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「コミュニティ」の哲学者、ピーター・ドラッカー
経営学はお金儲けの方法論?
ドラッカーといえば経営学の始祖ですが、日本では『もしドラ』で有名になりました。私も『もしドラ』でドラッカーを知りました。でも、流行りものにすぐ手を出せないせいか、長い間、距離を置いていました。経営学なんてどうせお金儲けの方法を集めただけのものだろうと思っていたのです。でも一応ビジネスパーソンなので経営学書も読んでおかねばと思い、赤表紙のドラッカー・コレクションをいくつか読んでみました。そうしたらお金儲けの話なんて全然出てこなかったのです。
ドラッカー自身が『イノベーターの条件』でこう述べています。
私はマネジメントの書き手として知られる。だが三〇冊を越える著作のうち、半分はマネジメントではなく、社会とコミュニティを扱っている。それどころか、そもそも私のマネジメントへの関心は、社会とコミュニティへの関心から生まれた。(『イノベーターの条件』p.iii)
ドラッカーの問題意識は、第二次世界大戦後、戦時下だからこそ成立していた社会の共通の目的がなくなったときに、人々の精神が荒廃することを防ぐことにありました。そのためにドラッカーが重視したものが産業だったのです。
コミュニティとしての企業と新しい「マネジメント」
ドラッカーは、第二次世界大戦中に書かれた『産業人の未来』において「自由で機能する産業社会」を構想しました。その実現のために「自立的な自治による組織」として、コミュニティとしての企業を説きました。
自由で機能する社会を可能とするには、企業をコミュニティへと発展させることが必要である。(『イノベーターの条件』p.287)
そして、「自立的な自治による組織」のマネジメントには、戦時下のような中央集権的なマネジメントに代わる「新しいマネジメント」が必要だと主張しました。
しかも、今日われわれが戦っている産業戦争ともなれば、中央集権政府による統制の拡大などよりも、新しいマネジメントの組織と方法への移行のほうがよほど必要とされている。(『イノベーターの条件』p.286)
つまり、経営学は最初から、お金儲けの方法論なんかではありませんでした。ドラッカーは、経営学者というよりは、源流を辿ればむしろ社会やコミュニティの哲学者でした。
戦後にドラッカーの経営学が追い求めた企業の「マネジメント」は、このような哲学的な思考から生まれたものだったのです。
人々の働き方が激変している現代もまた、「新しいマネジメント」が必要とされているはずです。それが何なのかはまだ誰にもわかっていないだろうと思いますが、きっとドラッカーが書いたものの中にそのヒントがあるはずです。この機会に是非、ドラッカーを読んでみてはいかがでしょうか。
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