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「背中」

背中なんて毎日数え切れないほど見る

電車

エスカレーター

レジの並び



自分ではない大きい背中なんて記憶にないぐらい見かけるもの

でも今目の前にある背中は


見てるだけじゃなくてもいい「背中」




大きいのか細いのか…

少し頼りなくてゴツゴツしてる

でも温かい背中だってことを私は知ってる



手を伸ばす




腹が立つほど細く薄いその腰に手を回す



ゆっくり温度が手、腕…最後に顔に伝わってくる

この背中を私は誰よりも知っている



見た目より筋肉がついていること
見た目より背中は少し柔らかいこと
見た目より温かく優しい香りがすること



誰も知らない


私を何よりも安心させてくれる背中




その背中が少し揺れ、上から声が降ってきた


「どうしたの?」



「何もないよ」




と私は笑いながら腕に少しだけ力を入れた

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