ハリウッド映画『ラスト・サムライ』
トム・クルーズ主演の映画『ラスト・サムライ』は、興味深いハリウッド映画の1つだ。“外国人から見たサムライ”という前提を理解した上で見る分には申し分ない。面白い。
しかし、アメリカ人が日本人の武士道精神を守ってやった感が否めない。もう1つ、アメリカ人がサムライに引導を渡してやった感も否めない。
エンターテイメントとして素晴らしい作品だとは思うので、断じてこの作品を否定する訳ではないことをご理解いただきたい。
1つ目に指摘したアメリカ人が日本人の武士道精神を守ってやった感だが、確かに当時、明治から大正にかけて、日本の精神を無視して極端に西洋化を推し進めようとする人もあった……。そういった日本の精神を外国人の視点で、呼び起こさせようと啓発した人々もいた。しかし、ハリウッド映画によく見られる極端な描き方をしていると思う。
2つ目に指摘したアメリカ人がサムライに引導を渡してやった感だが、クライマックスで不平士族の頭領・勝元(演:渡辺謙)の自害を補助し、とどめを刺したのは、他でもないオールグレン大尉(演:トム・クルーズ)である。
もう1つだけ難点を挙げるとするなら、里の自然が綺麗すぎる。西洋的な造られた美しさと言うべきだろう。日本の自然の美しさは、そんなものではないはずだ。愛すべき生まれたそのままの美しさである。
世界史を学んだ者として、オールグレン大尉が勝元に聞かせた、数で圧倒するペルシア軍に、古代ギリシャ・スパルタの王レオニダスがたった200人の精鋭部隊で挑んで全滅した話が出てくるところでちょっと興奮。ロケ地はニュージーランドらしい。