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利他の町おこし


水温が低くて魚の育ちが遅いことを逆手にとってブランディングしたんです。
魚の育ちが遅いのなら、ゆっくり時間をかけて育ててやればいいんです。

この「ゆっくり育てる」ことをウリにして、伊根産であることの価値をあげています。
ブリの養殖に関してもそうです。ゆっくり育てるということは、それだけ1匹あたりの単価が高くないといけない。そのため、うちのブリの生簀(いけす)はあえて少ない数しか入れていません。
他の漁師さんが育てる養殖ブリと比べて、1/3くらいの魚数ですかね。静かな湾内で、餌を取り合うことなく、しかも広々した空間でストレスなく育つので味の質がいい。

岩牡蠣は出荷までに5年ほど育てるんですが、時間がかかる分、実入りがよくて濃厚なものができる。4~5年で、大きいものだと800gほどにまで育ちます。

1年モノ、2年モノ......と生簀のブロックごとに生育年数をバラけさせて育てています。
海水も澄んでいるからすぐには大きくならないんですが、そのぶん雑味がなくてマイルドな口当たりの岩牡蠣になります。
環境に合わせて無理をさせず、じっくり育ててやる方が岩牡蠣にもいいんですよね。

僕は23歳の時にUターン就職する形で伊根の漁師になったんですが、正直、当時は結構な赤字で。しかし、こうやってデメリットを逆手にとった育成法に切り替えて、2年で黒字化させました。
父の代から比べると生産数は少なくなっているんですが、売上は上がっていますね。

お話を聞く中で「魚価が上がった」「売上がどう増えたか」など、橋本さんご自身の話で熱くなることはほとんどなかった。

「漁師になった若者がこんな成長を見せた」
「家族で移住してくれたから子供たちの笑い声が増えた」
「地域の人が住民が増えて喜んでくれた」

橋本さんが目を細める瞬間はあくまで、町に、そして伊根の海に、いい結果があったことばかり。

「ここが自分の生きる場所だから、やることをやるだけ」

自分の生まれ育った土地から人が減り、産業が衰退していく......地元民としてごく間近に体感し続け、寂しさや悲しさを抱えているからこそ、自分のできる漁師としての活動で利他的に振り切って、伊根町を明るくしたいと橋本さんは考える。

清々しいほどの無欲さの奥底には、誰よりも町のこと・海のことを想う熱い心が息づいている。一見すると静かで凪いだ海に見えるが、たくさんの生き物が豊かに暮らす伊根湾の海そのものを体現するような人物だった。

日本海なのにとても穏やかな伊根の海
舟屋の風景もとても素敵

でも田舎ゆえの不便さ
人が減り衰退していくことを体感しているからこそ

逆転の発想が光を放つ。

無いものねだりばかりの人はたくさんいるけど(エゴ)

不自由ななかに価値をみつけていくことに愛を感じます。

利他の漁業
利他の町おこし

これからも興味をもってウォチングしていきます。

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