見出し画像

monokromatiskt ljus

詩人の真似事をしていたら深い闇の中に迷い込んだ。
手探りで進もうにも何も縋れる物がなくて、ただ独りで立ちすくんでいる。こんなところに来るつもりじゃなかった。
普通の日々が退屈でほんの少しいつもと違うことをしたくなっただけだったのに
いつの間にか退屈な普通の日々から遥か遠ざかって
もう二度と戻ることはできないかもしれない。
「二度と詩人の真似事なんてしないから、元の日常に帰りたい」
そんなことは微塵も考えない。
誰も聴いていなくても、誰も見ていなくても、そこに誰がいなくても、
永久に詩人の真似事をしながらこの闇の中で死ぬまで生きるならそれでいい。

ここには何もないし誰もいないけれど、次はどんな言葉を紡いで詩人になりきろうか。
そんなことを考えていたら、闇の奥深くに光が見えた。
ぽつりぽつりと小さく瞬いたり、一帯がぼんやり光に包まれたり。
そこへ向かえば何かあると、誰かが呼び寄せるような赤い光。
或いはこちらに来てはいけないという警告だったかもしれない。
闇のずっと深いところまで引きずり込まれるように光を追って歩く。
光は行けども行けども遠いままで、言葉も何も生まれてこない。
明るい場所を求めて光のさす場所を探すのも疲れ果てたし
真似事ではない本物の詩人が戻ってきてくれればいいのに。

詩人が最後に残した言葉は光と希望に満ちたものに見えたけれど
今まさに死のうとしている人間の言葉だったと気づけなかった。
何も知らず、何も分からないまま、
ちゃんと別れも告げずに見送った本物の詩人への罪滅ぼし。
詩人はいつでも希望の光だった。
詩人の真似事をして言葉をいくつも叫びながら
いつまでも追いつけない光を追い続ける。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?