてブラウザを閉じた。その禁欲感も相まって、僧侶化が進行しまくっている。

そんなこんなでストレスがMAXになりそうな兆しがあった今日。
仕事終わりに夕ご飯を食べて、その流れでちょこっとだけゲームでもしようか、と思った時に、ふと目線がカーテンの隙間から見える窓の外の方に向かった。

窓の外には、綺麗な茜色の空が広がっていた。

そういえば、最近外を見ることすらなかった。

久々に空が雲に覆われていない瞬間を見た。近頃は梅雨で、雨や曇りが当たり前の日常になっていた。窓に近づいてカーテンをもう少し開くと、ゆっくりと色味を変えていく雲と空が綺麗なコントラストを描いている。
直感的に、外に出たいと思った。

家の外に出ると、茜空は焼けかけていて、夜に近づく少し優しい温度感になっていた。

適当な服を羽織って、家の周りを歩きながら空を観察することにした。
幸いにも、自分が住んでいる地域は中々に田舎で、その時間歩いている人はいなさそうだった。コンクリートの道路からより人気の少ない田んぼの畦道の方向へと進む。
昼間は猛威を奮っていた風も、ある程度落ち着いていて熱を冷やしてくれる。お気に入りの米津玄師の曲をイヤホンで聴きながら、だだっぴろい田舎の道を歩いた。

歩いていくうちに、空の色の割合が変わっていく。太陽の色が焼きついた細い雲がいくつか並んでいた。まだもう少しだけ明るそうだったので、あまり帰り時間を気にする必要性はなさそうだ。
道の途中で写真を撮った。


途中で撮った夕焼け




畦道には、飛んでいる小さい虫と繋がっているコンクリートの道を走る車しかいない。誰もみていないし、誰もいないだろうからと米津玄師を歌った。大声では歌わず口ずさむ程度だが、私の声は田の水にだけ吸収されていく。PVっぽく踊ってみたりした。歌いながら上を見上げてながら大きく背伸びをする。気持ちがよかった。

途中、帰り道を歩く中学生ぐらいの男の子が見えて、スッと歌うのをやめたが、端が見えないほど広い空はその中でも色を変えていき、濃い色になる。次第に辺りは夜の気配を滲ませていく。さすがにもう家に帰るべきだろう、とイヤホンを外して、帰路についた。



家に帰ってから気づいたのだが、外にでて空を見ながら歩いている間、私は一度も仕事のことも講座のことも考えてなかった。ただ、綺麗な空を見上げてはしゃいで、米津玄師になったつもりで歌っていた。
気づいたのだ、これが私の一番のストレス発散だと。


綺麗な夕方の空に魅了され、外に飛び出した結果、自分のストレス数値は驚くべきほど減っていた。何も考えず、イヤホンから歌を聴きながら口ずさんで、その音に乗って少し踊ってみたりして。広くて誰もいない田舎の畦道は、私にとっての自然のステージだった。悩みや考えなきゃいけないことを放っておけるほど夢中になれるものだった。

別に遠くに出なくたっていいんだ、美味しいたべものを食べなくたっていいんだ。

ただ、空を見上げてぼんやり歩くだけで、これほどまでに気持ちが軽くなる。

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