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目が見えない私のみちくさ散歩

障害を抱えている方をはじめ、様々な国籍や文化、年齢の方々の視点から見える世界は、新たな気づきや発見を与えます。またものの見かた、捉え方にも今までにない変化が生まれるかと思います。本シリーズでは、実際の当事者の方々から日常生活で感じる出来事などを共有いただき、読者の皆さまに記事を通して発信していきたいと思います。

こんにちは!全く目が見えないお姉さん、愛美テミスです。
今日もパンチ!パンチ!でストレス解消中です。

春も真っただ中、コロナの規制も緩和され、皆さん外出の機会も増えてきているのではないでしょうか。春を感じて心ウキウキするのは障害者も同じ。全く目が見えない私ですら春の光に誘われて、とくに用事がなくてもお散歩に出かけてしまいます。

iPhoneをポーチにいれて骨伝導のヘッドセットを装着、手には白杖(はくじょう)。さあ、出発です!それでは見えない世界のお散歩に、しばしおつき合いくださいませ。

歩き始める前に、3Dオーディオマップアプリ「Microsoft Soundscape」を起動します。するとヘッドセットから「50m西方向に交番、南西方向におっ母さん食品館……」と聞こえてきます。これで準備OKです。

まず最初に、私にとって歩きやすいお散歩用の道へ向かいます。お散歩道まではそれなりに人通りがあるので、慎重に歩きます。「50m先ファミリーマート○駅前店」と左前方から聞こえてきました。そろそろ左折です。左折して20歩ほど進んだ所が、お散歩コースの始点です。

私のお散歩道はJRの線路の側道。道幅も広くはないので車は一方通行。歩道もありませんが車が少ないので、とても歩きやすいのです。楽しそうに会話をしながら横に並んで歩いてくる若者たちと、よくすれ違います。

それでは、白杖で道の端を確認しながら、たまに近づいてくる車と、たまに駐車しているトラックに用心しつつ、気分だけは軽快に歩き始めます。ヘッドセットからは「50m南東に石窯パン、70m南に○公園」などと、次々あちこちから聞こえてきます。公園でおいしいパンが食べたいなと思いつつ、スタスタ歩いて(いるつもりで)いると突然、顔面に衝撃が!! 痛タタタ。油断してまたやってしまった、電柱にこんにちは。

誰みも見られていないことを願いつつ、何もなかったふうを装い、再び歩き始めます。するとどこからか「大丈夫ですか?」と。その瞬間私は赤面し、「あ、あ、大丈夫です」。恥ずかしいったらありゃしない!ところがです。「そっちは駅じゃないですよ」と。

え、目撃されてたわけじゃないの?ドッと体じゅうから汗が吹き出します。気を取り直して「はい、方向も大丈夫です」と慌てて取り繕う私。親切なお人が離れていった気配を確認し、ふと我に返った瞬間、ところで私は今どこにいるんだっけ? 何をするんだっけ? ここでまた一瞬心臓がバクバク。

でも大丈夫、iPhoneがあるのです!Soundscapeアプリの現在地ボタンをタップして、今いる場所のおおよそを知ることができました。さあ、気を取り直してお散歩を再開しましょう。。。

このSoundscapeアプリの日本語版が公開されたのは、昨年(2022年)2月のこと。新しい発見をしながら街歩きを楽しめるアプリとして登場しました。現在地の情報や、周辺にある店舗名などのポイントを 3D の音声で読み上げたり、目的地の方向をサウンドで知らせてくれます。また一部のイヤホンは、連携すればイヤホンの向きを基準にできるので、スマホはバッグの中でも良いという仕様になっています。

Soundscapeのおかげで、私のお散歩にも音の風景という彩りが加わりました。ところがです。マイクロソフト社は今年1月、アプリの開発を終了してしまいました。そのため、6月以降のアプリ使用についても不透明な状況です。

たったの1年。うーん、悲しい。パンチ!パンチ!!

写真:執筆者 愛美テミスさん

登壇者プロフィール

愛美テミス:産業カウンセラー/JPA認定カウンセラー
1973年生まれ。
視力がだんだん失われていった10代から30代にかけて感じた恐怖と、社会からの疎外感を忘れることができない。誰もが優しくつながる社会を理想に掲げ、現在ライフワークとしてブラインドのためのITサポートやピアカウンセラーとして活動をしている。さらに、晴眼者のITサポーター養成にも取り組んでいる。パラちゃんねるのライター兼WEBアクセシビリティも担当する。


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